謎制作の妄想未来予想図

部屋を明るくして離れて読んでね

この記事は、タイトルの通り「妄想」であり、一種の怪文書です。真面目に読まないように気をつけましょう。用法・用量を守って正しくお読みください。


豊胸黙示録とは何だったのか

タイトルに反して、まずは過去の話から。何だったんでしょうね、一体。

2020年の年の瀬、「ほうきょう」を50音表で左にずらすと「もくしろく」になるという気付きを投稿し、6000RT/1.7万いいねを超えるくらいに伸びた。普段は投稿が伸びるタイプでないので、これは異例のことだ。

未だに根強い人気があり、一部工作員達によって何故か定期的にリポストされている。コイツらはマジでなんなんだ。



当時を振り返ったところ、人の持ち帰り謎制作の相談に乗って単語検索ツールを作りつつ、年末の大掃除をしていたらしい。その過程でPC環境の整理に取り掛かり、昔作ったツールを改修して動かそうと思ったようだ。

「あさもや+13→ネメシス」面白いな、いつ使うのか知らんけど
もっと大掃除に集中しろ

雑に作ったツールなので数時間かかったが、「3文字以上のすべての単語」の「全パターンの文字ずらし」を検索完了した。

検索結果の中で「一番面白い」のに「一番使えなさそう」だったのが「ほうきょう+5→もくしろく」だった。
謎にせずそのまま出した方が面白そうだったのと、「謎界隈の中で伝われば良いだろう」と思ったため、説明不足なのを承知の上で、語感重視で川柳っぽい短文で投稿した。

説明不足だったことが「すぐは意味が分からないが、リプライを確認すると誰かが貼ってくれた50音表を見ると意味が分かる」という状況を生み、それが恐らく良い方に働き、謎界隈の外に届くバズとなった。

「どうやってそんなこと気付くんだ」みたいなリプライが複数寄せられたが、その答えは単純で「探したから見つかった」のだ。
面白い文字ずらしのパターンを偶然見つけたのではなく、そういう単語を全部探した中で、一番面白いものだけを投稿したに過ぎない。




さて、徐々に本題に移る。

「豊胸黙示録」は、私は謎制作においてとても意義のある発見だったと思っている。
「豊胸黙示録」は、単なる「単語の検索」ではなく、その先にある検索だと考えているからだ。

記事の後半で詳しく書こうと思う。


これからの謎解きの話をしよう

突然だが、みんなは「未来の謎解き」について考えることはあるだろうか。私はある。頻繁に。

「その時代における最先端の謎を作ろう」と思って作った謎が過去にいくつかある。それらは、約2年経った後に「あ、時代が追いついたんだな」と感じることが多かった。2022年に作った謎はまだそれに追いついた存在を観測できていない。2024年に追いつかれると良いなと思う。楽しみだ。

最先端の謎を作りたいので、「その時あるツール」では太刀打ちできないことが多い。まだ無いツールを妄想し、「こんなツールがあれば良いな」と何度も考えた。
なので、「ツールの進化」をどの謎制作者よりも重要視してきたし、進化させるための努力をしたつもりだ。


謎制作界隈にとって将来的に需要が出ると感じたものは、わんどさんに相談し、その一部は仕様策定のための会話を重ねた(大半はそんな暇も無くすぐにツールが完成していて驚かされたが)。
結果的に、「複数アナグラム検索」「クロスワード検索NEO」「ワードマッチングツール」「汎用検索」等が生み出されてきた。

「汎用検索」は最近公開されたばかりの最先端の単語検索ツールで、その便利さを以下の記事で紹介している。一度は必ず目を通してほしいと思う。


また、ツールとは少し違う話だが、「イラストで表現できるものの辞書」を制作し、2023年11月に公開した。広く使われてほしいので、無料で誰でも使えるようにしている。

確認したところ、イラスト辞書制作は少なくとも2021年8月頃には動き始めており、完成に長い時間を費やしている。まあ、2年以上かかったのは自分の謎制作が忙し過ぎたという理由が大きいが。


ツールや辞書が進化すると界隈全体の謎制作が底上げされると信じている。だから、ツールや辞書は進化し続けてほしい。


これまで進化し続けてきたものの、ツールや辞書にはまだまだ課題が多い。

私の独自理論だが、謎制作において「4つの課題の種」が存在しており、それらを解決する必要があると思う。

ツールの会話をよくするわんど氏、すーぴか氏には「4つの課題の種」について何度か話した。怪文書的な内容なので100%の共感を得られているかは不明だが、大筋は同意してもらっており、解決すべき課題だという認識を共にしている……はずだ。多分。


4つの課題の種

「課題」とは、界隈全体が抱える課題だ。
これらの課題に対応しないと、謎制作の進化にツールが追いつかず、どこかで頭打ちになる可能性がある。

詳しく説明していこう。


課題1:検索(Search)の課題

「検索」は既にかなり進化していて、大勢に使われている。

謎制作では「面白い性質を持つ単語」を見つけたいことが多く、辞書ファイルから条件を満たす単語を探すという「単語の検索」を頻繁に行う。

ただ、「単語の検索」は検索が果たすべき役割の最初の段階に過ぎない。課題について考える際、検索の進化を4つの段階に分類して考えることを提案したい。


・1次の検索(単語の検索)
単語の一覧という1次元的な広がりに対して行う検索で、条件を満たす単語を見つけ出すことが目的となる。

いかに複雑な条件の単語を、いかに速く探せるかが重要視される。

古くから存在した辞書ファイル「豚辞書」のおかげで、黎明期から「単語の検索」を行うツールは複数存在していた。
2020年頃に登場した「謎解き単語検索β」は正規表現検索等の便利な機能が洗練されたUIで使えるため、お世話になっている謎制作者が多い。
2022年末に登場した「EnigmaStudio」は、さらに高度な検索を実現した。


・2次の検索(関係の検索)
単語のペアという2次元的な広がりに対して行う検索で、条件を満たす関係性の単語ペアを見つけ出すことが目的となる。

関係性とは、例えば「単語Aを50音表で左にずらすと単語Bになる」のようなもので、「ほうきょう+5→もくしろく」はまさにこれにあたる。

「関係の検索」を行うツールは一部界隈で開発はされていたが、一般に広まったのは2023年末にリリースされた「汎用検索」が初となるだろう。

2024年1月時点、謎制作はこの段階にいる。


・3次の検索(変換の検索)
「単語ペアと変換法則」という3次元的な広がりに対して行う検索で、条件を満たす変換法則と、それを満たす単語ペアを見つけ出すことが目的となる。

これが実現すると、抽象的な変換法則のアイディアがある場合に、「変換法則」「単語ペア」の両方を同時に検索できる。

例えば「同じ文字数の単語を50音順で足すと別の単語になるもの」というアイディアに対して
「雲(8/35)」+「月(18/7)」=「晴れ(26/42)」のような組み合わせを検索する。
(これは「+18/+7する変換」と「雲」「晴れ」の2単語のペアという組み合わせ、あるいは「+8/+35する変換」と「月」「晴れ」の2単語のペアを検索している)

他にも、例えば「はがき変換的な文字変換を複数繰り返して別の単語になるもの」という抽象的なアイディアに対して「変換法則」「単語のペア」をすべて列挙することもできるだろう。


・4次の検索(面白さ・美しさの検索)
既存の検索とは一線を画し、「面白い/美しい単語(単語ペア)・関係性・変換・謎」等を検索するものである。

将来これがどう実現するか、そもそも実現するのかは不明だ。


課題2:評価(Evaluation)の課題

謎制作における「評価」と言われてもピンと来ないだろう。現状ほぼ発展しておらず、今後大きく改善されるべき課題だ。

「検索」が進化すると、大量の検索結果が出る検索をする機会が増える。その時、大量の検索結果から「一般的で使いやすい単語」「綺麗な単語」「謎の題材にあった単語」「関連度が高く、統一感を感じさせる単語の組み合わせ」等を素早く見つける技術が必要になる。

そのために、「使いやすさ」「美しさ」等の指標を用いて重み付けを行う仕組みが必要になる。それが「評価」だ。

評価についても、検索と同じく4つの段階に分類して考えたい。


・1次の評価(単語の評価)
単語に対して行う重み付けで、「知名度」「実用性」「謎解き問題での扱いやすさ」等の指標を用いて、検索結果から良い単語を探すことが目的となる。

2024年1月時点、謎制作はかろうじてこの段階にいる。
「豚辞書」「一般語」「イラスト辞書」等の「収録単語数の差がある辞書」を使い分けることで、「評価」のようなものを大雑把に行える。
例えばクロスワード検索NEOというツールでは「一般語から抽出した検索結果を、他の辞書から抽出した検索結果より上に表示する」という仕組みがある。


・2次の評価(関係の評価)
単語のペアに対して行う重み付けで、「意味の近さ」「関連度」等の指標を用いて、2次~4次の検索における検索結果から良い単語の組み合わせを探すことが目的となる。


・3次の評価(変換の評価)
単語のペアに対して行う重み付けで、「謎解きにおける『変換』をどう行えば結び付くか」という指標を用いて、2次~4次の検索の検索結果の中からより謎解きに使いやすい単語の組み合わせを探すことが目的となる。

2次の評価までは謎解き以外にも役立つ概念だが、これは完全に「謎制作」に特化した概念となる。

少ない個数の簡単な変換で結び付けられるほど評価が高く、多くの変換や複雑な変換を必要とするほど評価が低くなる。


・4次の評価(面白さ・美しさの評価)
既存の評価とは一線を画し、「面白い/美しい単語(単語ペア)・関係性・変換・謎」等を評価するものである。

これが将来どう実現するかは不明。


課題3:簡単(Easy)の課題

謎制作ツールが難しくなりすぎず、多くの人に簡単に利用できるべきだという課題だ。
今後ツールが進化するほど大きな課題になると予想される。

ツールを設計する際に、仕様やUIを複雑にし過ぎず多くの人が使いやすいように意識する必要がある。また、マニュアルの整備やナレッジの共有が積極的に行われるべきであり、ナレッジを共有し合う風潮や、共有しやすい環境が必要になるだろう。

この課題は、他と違い段階的に分類した目標設定が難しい。
逆に言えば、あらゆる場面で常に存在する課題だと言えるだろう。


課題4:辞書(Dictionary)の課題

「辞書」とは検索の対象となる語群のことだ。最も有名な辞書ファイル「豚辞書」は20万超の収録単語数を誇るが、そのせいで検索結果が大量に出てしまうことがネックであり、古くから指摘されていた。これは最終的に「評価」で解決すべき課題だが、これまでは辞書の改善という方法が試みられてきたし、それも十分有効な手段だ。

辞書は、今後根本的に変化する必要があり、今はその過渡期にいる。辞書の進化も4つの段階に分類して考えたい。


・1次の辞書(単語の辞書)
単語の一覧という1次元的な広がりを持つ辞書で、単語の検索の入力にすることが目的となる。

収録された単語数の多寡や、「特定ジャンルの単語のみが収録されている」等の性質の違いが重要視される。


・2次の辞書(関係の辞書)
「特定の関係性のある単語同士」という2次元的(あるいはそれ以上)な広がりを持つ辞書で、2次~4次の検索の入力にすることが目的となる。

例えば「漢字と読みがなのペア」「英単語とその和訳のペア」「対義語のペア」「漢字とそれを構成するパーツの組み合わせ」等が羅列された辞書となり、検索過程で行う変換処理において強い効果を発揮すると期待される。

2024年1月時点、謎制作はこの段階に差し掛かりつつある。
2024年中に様々な「関係の辞書」が制作され、活用が進むことを期待している。


・3次の辞書(変換の辞書)
「『変換』で結び付く単語同士と変換ルール」という3次元的(あるいはそれ以上)な広がりを持つ辞書で、2次~4次の検索の入力にすることが目的となる。
単語だけでなく変換という抽象的な概念を収録する必要があり、具体的にどう実現するかはまだ不明である。


・4次の辞書(面白さ・美しさの辞書)
既存の辞書とは一線を画し、「面白い/美しい単語(単語ペア)・関係性・変換・謎」等が表現されたものである。
ある意味アカシックレコードと呼ぶべき存在であり、これがどう実現するかは不明である。


これから起こるべきこと

4つの課題の種を解消するため、いくつかの技術革新が必要となる。何がどのような順で起こることになるか、私の予想をいくつか書いておく。
当たらなくてもノークレームでお願いしたい。

・第1の波(検索の波):「単語の辞書」「単語の検索」
2020年以前に到来済の技術革新。古くより存在した「豚辞書」を「単語の辞書」として用いた検索ツールによって「単語の検索」が実現し、謎制作で広く活用された。


・第2の波(関係の波):「関係の検索」「関係の辞書」
2023年末~2024年に到来する技術革新。EnigmaStudioに「汎用検索」がリリースされたことで、高度な「関係の検索」が可能となる。
また、「関係の辞書」の重要性が認識され、「辞書の多次元化」「辞書の民主化」が起こり、2024年に本格的にその制作が行われ始める。

「辞書の多次元化」
単語の羅列と捉えられていた「辞書」の概念を拡張し、辞書が単語と単語の関係性等を表現することになる。また、活用方法が広がることで「単語の読みがなの羅列」という性質からも脱却し、漢字かな混じりの辞書や日英混在の辞書等が作成され始める。

「辞書の民主化」
「一部の人だけが辞書ファイルを作成し公開する」という風潮を廃止し、多くの人々が辞書制作に関わるようになる。「こんな辞書を作りたい」という需要とその作成を行う人がマッチングし協働して辞書制作に取り組むようになる。


・第3の波(評価の波):「単語の評価」「関係の評価」
2024~2025年頃に到来してほしい技術革新。「単語の評価」「関係の評価」の技術が登場し、単語探しに実用化され始める。



その先、第4の波(変換の波)第5の波(面白さ・美しさの波)の順で技術革新を予想しているが、やや先の話なので詳しい記載は控えておく。

2030年頃までに「面白さ・美しさの検索」と呼べるものが実現してほしいな、と思っている。


この文章をシラフで書き上げてるの、怖くない?

この怪文書をここまで読んだ皆様、お疲れ様でした。

「こんな課題があると考えたことがなかった」という人が多いだろう。それらの課題を整理して言語化することで、皆に把握だけでもしてもらえると嬉しい。

絵空事な内容が多いが、その一方で取り組めばすぐに成果が上がりそうな身近な課題があるのも確かだ。

今後、課題を解決するツールが開発された時、この記事がその理解の助けになるかもしれない。


ツールが進化すれば、これまで以上に面白い謎が作られるようになると私は信じている。


未来が今よりもっともっと面白い謎解きで溢れますように!

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