呪殺

そうか、そうだよな
死ぬべき人はこの世にごまんといる。

実は私、ある古本屋で、とある文書を入手したのだ。
それは数百年前にチベットでその名を上げた、
ある行者の秘法を記した文書の翻訳である。
随分古い文書だけど、そこにはある呪殺の秘法が記してあった。

"殺すことは慈悲である
呪うことは説法である
呪い殺すことは慈悲の教えである..."

そうなのか
もしそうであるならば
私はこの世の中のうちで
どうすることもできないゴミどもを
処分するのだ。

そこで私はある男を思い出した。
こいつはとんでもないクズである。
自分は天才だと思い込みつつ、
夜中に汚い音で麺をすするしか能の無いバカである。

そうしてこの男は文句ばかり叫びあげ周りを疲弊させ
そのくせ自分のことを何一つ省みない穀潰しである。

私は月の光が照らす誰も訪れない墓石の前で
ガムの銀紙の中に閉じ籠りながら
一心にその男の死を念じた。

そしてその数日後
ある川で男が頭を岩にぶっつけて死んだ記事を見つけ
その死者の名をみたら
まさにその男であった。

これはいい


そこで私はまた別の男を思い出した。
こいつもとんでもないゴミである。
親父の地位を誇りながら、実際のところは屠殺し損ねた豚まがいのツラと
図々しく肥太らせた体しか受け継いでいない能無しのクズである。

この男は周りのあらゆる人の気持ちを想像すること無く
自らの行いを省みることはただの一度もなかった。

私は赤い星の光が照らす汚い河原の土手で
糞だまりとゴミ溜めに身を埋めつつ
一心にその男の死を念じた。

そしてその数日後
ある海で船から男がひっくり返って海に落ちて死んだ記事を見つけ
その死者の名前をみたら
まさにその男であった。

これは実によい

そしてさらに私は別のじじいを思い出した。
こいつはクソの役にも立ってこなかったくせに
自分は一番偉く正しいと思い込んでる紙ゴミ以下のクズである
自分のケツさえ自分でどうすることもできなくなりつつあるのに
自分の言葉に全ての人は平伏するはずと本気で信じている。

私は青い月を黒い雲が流れるある深夜に
街外れのマンホールから下水管に忍び込み
悪臭を吸い込みながら一心にその男の死を念じた。

そしてその数日後
台風で氾濫する川の様子を見に行き死んだバカの記事を見つけ
その死者の名前をみたら
まさにそのクソじじいであった。

これは実に良い

そういえば週末にまた大きな台風が来るのだよな
よし、その力を、海から沸き上がるその大いなる力を、
私は手にいれよう

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週明けのある日の記事


「昨日関東に上陸した台風12号は各地に爪痕を残し、今朝温帯低気圧に変わった。一方今回の台風の死者は1名にとどまり、難破した筏(いかだ)から海へ転落し浅瀬の岩に頭をぶつけ死んだ男性(39)のみであった。」

この男の自宅には古文書が放り出してあったとのことである

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