5月18日のはなし

これを昇ればいいのだろうか。周りを見渡しても、目の前にある高くそびえるらせん階段以外なにも見当たらない。そういえば僕は何でここにいるんだっけ。どこから来たか覚えてない。どこから来たかを思い出せないときは、夢を見ているってディカプリオが言ってた気がする。ではここは夢か?コマがあればわかるのに……それもディカプリオのやつじゃないか。何か持ってないかポケットの中を全部地面に出してみる。ホッチキス、チョコエッグ、ガソリン、AirPodsの右、15円玉、酒瓶の蓋、、、

酒瓶の蓋!これは確かコマにできる。ぎゅんと回すとすごい勢いでまわり始める。どんどん加速し、ついには火を噴き始めた。ガソリンに引火し、あたりが火の海になる。危ない危ない、らせん階段に昇ることで難を逃れた。どうせならこのまま昇ってみよう、そのうち目が覚めるだろう。なんか高いところから降りられなくなる映画があったな、どうやってその状況になったのかだけ気になる。

長い階段を昇っていると、クレヨンしんちゃんを思い出す。カメラに置いて行かれて、また追いついたと思ったら傷だらけになっているしんちゃん。かなり印象に残っているシーンだ。あれは東京タワーだっただろうか?赤い階段だったのは覚えているが、大阪万博が舞台だった気もする。

「それは知らないけど、いつまで昇るの?」

見知らぬカラスが話しかけてきた。

「知るか」

カラスはカァとひと鳴きすると去っていった。飛び去る奴のくちばしがきらりと光った気がする。あっ15円玉を持っていかれた。しまったな。カラス……カラス……あ、なんかカラスでできた階段を下っていくシーンが何かであったはずだ。階段を昇りながらカラスに逃げられた今とは真反対のシチュエーションだ。そうか?

30分ほど昇っただろうか、足が棒になりかけたその時、階段が終わりを告げた。少しひらけた空間、ドッヂボールができそうなくらいの面積。縁を囲う柵越しに下を見下ろすと、海。水面までは1mもない。ずいぶん昇ったと思ったが、そんなことはなかったようだ。安心して座り込み、柵の間から足を出して、つま先で水面に触れる。冷たい。ピチャピチャと海水を蹴り上げて遊ぶ。えっと、こんなシーンがある映画は……映画は……


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