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主婦病|森 美樹

12月の1冊目!誰も救われない小説。読書の秋から冬へと季節は変わったけど、積ん読解消年間なのでどしどし読むぞ〜。

▶︎ あらすじ(※ネタバレあり)

6篇すべて女性が主人公の短編集。少女、主婦、母親など、立場は色々な女性が登場する。設定は様々だけど暗くてちょっと湿っぽい。淡々と読み進めていると呆気なく主人公が死んでしまったりして「え?」と電車で思わず声が出そうになった。そして、ここが驚きなんだけど、6篇はつながっている。「あれ?金髪の男また出てきたな?」となって思わずページを巻き戻した。自分が序盤からこのキーマンに惹かれていたことに、3篇目くらいでようやく気付いた。まあこの人も救われないんだけど。

▶︎ 感想

全体を通してくら〜い感じだから、時々差す光(=救い)の清々しさがハンパない。それでさえ本当に一瞬しかないと思った。全部ちょっと怖かったなぁ。ストーリーは共通して儚くて脆く、暗いとは言えど淀んではいなくて限りなくクリアな灰色みたいな感じ。

この言葉にハッとした。

「絵子(えこ・主人公の娘)は自分の言葉に責任を持たない。口から出る言葉は大人びていても、言葉の行く末までは考えないのだ。子供はだから、残酷だ。」

言葉の行く末って、大人なら無意識にすごく考えてると思う。言葉は発したら終わりじゃない。"相手がどう思うか"という陳腐な思いやりでもない。

ずっと引っかかって取れない、折に触れて戻ってくる言葉。
場に吐き捨てられたまま重くのしかかる言葉。

一度出たら戻せないから、飛ばした後はどう浮遊してどこに着地し どのくらい残ってしまうかあるいは消えてしまうか、考えといたほうがいい。そんなこと考えないで軽く話せる人が羨ましいくらいに、外に出る前の私の言葉たちはずっと悩んでいる。

忖度しないで素直に話せる子供は無邪気で残酷だな。フィルターのない世界はどう映っているんだろう? 子供から見た世間に思いを馳せた。

▶︎ まとめ

主人公の感情の波についていけないところが数回あった。彼女らのずっと抱えていたものが溢れた瞬間の描写はすごく居心地が悪い展開で良かった。暗い雰囲気のお話、こうして考えが深めるキッカケになるので好き。どうしようもない救われなさはハッピーエンドよりも現実味を感じてしまう。せめて現実はもう少し幸せであってほしいと思う。
日常を淡々と書いてある小説が好きな人や、あまりポップな話は読まない人はぜひご一読ください☺️

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