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ダンスが感覚と脳に与える効果

発達障害の支援を考える中で、ダンスの有効性って何なのか調べてみて、と指示を受けて自分なりに調べてまとめた備忘録になります。大それた言い回しのタイトルですが、内容はそれほど深くないし難しくもないので、気楽に読んでもらえたら嬉しいです。

ダンスとは・・・。
音楽に合わせて演じられる動作で、その様式は多様であり厳密な定義付けはない。遊戯的でリズミカルな連続した動きにより、コミュニケーションや表現を行うものである。

このように書かれていました。

つまり、音楽に合わせて体を動かす(運動する)ことなんじゃないか、と考え、音楽、運動、その二つを合わせたダンス、の3つについて調べました。

音楽の効果

音楽には、特定の感情を誘発させたり、覚醒水準を調整する効果があります。この調整には、音楽の拍子とテンポが影響しているみたいです。

(覚醒水準の調整とは、興奮を抑えたり、落ち込んでいるときは気分を高めたりすることです。)

また、音楽は共同体の気持ちを高揚させる触媒ともなります。

運動の効果

体を動かすことは、筋や関節などの固有感覚を刺激します。固有感覚が刺激されることで、ゆっくりと体を動かすことができるようになったり、ボディイメージが発達したり、バランスをとったり、重力に抗って姿勢を維持する力が発達したりします。このほかに、固有感覚への刺激により脳幹が活性化します。脳幹の活性化により、セロトニンの分泌量が増加します。これにより、情緒の安定や脳の覚醒につながります。

また、前庭感覚を刺激する効果もあります。前庭感覚の刺激にも、バランスをとる、重力に抗って姿勢を保持する、ボディイメージの発達を促す、眼球運動をスムースにする効果があります。また、前庭感覚の刺激によっても脳幹が活性化します。これにより、セロトニンの分泌が増加します。情緒の安定や脳の覚醒を促す効果もあります。

この他に、体の運動による一般受容感覚への刺激によって、脳幹を含む中枢神経の発達が促進されます。この効果をより高めるためには、対象が楽しく喜びを感じる活動が大切、と言われています。

ダンスを行うことでの効果

ダンスは音楽に合わせた運動なので、音楽と運動の効果を合わせたものになると考えられます。

音楽によって気持ちが高められ盛り上がります。脳は音楽を快刺激として受け取ります。それに合わせて体を動かすことによって、固有感覚や前庭感覚の刺激によって、活性化された脳幹からセロトニンが分泌さます。その結果、前向きな気持ちになったり情緒の安定につながると考えられます。

また、音楽は共同体の気持ちを高揚させる触媒となるので、これによって、ダンサーと観客の間に同じような気持ちの高まりが生じます。これが場の一体感となります。これによって、雰囲気が良くなったり、自分の存在意義が見出されたりします。自分の存在意義を見出すことは、自己肯定感につながります。

この他に、ダンスの練習では、指導者の動きを見て模倣します。視覚、聴覚、固有感覚、前庭感覚、を同時に使うため感覚が統合されていきます。

音楽に合わせて体を動かす、周りの人と同じ動きをする、などいろいろな情報を同時に処理することで、同時処理能力が鍛えられる。

ダンスを行うことで体幹が鍛えられます。体幹が強化されることで、姿勢保持が容易になったり、体力や持久力の向上につながります。

発達障害の人は、ボディイメージが出来ていないことが多いので、体を動かすことが苦手です。ダンスレッスンは、鏡の前で自分の姿を見ながら動くので、ボディイメージが出来上がっていきます。その結果、自分の思うように体が動かせるようになっていきます。

言語以外で自分を表現する力が身につくので、気持ちが解放されて楽になる効果もあります。


このように、ダンスは心身の発達に対してよい効果がたくさんあります。

それなら、みんながダンスをすればいい、とはならないのですが・・・。

世の中、ダンスなどの運動が好きな人ばかりではありません。嫌がる人に無理やりダンスをさせても、効果は薄いです。そういう意味では、万人に当てはまるものではないのです。ただ、はまる人にははまるので、この人にダンスは難しいだろう・・・、という人でも、その人がダンスをしたいと思っているのなら、体験してみるといいと思います。


最後になりますが、子供の時なら心身の発達効果も高いだろうけど、大人になってダンスをしても効果はないのでは・・・。と思う人もいると思います。

確かに、刺激が加わったときに時に、その発達効果が最も現れる時期はあります。これは、発達の臨界期と呼ばれています。そして、一般的に臨界期から一定期間はずれると、効果はほとんど現れなくなる、と言われています。

しかし、35歳の重症心身障害者に対して、トランポリンやセラピーボールを利用した揺れの感覚刺激を、3年間ほぼ毎日与え続けた結果、寝返りを打つことが出来なかった対象者が支えなしで座ることが出来るようになった、という例があります。

臨界期をはるかに過ぎた年齢でも平衡反応が現れたこの例は、人の運動発達は、ゆっくりでも向上する、という可能性を示唆しているのではないでしょうか・・・。


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