ジャニーズの現場でのチケット転売についての記事におけるはてなブックマークコメントへの返答

 いくつかの疑問点が挙がっていたので個人的な意見を回答する。

・顔認証は使わないのか?
 私見では、「理論上は可能だが、現実的な運用を考えると難しい」がアンサーだと思う。ジャニーズのライブはたいてい、開場から開演まで1〜2時間しかない間に何千人〜何万人単位のファンを入場させなければならないという制約があり、また、スタッフは大抵派遣会社を通して雇われているバイトであるので、人物の高度な判別技術を持たない。
 ジャニーズのライブチケットに数万円〜十万円前後出して購入するような層は若い女子が多く、その大半はすっぴんと化粧後の見た目を大幅に変化させることが可能なメイク技術を持っている。また、必然的に多額のお金を動かせることから美容整形をしている者も一定数いるため、化粧前と化粧後の振れ幅が大きくなる。そのため、写真での認証となると多少写真と実物の顔が違う人間にも目を瞑らなくてはならない。
 ゆえに、顔認証を導入して厳格に運用すれば、「顔写真と本人が同一人物なのに入場できない人」「顔写真と本人が違うのに入場できる人」が大量発生して現場が混乱に陥ることが予想され、おそらくジャニーズ事務所側はそれを避けたいと思っているため、それを本格的には導入しない。全員ノーメイクで入場することを義務付けるとか、骨格レベルで人間を判別可能な精度の高い顔認証システム(もしくは指紋や虹彩で名義人を判別するシステム)が開発されない限り、その提案は根本的な解決にはならない。

 ※追記:「メイク程度で顔認証が機能しなくなることは考えづらいのではないか」との意見があるが、筆者はいわゆるプチ整形と呼ばれるものを経験しており、涙袋とアゴにヒアルロン酸を入れる前に撮った顔写真の身分証を使用して、とある顔認証チェックを通過しようとしたところ、顔が違うという理由でシステムに弾かれた経験がある。一年程度経過し、涙袋とアゴのヒアルロン酸が半分〜7割ほど吸収された状態で同じ顔認証チェックをしたところ通過することができた。
 そのような経験から、人間の顔というのは簡単に、そして比較的安価に形状を変更可能なものであると考えており、顔認証には個人的に意味を感じておらず、それを踏まえて上記のような一意見をもっているに過ぎないので、ご容赦いただきたい。

・親玉のせいで空席が発生してしまうことがあるか?
 
稀にだがある。
①親玉が「ワープ」をする場合
②地方における公演などで、QRの転売価格が定価割れを起こしており、発券要員が足りず、親玉が複数回発券をする場合
 の二種類がよくあるケースとして挙げられる。
 前者の「ワープ」というのは、例えばセットリストにおいて親玉の応援しているタレントが「Aという曲の立ち位置がメインステージであり、Bという曲の立ち位置がバックステージである」というような場合において、1人が2枚(もしくはそれ以上)の座席のチケットを所持し、ライブの進行に合わせて会場内を移動する行為を指す言葉である。この場合、親玉が友人などを呼んでQRコードの発券作業だけを行ってもらい、その友人にはライブを見ずに退場してもらうことで、必然的にチケットが1人分余るため、1人で2枚のチケットを持つことが可能になり、その後は「中売り」「中買い」などを駆使して求めている場所のチケットを2枚揃えればワープが可能になる。そのため、捉え方によっては空席が発生する。
 後者は、比較的人気のないグループで、さらに地方に所在し非常にアクセスの悪い会場における公演などで発生する現象だが、チケット転売サイトで数千円〜極端な場合には数百円という価格で出品しているのにも関わらず「ランダム」の買い手が見つからない場合が稀にある。その際、所持しているQRの数に対して発券要員が足りないため、親玉やその友人などが入場→発券→退場→入場→発券を時間ギリギリまで繰り返し、求めている座席が発券されるまで場内と場外をループする。必然的にチケットが余るため、空席が発生する。

・高額をどのようにして個人間で決済するのか?
 現金が主流である。フリマアプリを通した決済なども使われているが、トラブルやアカウントBANに発展する可能性もあるため、現金での取引が最も多く行われている。

・事務所が複数名義に対して本格的な対策を取らないのは会費収入が巨額だからか?
 恐らくイエスである。

・仮に推しに認知されていたら、毎回同じような席にいるとやましいことをしているのがバレバレなのではないか?
 
親玉のような行為をしたり、最前列のチケットを毎回購入するような異常なファンのことを「最前ガッツ」「ガッツ」と俗称するのだが、タレント側も「ガッツ」に対して冷たい対応を取る(「干す」と俗称される)者もいれば、「ガッツ」であると理解していながらも手厚いファンサービスを行う者もいる。その為、「ガッツ」が基本的にはやましいことをしているのはタレント側にはバレバレなのだが、バレバレであることでオタク行為に差し支えるかどうかは、応援しているタレント個人の感性によるとしか言いようがない。
 ちなみに、元V6の三宅健さんは、先日のエントリで筆者が書いたような、いわゆる「中取引」の事情を知っている旨の発言をコンサートのMCでしており、ジャニオタ間でその発言が物議を醸していた。

・端末に座席番号を表示すればよいのではないだろうか?
 
先日のエントリで少し言及した「新しいチケットアプリ」でそのような試みがされているのだが、申し込み段階から端末と名義を紐付けする仕組みになっていても、「親玉」が大量の携帯を所持し、その携帯を「ランダム」に配布して入場、入場後に一番いい席を抜く、というようなことが行われているため、あまり意味がない。
 むしろスクリーンショットでのやり取りによる詐欺・トラブル、入場時のデジタルチケット認証エラーが多発して問題が増えたため、事務所は新アプリの積極的な全体導入に及び腰の姿勢であるように見える。
 また、一部の舞台や比較的小規模な公演においては、いわゆる「一般発売」、また「カード枠」(クレジットカード会社経由申し込み枠)のチケットはぴあ・イープラス・ローチケ・CNプレイガイドといった外部に委託されている。そのチケットはwebサイト経由で端末にダウンロードして入場する形式であることが多く、入場後も紙チケットではなく端末に座席が表示される。また、例外的に事前に座席がわかる形式になっていることもある。
 しかし、ジャニオタは高度な情報交換能力と予測能力を有しているため、「◯◯枠はだいたいこの席が出る」という分析を口頭伝承で出回っている掲示板などでされており、むしろ「QR」に比べて出る座席の振れ幅が少なく、例えるならば安定性の高い銘柄として売買されている。

・会場全体で携帯電波を遮断するのが有効な行為ではないか?
 恐らくできなくはないのだが、そうすると入場に必要なQRコードまで開くことが出来なくなるファンが発生しトラブルの原因になると思われる。(ジャニーズのデジタルチケットで使われているQRコードは原則的にオンライン状態で入場口を通すようにと指示がある)
 意図的にではないが、そのような状況になった公演もある。例えば、昨年大阪城公園西の丸庭園で開催された関西ジャニーズJr.のライブは、野外ということもあり携帯電波が脆弱な状況で、そもそも入場に必要な「QR」を開くことができないファンが多発し阿鼻叫喚の事態となった。それでも逞しい「親玉」の一部はさまざまな電波入手手段を駆使して最前列にいたと思われる。
 また、日比谷にシアタークリエという劇場があり、ジャニーズJr.の定期公演が開催されていたのだが、地下のため電波が脆弱な状況でも、オタクたちは比較的電波がある場所を求めて会場内を彷徨い中取引をしていた。電波がある場所にめちゃくちゃ人がいるみたいな感じになるのでちょっと面白い。

・この話において儲かってる人間がいるのではないか?
 
一時的に儲かる人間がいたとしても、その人間もオタクなので、また別のチケットやグッズを買うだけだと思われ、ジャニオタ内でずっと同じお金が循環しているにすぎない。



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