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開口一番は「死にたい」

弱音を履けば叩かれる世の中だ、その笑顔は偽物がしれない。
苦しみは当事者にしかわからない、忘れちゃいけない大切な事だ。

開口一番、僕の名を呼び「死にたい」
と泣きながら電話をくれた友人がいる。
ずっと一人で抱えて、ずっと我慢していたのかと思うと胸が張り裂けそうになる。

ただ話を聞くことしか出来ない。
そこまで精神的に切迫した状態だ、他にどんな術があろう。

吐き出せなかった痛みを、
肺の奥に溜まってしまった澱んだ空を、
血管を廻る毒えを、
涙腺からこぼさないよう必死にこらえ続けてきた涙を。

電話越しの悲鳴を。

銃声だ、ほらまた銃声がする。
息をひそめ、震える体を抱きしめる。
誰かが呻いてる、囁いてる、見ている。

どこを歩いてきたのか赤い足跡。
ここは何処だろう、見慣れた景色。

何を言っているんだ。
わからないよね。
僕にもわからない。
僕は君じゃない。
わかろうとしてもわからない事はある。

わかるよ、とは口が裂けても言えない。
でもひとつだけ確かにわかる事がある。
君はとても苦しんでいる。
僕も僕で苦しんでいた。
だから、
苦しいという事が、苦しい事である事はわかる。

電話を切る前にひとつだけ、願いを告げた。
酷だけれど、どうか生きて欲しい。
君がいなくなってしまったら困る。

困る、その意味は届いた。

酷い鬱に陥ってしまった友人を、
こんなにも傷つけた人達を、
僕は憎んだ。
誰だかわからない、けれど憎んだ。
腹の底から煮え滾る怒りが込み上げる。
喉の奥が熱くなって叫ばずにはいられない。

弱音を吐けば叩かれる世の中だ。
誰かの笑顔は仮面かもしれない。
奪い合い傷付け合う世の中だ。
その苦しみは当事者にしかわからない。

忘れちゃいけない大切な事だ。

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