辞書登録は侮るな
ごめんね、謎解きの話じゃなくて
これまで謎解きの話ばかり書いてきたので、今回もそうだと期待して読みに来た人がいるかもしれない。
今回は辞書登録機能を活用しようね、という話なので謎解きに限らず役に立つ話になる。もちろん、謎解き(特に謎制作)においても、大いに役立つと思う。後ろの方にそういう話もちゃんと載せておいた。
「謎解き以外でも役立つ記事なんて許せない! 失望した!」という人は、ここで読むのをやめた方が良いだろう。期待に添えずごめん。
この記事は
・「ちょっとした前置き」を挟んだ後に、
・「実際に使っている辞書登録ファイルの実例」を晒して、
・「その解説」をする
という流れで構成している。
正直、この辞書登録をそのままパクってその使い方を覚えてくれればそれで終わりだと本気で思う。でもまあ、「こういう考え方をすりゃ良いのね」と思った人が自己流の活用法を編み出してくれるならばそれが一番嬉しい。
なお、前提としてPC入力環境を想定している。スマホでは使えない。また、Windows環境を想定して書いている話がいくつか出てくるが、ご容赦いただきたい。
スマホ編は誰かが書いてほしいな。私も知りたい。
(前置き1)僕たちは日本語の変換をするために生まれてきたんじゃない
辞書登録について、「人名を登録するためのもの」と言う人もいれば、「専門用語を登録するためのもの」「頻繁に入力する文章を登録しておくためのもの」等と言う人もいるだろう。
もちろん全部正解で良い。良いのだが……私は辞書登録は、
「『変換とかいうクソ面倒なこと』を『頻繁に』しなきゃいけないという、日本語入力における致命的な欠陥」を緩和して、「ちょっとはマシな入力環境」を整えるために必要なもの
だと思っている。
その上で様々な応用も利く便利なやつなのだが、それの前に、まずはその「ちょっとはマシな入力環境」をしっかり整えることが大事だ。
「変換」という手間は必要で、避けるのは難しい。なので代わりに、
「複数の変換候補からわざわざ選択するのでなく、一発変換したい」
と考えるようにしよう。
それも、ただ単に一発変換できるだけではなく、
「一発変換できると事前に確信した上で、最短の動作で一発変換する」ことの重要さを意識したい。事前に変換結果が確信できていれば、入力後の
[スペースキー]押下(変換)→変換結果を確認せず即[Enter]押下 が0.1秒で終わる。
……おそろしく速い変換、オレじゃなきゃ見逃しちゃうね。
ここで突然だが、駄目な辞書登録の話。適当にググると「定型文の挨拶は辞書登録しよう!」みたいなのがごろごろ出てくる。分かる。登録したいよね。で、載っている登録の例が例えばこんな感じ。
おつ→お疲れさまです。●●です。
たい→大変お世話になっております。■■の●●です。
いじ→以上、よろしくお願いします。
やってる人、多いかもしれない。
個人的に、「変換前のキーワード」を日本語にした時点でダメだと思っている。「乙」「タイ」「維持」等を打ちたい場合があるからだ。これは「お→お疲れさまです」にしても解決しない。「お」を変換したい場面、意外とあるんじゃないかな?
そもそも、変換前のキーワードは日本語にしない方が良い。というわけで、自分は以下の通りに登録している。
おt→お疲れさまです。●●です。
たいh→大変お世話になっております。■■の●●です。
いj→以上、よろしくお願いします。
基本的に、自分の場合はこんな感じのルールを決めている。
・変換前のキーワードは日本語にならないようにする
・そのために、「母音を 一部/全部 除く」あるいは「先頭に記号を付加する」のどちらかを主に採用する
・覚えやすい、あるいは思い出しやすいような命名を心がける
(前置き2)記号って意外とよく変換するよね
記号は意外とよく変換するので、一発変換したい。
・議事録を取る時に、議題の頭に■とか●とかを付けたり。
・あるいは①とか②とかを付けたり。
・メールの件名に【ご相談】みたいな不毛な文字列を入れたり。
あと、謎解きの問題を作る人は記号をよく使うことだろう。例えば
●◆■▲★■ …… この謎の答え(ひらがなで4文字)
●★■◆ …… 小さい頃、背中に欲しかった
▲★■◆ …… 今、欲しい
★■◆ …… これよりむしろ妹が欲しい
こんな感じの問題。よく作るよね。うんうん、あるある。
これは記号が少ないから楽だが、記号が増えると「●と◯」「☆と★」「△と▲と▽と▼」を使い分けることもある。変換が面倒だ。「しかく」で変換して「資格」が出たりとか、逆に「音符」と入れたくて「♪」が出たりするとイラッとする。
「ああ~~~ 記号って全部一発変換できると便利だよなあ~~~」
はい、お待たせしました。ここで辞書登録の登場です。
ぼくのかんがえたさいきょうのじしょとうろく
というわけで、「よく使う記号たちを一発変換することを目的にした辞書ファイル」がこんな感じ。
大体の変換ソフトの辞書ツールだとこの形式で「辞書のインポート」をすればそのまま取り込めると思う。自分は「いざという時」のために、ドライブ上にこの辞書ファイルを保存している。
で、内容の解説。まずは基本的な記号の変換について。
☆ hs (HoSi)
★ khs (Kuro+HoSi)
◯ mr (MaRu)
● kmr (Kuro+MaRu)
□ sっk (SiKaKu / kk→っkとなって見えるが、要するにskkと入力)
■ ksっk (Kuro+SiKaKu)
△ sんっk (SaNKaKu)
▲ ksんっk (Kuro+SaNKaKu)
▽ gsんっk (Gyaku+SaNKaKu)
▼ kgsんっk (Kuro+Gyaku+SaNKaKu)
▼ gksんっk (Gyaku+Kuro+SaNKaKu / kとgのどっちが先でも良いように)
◇ hsgt (HiSiGaTa)
◆ khsgt (Kuro+HiSiGaTa)
◎ んjmr (NiJuuMaRu)
♪ おんp (ONPu)
※ kmj (KoMeJirusi)
× bt (BaTu)
← zh (h,j,k,lが左、下、上、右に対応。z+その方向 (※1))
↓ zj (同上)
↑ zk (同上)
→ zl (同上)
(※1)Google日本語入力だとこれら矢印はデフォルトで自動変換される
⇔ zhl (z+h(左)+l(右)という連想)
⇔ hl (Google日本語入力だとzhが自動で←になることの救済措置)
…… 、、 (、→三点リーダは連想しやすい。三点リーダは2つセットで使うもの)
―― っl (打ちやすい。lと―の形も似ている。ダッシュは2つセットで使うもの)
『 lkj (何となく打ちやすいのでこう決めた (※2))
』 jkl (同上)
(※2)Google日本語入力だと z+「 や z+」 で『』が出せる
【 lkm (何となく打ちやすいのでこう決めた)
】 mkl (同上)
① いちmr (いち+mr)
② にmr (に+mr)
……(以下略)……
Ⅰ いちろま (いち+ろーま / ちょっと手間だが、そんな頻繁に打たないので許容)
Ⅱ にろま (に+ろーま)
……(以下略)……
……覚えられない? 嘘だね。ちょっと触ってたらすぐに身につくよ。
上記に挙げた以外に、■をめちゃくちゃ頻繁に使うのでこれだけ「っk」で登録する等工夫している。指が覚えてしまった。
「zh」「zj」「zk」「zl」はGoogle日本語入力なら勝手に矢印に変換される。知らない人が意外に多い。hjklが←↓↑→に対応するという感覚を持ち、「z+その記号」という感覚をもつと良い。
なお、上記は打つ機会が非常に多い基本的な記号だ。それ以外の記号の場合、以下に挙げるように「先頭に;(セミコロン)をつける」ルールに則ったものも多い。これで「キーワードが日本語になる」を回避している。;を選んだのは一番打ちやすい位置にあるからだ。
≦ ;ぇ (;+le / Less than or Equal to)
≧ ;げ (;+ge / Greater than or Equal to)
≠ ;ね (;+ne / Not Equal)
± ;pm (;+pm / Plus Minus)
√ ;sqrt (;+sqrt / Square RooT)
∵ ;べかうせ (;+because / なぜならば)
∴ ;そ (;+so / ゆえに(本来はthereforeが適切))
α ;あるふぁ (;+あるふぁ)
Α ;ああるふぁ (;+A+あるふぁ / 大文字は1文字目を繰り返すということに決めた)
β ;べーた (;+べーた)
Β ;っべーた (;+B+べーた / 大文字は1文字目を繰り返す)
γ ;がんま (;+がんま)
Γ ;っがんま (;+G+がんま /大文字は1文字目を繰り返す)
……(以下略)……
leとかgeとかは「プログラムの世界でそう書きがち」としか言いようがない。分かる人は直感的に感じるだろう。ぴんと来ない人は慣れてほしい。ギリシャ文字は正直ほとんど使わないが、一応登録している。便利と実感したことはほぼ無い。
あと、単一の記号じゃないけど便利な塊として、以下の登録もしている。
(1) いちっk (いち+kk / 指がこれで覚えてしまった。多分KaKko由来だった気がする)
(2) にっk (に+kk)
……(以下略)……
(10) じゅうっk (じゅう+kk)
(日) ;すん (;+SUN)
(月) ;もん (;+MON)
……(以下略)……
(土) ;さt (;+SAT)
曜日とか地味に便利。嬉しい。
辞書登録じゃない、コマンド登録だ
辞書に色々登録すると出すのが速いので、せっかくだからと様々なURLやファイルへのパスを登録している。(仕事用PCだと超大量に……)
個人的にはもはや「辞書登録」というより「コマンド」という感覚に近い。
記号の中でも出てきたように、コマンドの冒頭には必ず;をつけると決めている。「;あんけん」みたいな感じ。
例えば私用のPCでやってる登録で言うと、私はよく謎解きの問題を作るのだが、それらは
C:\Users\(自分の個人ユーザ名)\Google ドライブ\00_謎
というフォルダに保存して、Googleドライブと同期させている。このパスは「;g」というキーワードで登録している。
そのフォルダを開きたい時は
(1) [Windowsキー]+R同時押し(ファイル名を指定して実行を起動)
(2) ;g→[スペースキー]→[Enter]押下(フォルダ名が入力される)
(3) [Enter]押下(実行)
という感じでやっている。キーボードから手を離さずに、一秒で開ける。
そのフォルダ内にテキストファイルを保存したい場合には、
(1) [Alt]+F→A (名前を指定して保存)
(2) (ファイル名の箇所にフォーカスが合っている状態で、)
;g→[スペースキー]→[Enter]押下(フォルダ名が入力される)
(3) [Enter]押下 (保存先フォルダの移動完了)
をまず実行する。「ファイル名」の箇所に何かを入れて[Enter]を押すのは、普通はファイル名を入れて保存を確定する時だが、フォルダ名を入れて[Enter]するとそのフォルダに移動してくれる。嬉しい。
その他、「;めも」に何かすぐ見たい情報を残しても良いかも知れないし、
パスワードとかで「万一流出しても何ら問題ないもの」があって(仕事だとそういうのが何故か大量にある)それが覚えられないなら、
何かのテキストファイルにメモを残すくらいなら、「;ぱすわーど」とかに「ユーザ名:●● パスワード:●●」みたいなメモを残しても良いだろう。
※「変換」が目的じゃないので「;ぱすわーど」という同じキーワードで複数の登録をしてしまえば良い。ざっと出てきた複数候補を眺めて、目当てのやつを見つければ良い。
あ、そうそう。余談として。謎制作において役立つから、五十音表とかを辞書登録している。
;あbc → ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ
;あbc → abcdefghijklnopqrstuvwxyz
;あいう → あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん
;あいう → アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲン
;いろは → いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせすん
;いろは → イロハニホヘトチリヌルヲワカヨタレソツネナラムウヰノオクヤマケフコエテアサキユメミシヱヒモセスン
;ごじゅう → んわらやまはなたさかあ り みひにちしきい るゆむふぬつすくう れ めへねてせけえ をろよもほのとそこお
;ごじゅう → ンワラヤマハナタサカア リ ミヒニチシキイ ルユムフヌツスクウ レ メヘネテセケエ ヲロヨモホノトソコオ
;えと → ねうしとらうたつみうまひつじさるとりいぬい
;えと → 子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥
「一発変換できないじゃん!」と言われるかもしれないが、これを出す時はそこまで急いでいないので良しとしている。
五十音表がテキストエディタ上に欲しい時(あるある)に、とりあえず「;ごじゅう」を変換し、適宜改行を補うと五十音表ができる。
そこから、「(.)」を「\1\t」に正規表現置換してからExcelに貼れば1マスに1文字ずつ書かれたの五十音表にもなる。嬉しいね。(正規表現が分からなければ調べてね)
謎作る上でこれあるとめっちゃ便利なのよね~といくらでも語れるのだけれど、同意が得られない予感がするのでやめておく。便利なのに……
とまあ十分すぎるくらいに色々紹介したので、ここらでおしまいにしようかと思う。
まとめ
・日本語の変換の面倒さを当たり前に思わない
・「一発変換できる」と確信できるものを増やす工夫をしよう
・記号はよく使うので一発変換できるようにしよう
……という、「不便を解消」するための辞書登録をしっかり整える。
その上で、
・辞書登録でなく、コマンドを登録する感覚を持つ
・よく行う動作をコマンド化するために辞書登録を活用しよう
・よく使いたい/見たい/思い出したいテキストも積極的に登録しよう
その際に、
・変換前のキーワードは日本語にならないようにしよう
・この記事の記述を遵守する必要は無いが、自分なりのルールを決めよう
……とまあこんな感じ。ノークレームノーリターンでお願いします。
(おまけ)途中で出てきた謎の解説
一番上が記号が6文字なのに答えはひらがな4文字。ということで記号にはアルファベットが対応しそうだな~と考える。試してみると、ローマ字表記だとうまくいく。
・妹が代わりに欲しいので別に要らないのはANE。(筆者の主観)
・今欲しいのはKANE。(欲しい)
・子供の頃欲しかったのはHANE。
対応させると一番上はHENKANとなるので、答えは「へんかん」。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?