2020/7/9 Dai Matsumoto ONLINE LIVE from CLUB251 『Stereotype』

2020年7月9日、20時。
準備で押した約8分の間に、早くも投げ込まれるスーパーチャットの数々。画面はまだ真っ黒だけれど、チャット欄はすでにお祝いムードが漂っていた。この日は大さんの28歳の誕生日。

予定時刻よりやや遅れて映し出されたのは、機材が並べられた下北沢CLUB251のフロア。機材の間をすり抜けながら、モノクロの画面に大さんが姿を現す。

椅子に座り、息を深く吸って、長く吐き出す。心を身体の深いところまで落とす行為のように、私には思えた。
「幼いままで 大人になって」
大さんの歌声だけが響いて、ああ、貴方の誕生日にぴったりの曲だ、と思った。この日の1曲目として歌われるために生まれた曲だと錯覚しそうなくらいに。
「この世でたったひとつ 僕の命が泣いている」

イントロですぐにわかる"ボイド"。空が見える歌。歌っている途中、傍らに置いていたノートパソコンからもう1人の松本大の声が聞こえて、「パソコンオフにしとかないと〜」って演奏が中断されたのにちょっと笑ってしまった。ライブ中に潜む、こういう気の抜ける瞬間が好きなんだ。

「LAMP IN TERRENというバンドでボーカルをやっている松本大です」と、オンラインの宇宙の中で流れ着いたかもしれない視聴者に自己紹介を繰り返す大さん。
「時間の許す限り、最後までお付き合いください。…?最後まで??時間の許す限りお付き合いください(笑)」
自分の発言の中の矛盾に気づいて「あれ?」ってなってるのキュートでしたね。

パ、パ、パ、とギターを爪弾いて、最初は何の曲かわからなかった。
弾き語りで"Beautiful"をやるのは完全に想定外でした。画面の前でみんな「ウォォォオ!!!」ってなったに違いない。ソースは俺。
アコギ1本でもこんなに映える曲なのか、と、この曲の新しい一面とはじめましてできたような気持ち。

"Is Everything All Right"は着実にライブ定番曲になりつつある気がする。最近はキャスでもよく歌っている印象。弾き語りでも、思わず拳を掲げて「(幸せに)なりたいなりたい!!!」と叫んでしまう。

続く1音目で次の曲が"ホワイトライクミー"だとわかり、反射的に「ウワーーーーー!?!??!」と大きな声が出てしまった。この曲本当に好きなんだな、自分。かなり序盤で歌詞を飛ばし、「僕を〜〜〜ララ〜イ(笑)」と誤魔化して、だいぶ緊張しているらしい大さん。
この辺りから瞼の上に汗が光り始めて、曲終わりにはビシャビシャになっていた。そのデニムジャケットを脱いだら、涼しくなると思うよ…

ここで大さんがギターを持ち替えようと、ちょっと離れたところにある黒いレゲエマスターに手を伸ばそうとすると、画面外からキャップをかぶった半袖のローディーさん風なお兄さんが登場。
「意外とバレてなかった」ってドヤ顔してたけど、意外とバレてましたよ。大喜さん。みっちーさんが「おっと???????」って動揺しているのが見えてニヤけました。この時点ではまだ他人事な私。

"pellucid"はアコギじゃないんだ〜ってちょっと意外だったけど、バンド編成ではいつもエレキなことを考えれば、むしろ音源に近いのはこっちのスタイルか。エレキはアコギよりもキラキラした音がする。音の一粒一粒がとても優しい。他の楽器の音が無かったから、その優しさがいつにも増して顕著になって沁み渡る。
大さんは1サビでまた歌詞を飛ばして笑っていた。

「拍手もなんもねえ…みんなしてるんだろうなでも。拍手が聞きてえ」
早く同じ空間を共有できるようになったらいいのにね。

傍らに置いたまま、まだ触れていなかったキーボードに向き直る。そういえばこの人の弾き語りの魅力はギターだけじゃないんだった。
"I aroused"のピアノは、凛としていて、かっこよくて、美しい。次第に力強さを増すピアノと歌声は、画面を突き抜けていた。つい先日、オンライン弾き語り部で大さんの歌の力強さを目の当たりにしたばかりだというのに、また初めて聴いたみたいにその歌声に打ちのめされて、息を呑んでしまった。

「あかんわ。緊張がすごすぎるな…。緊張がすごすぎるから、カメラマンにギター弾いてもらおうかな」
本番前の意味深ツイートと、そこに置いてある椅子とギター。期待していた通りの結果に歓喜した。カメラの前に現れた真ちゃんは相変わらずお髭を伸ばしていて、CLUB251のTシャツを着ていた。
大さんのピアノと、真ちゃんのギターだけで奏でる"花と詩人"。はい!私この曲のベース弾けます!🙋‍♀️近くにベースがあれば弾きながら観たかった。ベースラインを頭の中で鳴らしながら聴いていた。

その編成のまま、続けて"New Clothes"へ。真ちゃんは椅子から立ち上がり、大さんは途中でアコギに持ち替えた。普段ではなかなか聴けないバージョンは新鮮で、延期されている『FRAME』がより一層楽しみになった。そこでやろうとしていることの一部を、先に覗かせてもらったような気分だ。

大さんの「27歳のヤツらも呼ぶ?」に応えて、ローディーのフリしてた(つもりの)大喜さんと、サプライズのケーキを持って良い声で歌いながら健仁さんも登場。運ばれてきたケーキに「マジ!?」と目を輝かせ、食らいついて口の周りベチャベチャにしてる大さん可愛かった。大さんの誕生日にちゃんと4人が揃っている事実が嬉しい。

「1回しか合わせてないけど」
4人で演奏している姿は、ゲリラスタジオ配信で観た以来だろうか。この日の"Water Lily"は普段ライブで観るのとは少し違っていて、4人だけが音楽に深く深く沈み込んでいくような、そういう演奏に感じた。真ちゃんのギターソロが「いやいやどうしたの!?」ってなるくらいアレンジしてて…それがまためちゃめちゃかっこよくて…あれを永久保存したい…真空パックにして閉じ込めたい…。真ちゃんが覚醒してた。キマってた。
感情のままに殴り書きしたメモがこちらです↓

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「早く会いたいな」
「こうしてライブ活動ができなくなって、自分は何もやってない、できてない感じがすごくある」
「ずっと言ってきたことだけど、音楽は衣食住のどれでもないから、いざという時にはみんな見向きもしなくなるし、それどころじゃなくなる。でも、衣食住のどれにも負けないものでありたい」

「あんまり言わない方がいいと思うけど、昨日まで死んでみようかなってちょっと思ってた。伝説のロックスターは27歳で命を落とす。俺も27歳で死ねば無条件で伝説のロックスターの仲間入りだな〜、って。今月中に死ねば、今週中に死ねば、今日中に死ねば、って」
「自信あるけど、自信無いのよ。やってらんねえよ人生!けど死に損ねたので、もうどこまでも行くしかねえ。これからも最高の音楽を皆さんと共有したい。俺が音楽で支えて、俺も皆さんに支えられていく」
「死ななくてよかったと思える人生にします」

自身のバースデーライブのMCで、大さんは少し笑いながらそう話した。

「残り時間 あとどれくらいか解ったとしたら」
「何故 自分で命を捨てちゃいけないって皆言うんだろう」

大さんの日常の側には、いつだって変わらずに"死"がある。『Bloom』のMCで「生きていたい」と言っていた。Enchantéのインタビューで「死にたくないから、未来は行きたくて行くものではない」と話していた。だからもう大丈夫なんだと思っていたけれど、人間ってそんなに単純なものではない。生きたい自分も、死にたい自分も、どちらも本心で、1人の人間の中に同居する。
「愛されたくて今日も生きながらえてしまった」彼を、もっとちゃんと伝わるように愛してみせるから、生きててよかったって思ってもらいたいな。ずっと生きたいって思っていてほしいな。結局私の気持ちはいつもここに落ち着くんだな。

「最後に一言ずつ挨拶しなよ」って再びメンバーを呼び込んだ時に、健仁さんがこう言った。
「真ちゃんと大は昔からお互いを知ってて幼馴染で、そんな2人が誕生日にセッションとかしてるの見たらグッときちゃった」
本当熱い男だな君は〜!そういうところが好きなんだぜ。

チャット欄のアンコールの声に応えて、全員で歌った"オーバーフロー"が本当に楽しくて、メンバーが笑っていて幸せで、見えたんだ。ライブハウスで、お客さんたちも一緒に、その場にいる全員でこの曲を合唱する景色が。それは過去のライブの反芻なんかじゃなくて、これから来る未来の私たちの姿だと思った。またあの場所で必ず再会できるよ。だって確かに見えたもん。トトロいたもん!


後でみっちーさんのツイートを見て知った。「伝説のロックスター27歳で死ぬ説」のMCの時に、健仁さんが
「爺さんになってもきっと音楽やろうな」
とコメントを飛ばしていたこと。
ああ、やっぱり。やっぱり大さんにはあの3人がついていれば大丈夫だって、また思った。
爺さんになっても歌っている自分が想像できない大さんでも、メンバーが「もうちょっと続けてみようよ」って言ったら続けてくれるんじゃないかな。そうしたら、それを繰り返していたら、気づけばみんな爺さんかもね。
ずっとずっと4人で音楽やっていてください。どうか貴方たちが幸せでありますように。

松本大さん、28歳のお誕生日おめでとうございます。生まれてきてくれて、歌っていてくれてありがとう。生きたままロックスターになって、これからもいろんな景色を見せてください。

1. BABY STEP
2. ボイド
3. Beautiful
4. Is Everything All Right
5. ホワイトライクミー
6. pellucid
7. I aroused
8. 花と詩人
9. New Clothes
10. Water Lily
11. いつものこと 
en. オーバーフロー