この瞬間をほぼ40年待っていたってことかー!ってなってる。

ザ・ルースターズの『One More Kiss』という曲が、自分でもびっくりするほど好きだ。コード進行にしろ、メロディにしろ、歌詞にしろ、どベタな曲である。私はことさらベタを好むわけでもなく、“いかにもな曲”を臆面もなくやってるバンドを観ると虫唾が走ることも少なくないけど、この曲はびっくりするほど好きだ。

この曲を知ったのはたったの5日前である。夕飯も済んでせがれも寝て、夫婦でインスタントコーヒーを飲んだりレコード聴いたりしてた2020/6/2の晩、配偶者がなんの脈絡もなくルースターズの1st.アルバムをかけた。私はそのときまで彼らの曲を一度も聞いたことがなかった。

初期のルースターズが活動していた1980年代初頭はまだ小学校低学年だったし、私には兄や姉もいない。たぶんザ・ベストテンとかに出てくるようなバンドでもなかっただろうから、彼らの曲を耳にする機会なんてなかった。名前は知っていたし、友人知人にも彼らの音楽が好きだと言っていた人はいたし、ラジオで流れているのを耳にしたことくらいはあったかもしれないけど、とにかく未知のバンドだった。

で、そこからほぼ40年経った2020年、未知との遭遇は突然やってきた。「こういうバンドを今のももこさんの耳で聴くと、どんな風に感じるん?」と配偶者に聞かれたときに流れていたのは『恋をしようよ』という曲である。とりあえず、性急なビートだね。あと、身も蓋もない歌詞だね。自分でレコード買って聴いたりはしないけど、嫌いじゃないかも? と、思ったことをそのまま答えた。

しばらくして、今度はベスト盤を聴いた。ここで一気に風向きが変わった。『One More Kiss』のイントロで「あれっ?」ってなった。

そのとき私に起こったことは、上に貼り付けた2分間の動画にすべて詰まっている。こまけぇことはわかんないけど、理想のバンドがここにいるのである。まるで夢みたいなのにめちゃくちゃ切実な2分4秒なのである。ビートのつかまえ方、鳴ってないのに聴こえるオルガンの音(たぶん花田さんのギター)、4人の着てる服と髪型、大江さんの眉毛の動き、小さく蹴り上げられる足、そして声・声・声!

年季の入ったファンの人がこれを読んだら「そんなもん、ニワカのお前が言うまでもなく、40年前からわかりきってたことじゃボケ!!」と怒られるかもしれない。でも、私にとってこの4人組との遭遇は2020年のできごとでしかなくて、『One More Kiss』は今の歌だ。40年間真空保存されてきたものがドバーン!って目の前にあらわれたんだよ。察しておくれよこの気持ち。

40年前のルースターズを知る人が、当時から続く話の流れで聴く『One More Kiss』もあって、2020年の曲として聴く『One More Kiss』もある。どっちもあるから音楽って好きだ。

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