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【週刊少年マガジン原作大賞応募作品】君は怪人、僕は凡人 第1話

※ヘッダー画像は舞台イメージです。

夜。
男が異形の怪人に首を掴まれ、身体を宙に浮かせられている。
男が「やめてくれよ…」と言うと、怪人は「はい、やめた」と言い、
男は地面へと落ちた。
その態度に怒った男は「やめろって…言ってんだろうがああああ!!」と激昂。
口が鋭く尖り、身体の一部分が『狼』のようになった男は怪人に襲い掛かり、胸を貫くが「…で?」と大して利いておらず、『狼』は怖気づく。
怪人は容赦なく『狼』を真っ二つに切り裂く。鮮血に濡れる怪人。
程なくして、少年―橘 東司(たちばな とうじ)が現れ「有川、これ使えよ」とタオルを渡した。
「ありがとね、橘くん」
怪人はそう言うと、身体が変わっていき、裸の少女の姿となった。
血で濡れた身体をタオルで拭く少女―有川 真理花(ありかわ まりか)に対し、東司は早く服を着ろと促す。
「何?裸見たくないの?」とからかう真理花。ツッコむ東司。

場面回想―

事の始まりは東司の通う学校に真理花が転校してきた事だった。
勉強が苦手で運動が得意で人懐っこく明るい性格と直ぐにクラスに馴染んだ彼女を東司も好印象を持った。
程なくして、夜に出かけて買い物を終えた東司は一人の不審者に声を掛けられる。
「なんですか急に」と返す東司だが、突如不審者は「ほ、し、い」とうめき声を挙げ、背中から『蜘蛛』のような脚が生え東司を襲う。
わけもわからず逃げる東司。身体に手が届く瞬間、真理花の飛び蹴りが『蜘蛛』に当たる。
「だいじょぶだいじょぶ、すぐにそいつやっつけちゃうから」
真理花は異形の姿へと変えていき、その光景を見た東司は現実離れした光景に戦慄する。
『蜘蛛』の攻撃をものともせず、突撃する真理花。拳が『蜘蛛』を貫き、返り血を浴びる。
怪人の戦いを見て唾を飲む東司。直後に変身を解いた真理花が「終わったよ~橘くん」と近づくが、全裸だったことで「うわぁ!」と東司は驚く。
「え、なんで?」
「いいから何か着てくれ!」
「だからなんで??」
そうしている間に、真理花の仲間である男・鈴村が現れる。
怪人の存在と暗躍、人々を襲い仲間を増やしている目的、怪人退治のために赴いた事情を聞かされた東司は鈴村から「君は日常に帰れ」と忠告を受ける。
そうするつもりだった東司だったが、戦いが脳裏に焼き付いてしまい眠れず、どうしても気になった事で「有河と一緒にいてもいいですか」と宣言。
橘は渋々ながら許可する。

場面は朝へと変わる。
学校へ登校する東司と真理花の前に東司の幼馴染―速水 香莉守(はやみ こりす)が挨拶する。
「ええと…速水香莉守さんだっけ?」
「合ってるけど…名前覚えてね」
複雑な表情を浮かべる香莉守。
真理花は「そういえばもうすぐ「ぶんかさい」だね」と話を振る。
文化祭の話で盛り上がる二人を見た東司は、普通の少女と変わりのない真理花を見て、異形の姿をダブらせる。
「どうしたの、とうくん?」と香莉守は心配するが、真理花は「今頃ムラッときちゃったの?」とからかう。
「するか!」
「ムラッとって何?」
「速水も聞いてくるなよ!」

一日を終え、下校を迎えた東司と真理花が話し込む中、真理花が怪人が近くにいる事に勘付く。
「なんで解るんだ?」「頭がズキンと来るの」
レーダーみたいなものか?と思う東司。
生徒が危ないと思い、直ぐに外へ出る。
二人は下校中の生徒を見て、それが香莉守である事に気付く。
香莉守を狙う怪人に気付いた真理花は直ぐに行動。飛び蹴りを怪人に浴びせる。
真理花の後を追う東司は「毎度毎度無茶するなよ!」と怒るが「でも速水さんにはバレなかったじゃん」と真理花は軽い調子で返す。
怪人は二人組の少年たちだった。
自分たちとそう変わらない歳である事に驚く東司だが、真理花は「そういうもんじゃない?」と意に介さず、直ぐに変身。
苦戦する様子もなく、一人を簡単にあしらい、もう一人を叩きのめす。
怯え始めた一人の怪人は真理花の容赦のない攻撃を受け続ける。
それを見た東司は「もういいんじゃないのか…?」と言うが、真理花は一向に攻撃を止めない。
見かねた東司は「やめろってば!!」と叫ぶ、
しかし、

「なんで? こいつ敵じゃん」

頭部が変身前に戻った真理花は表情を一切変えずきょとんとした様子で怪人の首をへし折った。

そう、正しい。
危害を加える敵を倒す事は正しい。
だが、東司は
「お前こそなんでそうなんだよ…」と真理花を恐れる。
(徐々に身体の変身を解く真理花)
「え?だって敵だし」
「敵ならそうやって叩きのめせるのか?」
「叩きのめすけど」
「…俺らと変わらない姿でもか?」
「だって敵だもの。しょうがないよ」
「敵敵って…なんでそんなに割り切れるんだよ」
「なんでって言われても…」
「じゃあ、お前は俺や速水が敵だったら殺せるのかよ!?」
叫ぶ東司。

「たぶん」

少し悩みながらも答えた真理花。
慄然とする東司。

「でも橘くんや速水さんは敵じゃな…」
「もういい。結局お前もあいつらと同じじゃないか」
離れる東司。わけが分からない様子の真理花。
鈴村が現れ「これで解っただろう。君と俺たちは住む世界が違う。放課後の暇つぶしも終わりにするんだな」と改めて忠告する。
東司は恐怖心と真理花への態度から「最低だ…」と一人こぼす。

十日が経った。
東司は真理花に近づかなくなり、態度も素っ気ないものになった。
その様子を寂しげに思う真理花。
香莉守からは仲直りしなよと言われ、東司は出来ればなと答える。
その中で登校中の朝、真理花は腕に包帯を巻いて教室に現れる。
クラスメイトがどうしたのそれと聞いて、真理花は転んだだけと答えた。
東司は(あいつが怪我なんて珍しいな…)と思うが、直後に(あいつが怪我なんてした事あったか?)
真理花は大丈夫大丈夫とおどけて怪我した腕を振り回す。

放課後、東司は香莉守に相談する。
「友達の事で悩んでるんだ。そいつの言ってることがよく解らなくて、逃げ出した。でも、そいつもそいつなりに考えて、悩んで、決めてるのかなって、今朝思った」
香莉守は優しく言う
「簡単だよ。素直になる事。仲直りが一番」
「やっぱりそれか…」
「勇気を出すのもまた一番だよ」
「でも、ありがとな。少しスッキリした。会いにいくよ」
東司は外に出る。
「臆病で鈍ちんなんだから」
香莉守は少し寂しそうに呟いた。

東司は早速真理花を探すが、鈴村が現れる。

場面転換―
真理花は廃墟で『蛙』たちの相手をしていた。
「あ~~~もう!ゲコゲコピョンピョンうっさいなぁ!」
跳躍や伸びる舌を活かした戦法に戸惑う真理花。
「有河、後ろだ!」
「へっ!?」
その声に驚きながらも、真理花は『蛙』の一体を倒す。
「鈴さん!……と、橘くん!?なんでここに…!?」
その場に現れた東司に驚く真理花。
「気を緩めるな!」
鈴村の叫びの直後、『蛙』の舌が真理花の首を薙いだ。
「有河ァァァァ!!」
叫ぶ東司。
「ごめん、ドジッちゃった…」
二人は真理花を連れて後退。
別の場所まで運び、変身を解いた真理花にハンカチで止血するなど応急手当を施す。
「……ムラッと来てるでしょ」
「こんな時にできるか!」
「じょーだんじょーだん……あ、やっぱ……キツいかな……」
「無駄口が言えるなら大丈夫だろう」
東司は鈴村に薬は無いのかと尋ねるが、直ぐに治ると聞かされる。
「あのさ…橘くん…なんで来たの……?」

ここに来る直前の回想。
鈴村からこの間の事でもう解っただろう、お前のいる場所ではない、帰れと言われるも食い下がる。
「確かに怖いです。あいつも、あの化物たちも。でも、あいつは悪い奴じゃない、バカなんです。バカなりに考えてるかもしれない、単純だけど優しくて不器用な、多分そんな奴なんです。俺、本当に今日気付いたんです」
回想終わり。

「お前を見守りたくなった。それだけだよ」
「そっか…ありがとね」

直後、首から流れ出ていた血が止まり、急速に固まっていく。
「あ…結構楽になってきた」
驚異の再生能力の表れでもあった。
止血に使っていたハンカチも巻き込み硬質化、身体の一部(マフラー状の器官)に変わる。
「うわ…何これ変な感じ」
東司はその再生能力に驚きつつも、そういえば怪我したはずの腕も治っている事に気付く。
「よし、身体も治ったし…もう一戦だ!」
真理花は再び『蛙』の討伐に行く。
伸びる舌を掴み、振り回し、他の『蛙』に叩きつけ、倒していく。
残った『蛙』の三体に翻弄されるも、咄嗟にマフラーを右腕に巻き付け、眼前にまで迫った『蛙』たちを一斉に薙いだ。
戦いは真理花の勝利に終わった。
「おい…なんでそれ巻き付けた?」
「え、いやなんとなく強くなるかなーと思って」
戦いが終わった後、東司は上着を貸す。
真理花は「橘くん、ごめん。私、あの時やっぱり変な事言ったよね?」
自分が原因なのは解ってるが、どういう意味なのかまではまだ理解しきれていないらしい。
バカ、というよりは子供だな…と東司は思い、笑った。
「ああ、言ったよ」

文化祭の日。
学校が来客で賑わう中で、二人はクラスの出し物であるお化け屋敷の受付をしていた。
「人が来なくて暇だな。もうちょっと話題があればいいんだけどな」とボヤく東司に対して真理花は「怖がらせればいいの?」と言う。
妙にイイ顔をしてきた事で「…不安だけど、やってみろ」と一応応える。

お化け屋敷に入る香莉守。
待ち受けていたのは変身した真理花だった。
「こんな事だと思ったよ!やっぱお前バカだ!!」


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