部長だより第0号|研究・観測合宿"星の学校"に参加してきた話。

はじめまして。4月からとある高校の天文部部長になるγです。これから毎月月末に部長だよりなるものを投稿する予定です。
今回は、自分がまだ部長になる前のお話。3月21日~22日にかけて行われた「星の学校」というイベントでの体験談をまとめていきたいと思います。

0.星の学校とは

"星の学校”は、日本宇宙フォーラム、日本スペースガード協会、井原市美星天文台が主催する、観測・研究合宿イベントです。全国から岡山県の美星天文台に集まった高校生が、研究者の方々と一緒に天体観測やデータ解析を行い、星について学びを深めることができます。ちなみに今回は3年ぶりの開催だったそうです。

美星天文台のホームページ↓


1.参加しようと思ったきっかけ

自分が星の学校について知ったのは1月、学校で地域向けに行われた天文教室でのこと。
そのイベントに、岡山県井原市から移動式プラネタリウムを運営する方がいらしてくださりました。そしてその方から、「星の学校というイベントがある」ということを教えていただいたんです。

当時、既に天文部の次期部長になることが決まっていた自分は、
「もっと天文について学びたい」
「新たなことに挑戦して、皆のお手本になりたい」
と思っていました。あと先輩が別の研究・観測イベントに参加していたお話を聞き、自分もやってみたいと思っていたので、これはチャンスだと思い参加してみることにしました。

2.自分が学びたいことって何だろう

しかし、参加するには一つ条件がありました。それは、「星の学校で学びたいことを200字以内で書く」というものでした。この作文を見て選考を行うとのこと。
自分はあまり文を書くのが得意でなかったのと、単純な興味で行きたいと思っていたが故に具体的な目標が定まっていなかったことから一瞬ためらいかけましたが、
「ここで止まっていたら成長できない!」
と思い、頑張って書くことにしました。最初はやはりピンとくる理由が思いつきませんでしたが、
「具体的にしたいのなら、調べたい天体について書いてみればいいのでは?」
ということに途中で気づき、色々面白そうな天体をネットで探してみました。そしてここで"変光星(明るさが変わる星)"の面白さに気づき、もっと詳しく研究したいと思いました。ここでの下調べが、後々すごく役に立つことになります。
そんな感じで悩み続けて1週間、ついに文章が完成。要約するとこんな感じです。

・変光星の研究に興味を持ち、先行研究も調べてみたが、詳しい観測、解析方法がよくわからない
・現役天文学者の方と実際に観測を行って研究手法を学ぶことで今後自分で行える研究の幅を広げたい
・学んだことを部活内で共有して、全体として一歩進んだ研究をしたい

先輩にも見ていただき、「いいんじゃない?」と言っていただけたので、あとは必要事項を記入して応募。そして3月3日、選考結果が送られてきました。「参加していただけることになりました」という文面を見たときには、あまりの嬉しさに業務連絡じゃないのに先輩に速攻で報告LINEを打ってしまいました。スミマセンデシタ

3.イベントでのこと

3月21日、合宿の日がやってきました。今回、自分は一人で遠くまで行くのは初めてだったので、電車の乗り継ぎを間違えないか、など心配事はありつつもすごく楽しみでした。

スケジュール

朝早くに家を出発し、新幹線で3時間くらいかけて岡山へ。ちなみに新幹線の中では数日後に引退する部活の先輩方へのサプライズ動画の編集をしていました。

岡山到着!

岡山駅からは電車を乗り継いで井原駅まで行きました。たどり着いた井原駅で本当はバスに乗る予定だったのですが、予定時刻になっても来なかったのでリスク回避のためにその場にいたタクシーに乗車し直接天文台まで行くことにしました。
タクシーでは天文台周辺のお話を色々聞くことができました。花もとてもきれいだとのこと。ヤマブキとかヤマザクラが見られるらしいです。

13:00、星の学校がスタートしました。今回は、岡山県内外から計7人が参加していました。
最初に参加者とスタッフさんとで自己紹介をしたとき、今回協力してくださる研究者の方の中に変光星の研究をしている方がいることがわかりました。ちょうど自分が興味を持っていた分野だったので、後でお話してみることに。ちなみにその方は前に部活の顧問だった先生と知り合いだったことが判明。

オリエンテーションが終わると、今回使用させていただく施設、スペースガードセンターと天文台の見学へ。スペースガードセンターには50cm,100cm望遠鏡、美星天文台には101cm望遠鏡がありました。諸事情で写真は載せられませんが、今まで見たことないサイズの望遠鏡で驚きました。

見学終了後、基本事項の勉強会を挟んでテーマ決めへ。「撮像(星の写真を撮り、星の表面温度などを調べる)」「分光(星の光を分けて観測し、星がどんな成分でできているかなどを調べる)」「未確認小惑星検出アプリ"COIAS"」の3つのテーマの中から選ぶことに。どれも面白そうでしたが、やっぱりさっきの研究している方から色々教わりたいし、せっかくなら望遠鏡使いたいと思い分光班に行きました。(部活で少しやったことがあったけれど、最初から最後まで自分で解析するのもやりたかった)
班に分かれた後、担当の方から「どの天体調べたい?」と聞かれました。ここで、先ほどの下調べを参考に研究テーマとなる星を決めました。
(普段から色々調べるの大事。ネタ帳作っといて本当に良かった。)
3つくらい候補がありましたが、その中でも天文台で過去に得られたデータが大量に残っている"ぎょしゃ座ε星"という星を選びました。

ぎょしゃ座ε星について↓


夕食を挟み、いよいよデータ解析へ。(本当はこの時間に観測を行う予定でしたが、一面曇り空だったのでデータ解析に専念することになりました。)
学校でやったことあるし大丈夫だろうと思っていましたが、撮影方法や望遠鏡の特徴が結構違ったことから、最初はあまりうまくいきませんでした。正確に解析ができるようになったのは、2日目の朝のことです。初めてうまくいったときは思わず「できた!!」と叫んでしまいました。だんだん手馴れてきて、最終的には正確なデータを得ることができたのですごく嬉しかったです。
ここで自分は、違うやり方に柔軟に対応することの難しさを学びました。

また、解析をしながら、研究者の方から研究に必要な論文検索サイトとかアーカイブデータが集まるサイトの情報を教えていただきました。ここで得た情報は、また部員のみんなに教えてあげようと思います。

2日目はほぼデータ解析の続きをしていたのですが、午前の活動終了後、13:00~13:30で観測を行いました。「昼なのになぜ観測を?」と思った方、ここの望遠鏡、なんと昼間でも星がみえるんです!金星やカペラと呼ばれる明るい星を見ました。貴重な体験ができてとても感動しました。

15:40から、皆で成果報告会を行いました。
私は調べた星についての説明と解析の結果を話しました。自分個人としてはまあまあうまくいった方だと思っていたのですが、質問対応で参加者仲間に「言ってることはわかるが答えづらい質問」をされたときに答えられなかったのが悔しかったです。また、研究者の方からも「分からない人にも分かるように」と言われ、まだまだ実力不足であることを実感しました。これからも説明の機会は沢山あるので、この「分からない人にも分かるように」を意識して落ち着いて話したいと思います。

17:00、イベントが終了。帰りは、仲間と一緒に岡山駅まで行きました。
そこからは1人で新幹線に乗り、23:00頃に家に到着。短いけれど、とても有益な2日間でした。

新幹線で食べたアイス(恒例行事)

4.このイベントで得たもの

簡単にいうなら、「自信、経験、技術、人とのつながりを得られた2日間」でした。
まず、2日間を通して「この機会を有効活用したい!!」という思いが強かったので、今まではできなかった積極的な行動、発言、質問ができました。この経験は天文部の次期部長として、一人の人間として大きな自信になったと思います。

技術の面でも、あんまり自信がなかったけど重要事項であるスペクトル解析を2日まるまる使ってほとんどを自分の力でやったお陰でやり方を頭の中に定着させることができました。特に解析の中では自分の学校で使われている従来の方法より劇的に簡単になりそうな方法が見つかったのでいい収穫になりました。

そして、「人とのつながり」に関してですが、自分はいわゆる「コミュ障」だったので来る前はうまく人と関われるかすごく心配でした。
しかし、実際には一緒に過ごした6人の仲間、変光星の研究者の方や天文台の方、タクシーの運転手に新幹線のお隣さんとか…知らなかった人とたくさんお話しすることができたので、この調子でいけばコミュ障も治るかも、と思いなした。皆優しくて、色んな事を教えてくれました。なんだかんだで人と話すのって楽しい。

あと「経験」は、閉会式でも天文台の方が言っていたのですが「このイベントに参加したことがまず大きな一歩」だということです。今まではこういうのあんまり参加してなかった、行きたいなと思っても実際に行動を起こさなかったけれど、今回の星の学校は違いました。一生懸命1週間かけて文章を考えて、選ばれて、学びを得られた。この経験は絶対に将来に役立つと確信しています。

5.後日談(おまけ)

イベント終了2日後のこと。友達から、「NHKに君が映ってた」と報告が来ました。
実は今回、1日目にNHKの方が取材に来ていました。「地域向けニュースの取材かな」と思っていたらまさかの全国放送でびっくり。小さい頃からの念願だった"テレビに出る"という夢が叶いました。笑

実際の映像↓

すごーく長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。皆さんも、ぜひこのようなイベントに参加してみてください!きっと、沢山学びを得られるいい機会になると思います。
また、今回の経験を活かし、4月から天文部の新部長として頑張っていくので、よろしくお願いします!

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