忘れられた遠き日の教え

私はある時ふと思い出した

"そうそう
そういえば私がね
この世の中へと生まれおちる前に
確か1000の10000000000乗の
99999999762567倍よりも大昔だけど
私はある王国にいたんだよな

そこで乞食をしていたんだよ

その王国は国自体が貧しかったんだけど
そこにはある変な先生がいてね

その人は最期は狂って死んだらしいけど
どうも教え子たちが先生の言葉を
書き留めてたらしいんだよな..."

ふとカバンの中を覗いたら
見たこともない文書があった

そこには次のように書いてあった

---------------

このように私は聴いた

ある時世尊は
弟子達の前に於いて
月の光の下
ひとつの教えをお示しになられた

善男子よ
この教えを心にとどめよ

ある老人ありき
この男は生涯何もよきことをなさず
自分一人のみ偉しと思い

周りの人々を
思いやることこれ無く
ただ自尊心ばかりを育てた

かくのごとき男は
死ぬことだけが
ただひとつの善行である

もしこの男死ぬことがないなら
この男を殺せ

これを聴きシャーリプトラはこう述べた

世尊よ
それは恐ろしいことです
人を殺すことは
五逆の初めであり
地獄への道の契機となります

なぜあなたは
そのような恐ろしきことを
仰せになるのですか

仏は述べた
シャーリプトラよ
殺すこともまた
慈悲の現れなり

憎しみと嫌悪の念は
慈悲の念に通ず

その者を殺せ
ただ殺せ

自らの手で
殺すことは能わず
ただその者の死を思え

その時に
仏は諸々の神と聖人を遣わし
その者は命終せん

命尽きて後
阿鼻の大火に焼かれ
その者の罪業は尽きなん

故に諸々の悪人はまた
我らが善行の種とならん

--------------

そういえば思い出したその日も
月の光が私を照らし出していたような...

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?