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【週刊少年マガジン原作大賞応募作品】君は怪人、僕は凡人 第3話

※ヘッダー画像は舞台イメージです

ゴスロリの少女の額から二対の角が生え、顔には目元から首へかけて血管が浮かび上がり、両腕は細く鋭い大きな鉤爪に変わる。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅぅぅぅぅ!!!!!殺してやるぅぅぅぅ!!!!!!!!」

少女が強く念じると共に周りの壁や立っている地面が破裂しひび割れていく。
真理花もたまらずその場でうずくまるしか無かった。
東司も入口の中で待機している。

「お、落ち着け!あたしは無事だから!!」
薄汚い少女ー『鷹』がゴスロリに向けてなだめるが、一向に聞き入れなかった。
程なくして、白衣の女性ーティコ・市ノ上が階段を上がってきた。
「隙、大きすぎ」
市ノ上は持っていた麻酔銃をゴスロリに向けて一発撃ち込む。
破壊に夢中になっていたゴスロリは全く気付かず麻酔の力で気絶した。
「まさかステータス全振りで極端なパラメータになってる奴が本当にいるなんてね…念の為持ってきたけど本当に効くとは思わなかったわ」
その結果は市ノ上すらも予想外だった。
怪人としての力は凄いが、身体能力は普通の人間とあまり変わりないようだった。
呆然とする『鷹』。
「…あ!そ、そうだ!まだあのヤローと決着が…」
真理花は『鷹』の斬られた右腕を自身の右腕があった痕へくっつける。
力を込めると瞬く間に真理花の身体へと同化していった。
「うん、バッチリ!」
「か、返せ〜!!あたしの腕〜〜!!」
「もう私のものだかんね~♪」
その小競り合いですらない諍いを見た東司は呆れる。
「子供かお前ら…」
打つ手なしと判断した『鷹』は残った左腕を挙げ、降参した。
市ノ上は麻酔銃を向けつつ言う。
「相方が大切みたいだね。卑怯だけど、このまま大人しくしてもらうよ」
変身を解き、渋々と捕まる『鷹』。
「そいつ(ゴスロリ)に何かしたら解ってるよなぁ!?」
「私だって命は惜しいからね。なに、こっちからの質問に色々答えてくれれば良いよ」
軽口を叩く市ノ上。鈴村に他のスタッフお願いと連絡する。
「あたしらが連れてくから、君たちは文化祭満喫しなよ」
市ノ上に連行される二人の怪人。
東司は真理花と再会するが「あ、しまった」と真理花が言い、東司は何かおかしくなったのかと心配する。
「喫茶店の制服ダメにしちゃった」
「…それくらい、どうでもいいよ」

連行される中で『鷹』が口を開く。
「ところで、あんたたちは何もんだ? 他にウジャウジャいる奴と違うのか?」
自分たちの事を何も知らないのかと尋ねる市ノ上。知らないと即座に『鷹』は答えた。
「他の奴って、この街にいる奴らとは仲間じゃないの?」
「あたしたちはあいつらから逃げてるんだよ。ここに来たのも、腹をくくってあいつらの一人を迎え撃とうと思ったからだ。むしろ、あんたらの方があいつらの仲間かと思った。でもただの人間と組んでるってのも妙だし、やっぱ違うの?」

場面転換。
服取りに行くからもう少し屋上で待てという東司。
直後、真理花は別の怪人の気配に気づく。
「橘くん、まだもう一人このガッコにいるみたい…!」
「えぇっ!?」
「くそう、しくじっちゃったよ!」
即座に変身して、気配の元へ飛び出していく。
「おい、俺も連れてけ!!」
すぐさま階段を下っていく東司。

場面転換。
「遅いなぁ有河さん…とうくんもどこまで行ったんだろ」
一方で香莉守はなかなか戻ってこない二人を探しに行く。
学校中を回る中で、端正な顔立ちの一人の青年と出会う。
「ちょっと静かな所まで良いかな」
人見知りがちで初対面の人になかなか強く出ず、結局押し切られてしまい、渋々ながらも使われていない部室小屋にまで案内していった。
部屋の中には二人きり。突如、青年が怪人の姿―『鰐』に代わる。
その姿を見て悲鳴を上げる香莉守。逃げようにも腰が抜けてしまい動けない。
服を切り裂かれ、嚙まれようとした矢先、窓が割れる。
「どーーーーーん!!」
変身した真理花のドロップキックが命中した。
「ヒーロー参上…なんちゃって」
「速水!無事だったんだな…」
安堵した東司は香莉守を連れて外へ逃げる。
真理花は『鰐』の顎を限界まで裂き、頭を壁へと叩き潰した。
辺りには大量の血飛沫が舞った。
「これも鈴さんやシノちゃんに言っとかないと…」

教室へと戻り、制服へと着替えた香莉守。
あれは何だったんだ、まさか今朝のも本物だったのかと言い、忘れた方がいいと東司が答える。
気になりつつも「そうするね」と香莉守は腕をかきながら決める。

「どうしたのとうくん」
「いや、さっきから腕ばかりかいてるけど、虫刺されか?」
「うん、蚊に刺されたみたい」
「蚊って…もう秋なのに? まだいるのか?」
「蚊は秋でも冬でも出る時は出るんだよ」

この虫刺されが彼女ー速水香莉守の運命を大きく変える事になるが、それはまだ誰も知らない。

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