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死月一日

悪い冗談ならどれだけ良かっただろう。

ひとりで抱え込んで、塞ぎ込んで
連絡が取れなく事は何度かあった。

それが三日続いた。
嫌な予感がした。

当時、転職を考えながら
ダブルワークしてた職場を知ってたから
兄を装って電話した。

「妹と連絡が取れないのですが、僕に連絡するよう伝えて頂けませんか。」

「お兄さん、それが私たちも連絡が取れなくて困っていまして、、、」

出勤していない?

仕事を入れていない日だった。
蹴るように家を飛び出したのを覚えてる。

春の昼下がりはやや橙の陽射し、
いつも君に会いに訪れていたマンションが
太陽を背に陰り、むしろ暗く大きく見えた。

覚えてる、あの重圧と確信を否定したい予感。

扉の前に立ち、
最後の望みを持って電話をかける。

携帯を投げて君の名を呼ぶ。

扉を叩き、叩いて殴って、
僕にしては冷静な起点が効いたかもしれない。
上の階に住んでる大家さんに話した。

もしそれが今なら、
まだ間に合うかもしれない。

鍵を開けた扉はチェーンロック。

名前を呼んでも反応がない。

外出をしているのなら
チェーンロックはかけられない。

早く警察を、と叫んでも戸惑う大家さん。

警察もチェーンを断ち切っていいか
大家さんに確認しながらもたもたと。

俺の勘違いだったら
弁償するから早くしてくれ。


まだ間に合うどころか死後数日。


あの絶望感。


君の命日、
例年通り僕は下北沢に行って出会った日を弔い
線香を焚き、
ビールを2つテーブルに置いて、
心の奥に潜って君と話をした。

四月、今年の春の鬱は
僕の双極を悪く悪く傾かせた。

ツイートはしたものの、
こうして書いて向き合う余裕がなかったのか
遅くなってしまった。

今、五月二日のライブに向けて準備をしてる。

コロナ禍、やっと決まったライブ。

もし君が横にいたなら
やっとライブが決まった事を
喜んでくれただろう。

そう思うと
ライブが決まった反面、辛かった。

日付は変わってしまったけれど
今日、四月十八日。

うたた寝をしてしまって
シャワーを浴びてビールを開けながら今。

僕の音楽を好んでくれていた君を想う。

体を壊して遠ざかっていたステージ、
体勢が整ってやっと挑むライブ、
きっと君は喜んでくれただろう。

五月二日は君に捧げる。


春の鬱に打ちひしがれている昨今、
うまく体が動かなくて
思うように声が出せなくて今日は苦労した。

「大丈夫だよ、あなたは獣だから」

そう言って欲しくて今綴っている。

THE NOVEMBERSを聴きながら。

体に神経を通わせる術と
体ごと音になる術を試した今日のスタジオ。

大丈夫、どんなに双極が鬱に傾いてもやれる。

僕より僕を信じてくれていた君。

「大丈夫だよ、でも喉には気をつけてね」

わかってる、大丈夫、
ここ近年のヘマは踏まない。


疲れて帰宅して、少し食事をとって、
ベッドの足元で大の字になって寝落ち。
そして暁の刻は間もなく。

ねえ、君はいつ命を絶ったのかな。
もうすぐ来る五時頃だろうか。
明日を拒む暁の刻は危ういという。

貴女はそうだった、
君はどうだったのだろう。

文末が見えないから〆よう。

会いたいよ、とても恋しくて悲しいんだ。
愛してるよ、だから苦しくて辛くて、
もう一度君に抱かれたい。

死力を尽くして生を叫ぶから
宇宙の果てに精神世界があるのなら、

君に届けたいと思ってる。
僕の命と、生と死を。

愛してる、ありがとう、

僕を殺しそうな時に救ってくれた君へ。

ありがとう。

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