不在の日記

警察署へ行った。免許更新のためである。いつもより早く起きて、化粧をし、お金を下ろし、証明写真機で写真を撮った。忘れ物もなく完璧のはずであった。なのに受付の人は「予約昨日ですね」とあっさり言った。スマホの予約画面を確認すると確かに昨日の日付が書いてあった。「予約を取り直してまた来てください」と証明写真を突き返されたが、意外と落ち込むことはなく、ただ「そうですか。」と思った。

その後、気になっていた古本屋に行った。だが、定休日ではないにもかかわらず扉には鍵がかかっていた。開店時間になったばかりだからかもしれないと考え、一応店のツイッターアカウントに「こんにちは。本日は営業されますか?」とDMを送ってみた。そうすると「こんにちは。店にはおりますが、営業予定はございません。もしお近くまでお越しだったら申し訳ないので、その際はお入りください。」と返事が来た。よくわからなかったが、せっかくだから伺うことにした。

店はビルの一室で、土足禁止であった。店に入るや否や店主に温かい飲み物を勧められ、コーヒーを淹れてもらった。そして店の奥の方には炬燵があり、そこに座るように促された。店主は50歳の男性で、声が小さく、端正な顔立ちをしていた。草野マサムネみたいだった。話しやすい人で、コーヒーを飲みながらいろいろ話した。お菓子とビールもいただいた。もてなされすぎである。そして一緒にベランダでたばこを吸った。電子たばこの悪口を言ったり恋バナをしたりした。お互い終始敬語なのが心地よかった。色川武大『狂人日記』を買って帰った。

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