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【同人音声界隈】整音/音声編集って何?

はじめに

ご覧いただきありがとうございます。
整音/音声編集をしている「くじら137号」と申します。
https://twitter.com/137KJR137

この記事では、主に同人音声界隈の方々に向け、

・整音/音声編集ってそもそも何?
・具体的にどんな作業をしているの?
・どんなメリットがあるの?

など...

一から実例を踏まえてわかりやすく解説していきます。

音声作品やゲームに携わる方に必見の記事となっております。
あなたの作品をブラッシュアップするきっかけになれば幸いです。

手っ取り早く結果だけ知りたい人向け

前半が声優さんからお預かりしたデータ、後半が整音後のデータです。

「蜜月杏」様にご協力いただきました。
https://twitter.com/Ann_honeymoon

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自己紹介

改めまして、「くじら137号」と申します。(R指定作品名義)
https://twitter.com/137KJR137
本業でアプリゲームや携帯ゲーム、遊技台などのボイス編集をしています。

守秘義務があるため記載できませんが、アプリストアランキングの上位に常駐しているゲームを担当しています。
アニメ好きならだれでも知っているような有名声優様の編集も数多くこなしております。
(こうやって書くと胡散臭い...)

同人音声作品やゲームの製作に携わりたく、ご依頼を募集しております。
ご相談やお見積りは無料ですので、お気軽にTwitterのDMにご連絡ください。

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第一章 「整音/音声編集とは」

ここではそもそも「整音/音声編集」って何?という方に向けて解説していきます。

●作品制作における音声編集者の立ち位置

音声作品やゲーム/アニメなどには、様々な方が関わっています。
シナリオ、声優、プログラミング、映像、ライティング、広告etc...
その中でRECエンジニア/MAエンジニアと呼ばれる人たちは、「音に関するプロフェッショナル」という立場で作品制作に関わっていきます。

具体的には...
①声/楽器/SE/環境音などの録音 → レコーディング
②用意したオーディオ素材の整理/ノイズ除去/ → 整音/音声編集
③整理した素材の実装/エフェクト処理など → ミックス/ポスプロ

などという工程に分かれています。

プロの現場では大きく分けてこの3つの工程に分かれて作業することが多く、各工程でそれぞれ別の人が作業をします。
私は②の工程に携わっていますが、同人の現場では全工程を一貫して行うこともあります。

●「整音」とは
※ここから先は「人が喋ったセリフを編集する」という作業に絞り解説していきます。

①データの規格や音量を合わせる
この工程は主に同人作品の編集で行います。
拡張子、サンプリングレート、ビット深度、音量など...
お預かりしたデータを作業しやすいように統一します。

②ノイズ処理
スタジオや自宅で録音した音声には、さまざまなノイズが乗っています。

・空調や環境音、機械が発するノイズ(サー.../ジー.../ブーン...etc)
・「吹かれ」という、空気が多く入り込むノイズ(ボフッ...)
・リップノイズ(ペチャ.../クチャ...)
・喉鳴り(ウッ.../グッ...)
・痛い高音(サ行/タ行)
などなど...

スタジオや声優さんが悪いわけではなく、ある程度仕方のない部分があるのですが、これらのノイズは良質な作品には不要なので除去していきます。

これらの作業を行うことで、所謂「聞きやすい音声」にブラッシュアップすることができます。

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第二章 「RX」「SoundForge」を用いたノイズ処理

ここからは手順を追って具体的に整音の実例をお見せします。

※見本用の音声として声優の「蜜月杏」様にご協力いただきました。
一般的な宅録環境を想定し録音していただきました。
また、わざと各種ノイズが目立つようにお願いしているため、「蜜月杏」様の品質が悪いわけではありません。
第一章でも記載した通り、ある程度のノイズはプロの現場でも日常茶飯事です。
このような特殊なご依頼にも関わらず、迅速で丁寧なご対応ありがとうございました!

●フォルダ整理/バックアップ
全ての工程に共通しますが、フォルダの整理とバックアップを逐一取ります。
整理整頓はスムーズな仕事の要です。
バックアップがあれば、何か問題があったときに古いデータをすぐに復元できます。

●「SoundForge」での一括処理

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「SoundForge」のバッチプロセッサを使い、自動化できる処理を施していきます。
①ノーマライズ
②ダイナミクス調整 (音量差をある程度揃える)
③一括ノイズ処理
④リサンプリング

②③の作業を行うことで、後々の作業がやりやすくなります。
ここでのコツは「やりすぎない」ことです。
あくまで補助的な作業として一括処理を行います。

④の作業は正直あまり意味はないのですが、バッチ処理のついでに慣習的に行っています。
48kHz/24bitにアップサンプリングしますが、それ以上の解像度でお預かりした場合はそのまま作業します。

補足:32bitfloatについて
なぜ32bitfloat(以下32bit)ではなく24bitにするのかというと、容量が大きくなるだけで意味がないためです。
有識者の方であれば32bitのメリットについてご存じかと思いますが、録音段階で音割れしていなければレベル変更をしない限り32bitで書き出す必要がありません。
DAWソフトや波形編集ソフトが32bit/64bitに対応しているため、ファイル自体が16bitや24bitでも音割れは発生しません。
でなければ、DAWのフェーダーを+0.1dbしたりEQで少し突いただけでクリップが発生することになります。
ただ、「私の組んだバッチ」では24bitで十分なだけであり、工程が変わった場合には32bitで書き出すことが有用な場合もあります。
本題から逸れてしまうので、ここまでとさせていただきます。
※「とーくばっく~デジタル・スタジオの話」という本に詳しく記載されているため、ご興味のある方はご覧ください。
補足:アップサンプリングについて
サンプリングレートやビット深度のアップサンプリングについて私が思う結論は、
「確実に音は変化するが、同人音声の現場では気にするほどでもない」です。
バッチ処理のついでに行う&エイリアスノイズ低減のおまじない 程度で慣習的に行っているだけです。
アップサンプリングをしたら音質が向上するというわけではありません。

●「RX」での手動ノイズ除去

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iZotopeの「RX」を使い、一括処理で取り切れなかったノイズを手動で除去していきます。
整音作業の一番のキモで、作業者によって結果がかなり変わってくる工程です。
ノイズ除去だけでなく、発声を改善するなど...積極的な処理をすることもあります。
次章で事例ごとに解説していきます。

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第三章 ノイズ処理の実例

この章では私が行う整音作業を、順を追って解説していきます。

【1.オリジナルデータ

※このデータだけ音が小さいためご注意ください!

こちらが声優さんから送られてきたデータです。
ピークが-10db~-15dbほどと標準的な音量で、音割れもありません。
編集作業をしやすいように、ノーマライズと一連処理を施します。

カットは本来ノイズ処理後に行うのですが、この記事では見本用に先にカット処理を施しております。

【2.ノーマライズ】

※ここから音が大きくなりますのでご注意ください!

【3.プラグイン一括処理

先ほどのデータを-1db程度までノーマライズし、一括処理でダイナミクス調整やノイズ除去などを行いました。
今回は48kHz/24bit/モノラルで納品していただいたため、リサンプリングはしていません。

何もしていないデータと一括処理をしたものを聞き比べてみましょう。
(ノーマライズだけ-1dbで統一してあります。)

処理を行うことによりダイナミクスがある程度統一され、聞きやすくなりました。
しかし一緒にサー...というノイズも持ち上がってしまっています。
また、細かいノイズや耳に痛い部分があるため、そちらも手動で処理をしていきます。

【4.全体的なノイズの除去】

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ここからRXを用いた手動ノイズ除去を行います。
まずは、音声以外の部分のノイズをカットします。

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「Voice De-noise」を使い、ノイズ部分だけを解析しレンダーします。
この処理を行うことで、音声に被ってしまったノイズも除去することができます。

ノイズ部分だけを選択し読み込ませます。
設定値は適宜調整します。

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適用後の画像です。
音声への影響がほとんどなく、ノイズだけ除去されていることがお分かりかと思います。

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音声以外のバックグラウンドノイズをバッサリ切ります。


【5.手動でのノイズ除去】

バックグラウンドノイズを除去しただけでもかなり聞きやすくなったと思いますが、綺麗になった分目立つノイズがたくさんあります。

・「吹かれ」という、空気が多く入り込むノイズ(ボフッ...)
・リップノイズ(ペチャ.../クチャ...)
・喉鳴り(ウッ.../グッ...)
・痛い高音(サ行/タ行)
などなど...

RXの各種ツールを駆使し、人力で残りのノイズを除去していきます。

「処理例1」

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「処理例2」

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「処理後の音声がこちら↓」

【6.比較】

最初に、ノーマライズだけしたオリジナルデータを。
次に、ノイズ処理が完了したデータをお聞きください。

全体的なダイナミクスが揃い、音質を損なうことなくきれいにノイズ除去ができていると思います。

これがいわゆる「整音」という作業です。
個人的には「マイナスをゼロに戻す工程」だと思っています。

【7.その後】

「整音」が終わったらDAWソフトを用いた「ポスプロ/ミックス」の作業に移ります。
こちらは「ゼロをプラスにする工程」と考えています。

具体的には

・声の音作り
・BGM、SEなどの挿入
・パン振り
・各種エフェクト処理
・マスタリング
などなど...

作品として完成させるために、「整音」とは頭を切り替えて作業する必要があります。

この記事では詳しく記載しませんが、次回の記事で解説しようと思います。

おわりに

以上で「整音」の一連の作業が終わりました。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

このような作業のご依頼を受け付け中ですので、お気軽にご連絡ください。
ご相談やお見積りなどは無料です。
https://twitter.com/137KJR137

ほかにも同人音声界隈の方々に向けた記事を執筆予定ですので、よろしくお願いします。

くじら137号






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