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あの日のこと


11月20日深夜、仕事を終え家に帰る途中。

音楽を流しながら歌ったりして、ここを左だな〜と何度も通った道だがナビで確認して曲がる

昼なら別だが夜だとわかりにくい小道で、目だけだと見逃してしまうことがあるからだ。

この時の車のスピードは20〜25㌔くらいだったと思う。

次の記憶はエアバッグとキスする一秒前のダンダンダンという衝撃。

あ〜事故ったのかと思ったと同時に車内に漂う焦げるような臭い。

身体は下に向いて、ベルトが腹を締め付けている。

斜面か?壁にぶつかったような体感だが落ちたのか?

焦げ臭いのはガソリンか?なんだ?

しかし音楽うるせえな、自分がつけてなんだが、空気読んで止まれよ。

これは今日は会社行けないな。

上司に連絡して病院に行って、1日身体を休ませる。

そうだ、そうしよう、それでいこう。

よし脱出する。

動く、顔は痛いが腕も足も動く。

身体を支えているシートベルトを外す。

メガネは、メガネはどこにいった

エアバッグに飛ばされてしまったのか

俺はあいつがいないとダメだ。

よしあった、助手席の足元に落ちていた。

しかし助手席に誰も乗せていなくて良かったな。

もうフォロワーさんも僕の車に乗せてとは言わないだろう。

なぜか音楽を止められないからボリュームを0にして、警察と保険会社に電話した。

警察も保険会社も現在地を聞いてきたがうまく答えられない。外灯がなく何もわからない。

○○の倉庫の前の小道を曲がって数百メートルくらい、という説明で警察は

「とりあえず向かいます」と言ってくれたが保険会社は山口にあるわけじゃないのでなかなか話が進まなかった。

職場の上司にもLINEで報告、どのような状況か聞かれたが、自分でもよくわからない。

連絡が終わり鍵を抜こうとしたが、抜けない、衝撃でロックでもかかるのか?わからないが抜くのは諦めて、神のキーホルダーだけ回収だ。これだけは無くせない。

ドアを開ける、滑る、斜面だ、草生える、いや笑えない。

ガチで上がれない

水の音がするから川か、川に落ちたのか

靴に水が染み込んできた。

仕方がない、後部のドアも開いて腕をかけ身体を上げ、次は足だ

嫌なボルダリングだな、後部のドアを足場にして腕を伸ばすと木の枝を掴むことができた。

大丈夫か?折れないか?いやいける、行くぞ。

行った。無事アスファルトの地面に立つ。

とりあえずツイートした。廃人だな。

パトカーが来た、3人だ、おじさんおいちゃん若手。

そのうちの1人は僕のことを知っていた、以前ドラクエウォークしていたときに職質された相手だった。

エリア担当なのだろうか。

なぜこうなったか聞かれたが、わからないとしか言えない。

定番の呼気検査、もちろん反応はない、ここ7年は一滴も酒は飲んでいない。

鹿でも出たのかと聞かれたが、出ていませんと答えた。しかし鹿のせいにしとくべきだったか?ここは猪も猿も熊も出るからな、不自然ではない。

自分の中のクズな部分が「寒いな、パトカーに入れて話させてくれねえかな」と騒ぎ出す

いけないわスペネコ、ここで警察官の心象を悪くするのはよくないわ。

なんだかんだで話はすすみ、道交法的な罰則はなし、気をつけなさいよとの説諭だけで終わった。

だが最後に今まで大人しかった若手警察官が近づいてきた

「こんな小道でハンドル操作をミスするなんて不自然ですよね、見てたんじゃないですか?スマホ」

俺はわかっているぞという表情、わかってないが。


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それから現状をどうするのかという話になり、保険会社から業者に連絡がつき、運良く?地元警察官も認める引き上げの名手が来ることになった。

落ちたのになぜか真後ろに木があるという、中々引き上げが難しそうな現場だと地元警察官が言っていたから名手が来るのは運がいい

寺生まれのTさんとか解体屋ゲンみたいだな

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隣町から来た引き上げの名手はワイヤーやフックを色々調節しながらどうにか車を回収。

「難儀な仕事をさせていただきました」

と挨拶、そして僕は名手が帰るついでに車に乗せてもらい帰宅した。

帰って猫を抱いて、しばらくして寝た

(完)