人殺し

最後に助けてくれるのは家族だと言うが、
最期のとどめを刺すのは他人でなく家族だ。

日々に疲れていた。

正社員を辞めて以来、
自分と世間とを比べられる事が苦しかった。

疲れてしまった上に責め立てられる。

数年前は三月の今頃だ。

ふと親にメールをすると、何
かにつけて〜〜で大変なんだから〜〜〜

と心の無い返信が来たと綴ってから数日、
彼女は亡くなってしまった。


助けを求めた手は、カミソリで返された。

憎い。
憎くて仕方がない。
腹の底から湧き上がる。
憎しみだ。

けれど酷な事にこの手のケースは珍しくない。

夜、窓から漏れ出す暖かな光。
聞こえてくる、和やかな談笑。
すれ違う人、前を見つめる真っ直ぐな視線。
明日が憂鬱でも穏やかな寝室。

そんな普通。

そんな普通と遠くかけ離れている人もいる。

心も体も沈む夜。
明日が憂鬱で呼吸が詰まる。
逆立つ神経に眠れず、明けない夜を願う。
それでも迫る今日に気が触れそうになる。

狂っているだろうか。
憂う余裕もない、鬱だ。

自分には関係ない、と思う人もいるだろう。
本当にそうだろうか。
自殺大国日本だ、本当にそうだろうか。
他人事だろうか。

「わたしの友達は鬱だけどそんな事はしない。そんな甘えに逃げたりしない」

そう思うならばあなたは加害者になりうる。
いや、加害者なんてものではない。

人殺しだ。

後悔してから気付いても遅い。

馬鹿は死ななきゃ治らないというが、
馬鹿が治るのは誰かが亡くなった時だ。

人を叩く日と書いて命日。
叩かれて砕けてしまった人の日。

言いたい事は、言った。

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