サイコロ問題は目解きしろ

何って……脳内でサイコロを転がしただけだが……?

こんな問題がたまにある。「サイコロを転がす」という、複雑な空間的処理能力を要求するような問題だ。

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物理的に立方体を用意すればやりやすいかもしれないが、それができない場合も多い。だとすると、脳内でサイコロを転がすことが必要になる。難しい。

また、展開図の問題で、こんなのがあったりする。

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展開図からサイコロの完成形をイメージしなければいけないように思えるが、それはそれでなかなかに難しい。

これらのサイコロ問題に苦手意識を持つ人も多いと思う。そんな難しい問題を目解き(メモせず、見ただけで解くこと)ができたならば、どうだろうか。恰好良いし、きっとモテる。履歴書にも書けるし、マッチングアプリの趣味欄に書いたって構わない。間違いない。良いことづくめだ。君のサイコロテクニックで周りの視線を釘付けにしちゃおう!

というのはさておき、苦手な問題を得意になることはとても良いことだ。定番のサイコロ問題は一見すると難しいが、うまく処理するためのコツがあり、立体的なセンスを持ち合わせていなくても何とかなることが多い。それを正しく理解して、サイコロ問題のことを少しでも好きになってもらえると嬉しい。


この記事の目標

サイコロを題材としたいくつかの典型的な問題をスムーズかつスピーディー(目解き可能なレベル)に解けるようになることを目指す。
具体的には、以下の3つができるようになること目指す。
・与えられた展開図で、ある面の裏面を特定すること
・与えられた展開図で、ある面に書かれた矢印が指す先の面を
特定すること
・与えられたマス目上でサイコロを転がして、ある面が上を向く時のマスを
特定すること

なお、展開図問題の解き方は、初級編として展開図の変形による解き方をまずは紹介するが、おまけとしてより速く、かつ直感的に解ける上級テクニックも紹介する。是非そちらまで確認してほしい。


サイコロの前提を確認しよう

「そんなの知ってるよ」というレベルの基本的な部分のおさらいも含めつつ、サイコロの性質を確認していこう。

特に注釈なく単に「サイコロ」と言ったら基本的に6面ダイスのこと
この世には10面ダイスや12面ダイス等色々なサイコロがあるが、単に「サイコロ」と言ったら6面ダイスを指すことが多いし、その暗黙の了解は認めた方がお互いに色々と楽だ。少なくともこの記事内では「そういうこと」でお願いしたい。「何面ダイスか明記されてませんけど~?」みたいな揚げ足取りを始めるのは、余程の強いこだわりが無ければやらない方が良い。
厳密でなくても一般に伝わる表現というのは、ある程度尊重されるべきだ。
その一方で、制作者側はその暗黙の了解に甘え過ぎず、ちゃんと書くべきかを状況に応じて丁寧に検討する姿勢が必要だろう。相互の歩み寄りが大事。

一般的な6面ダイスで、向かい合う面の和は7
1の裏は6、2の裏は5、3の裏は4だ。違うサイコロも稀にあるにはあるが、一般的ではないし、断りなく謎解きに出てくる可能性は低い。
また、数字の配置の話だと、サイコロにはオス/メスと呼ばれる区別があるのだが、今回の記事の内容においては必要ないので扱わないことにする。興味があれば調べてほしい。

展開図とは立体を切り開いた平面図のことで、サイコロの展開図は11種類ある
展開図くらい流石にみんな知っている。こんな感じのやつらが展開図だ。

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反転・回転すれば一致するものは同じものとみなすことにすると、これらの11種類がサイコロの展開図のすべてだ。
11という数字を覚える必要はそんなには無いのだが、黒い箱の形をしたXI(イレブン)という持ち帰り謎があり、タンブルウィード謎解きオンラインショップで今すぐ購入できる。なので、「箱といえば11だよね」ということで覚えてしまっても損はない。
あるいは、昔XI(サイ)というサイコロを転がす最高のパズルゲームがあった。それと絡めて覚えても良い。

サイコロについての大前提はこんなところだろうか。
ここで、「基本的な性質」「前提」から少し逸れるが、うまい書き場所が無かったのでこのタイミングでもう一つだけ事実を紹介させてほしい。

展開図が2x2のかたまりを含むことは無い
直感的には明らかで、2x2のマス目があったらどうやっても展開図ができあがりそうにない。その直感は正しく、実際にそうだ。特別重要な事実ではないが、後で使うのであえて書かせてもらった。


展開図を見分けよう

サイコロの展開図は11種類あると言った。これらは全部覚える必要は無く、これらを列挙できること自体はあまり本質的ではない。
ただ、サイコロの展開図を使う中謎・大謎は多く、ぱっと見て咄嗟に「これはサイコロの展開図だ」と判断できると嬉しいことがある。暗記せずとも、基本的な考え方を覚えてすぐ引き出せるようになりたい。

ここで、サイコロの展開図を「スネーク型」と「階段型」と「その他」と分類して考えてみることにしよう。※もし既に一般的な名称があれば教えてほしい。

①スネーク型の展開図
こういうやつだ。

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展開図の中で唯一「3+3」の形を取る。縦2列に収まる展開図はこの1個しかなく、他はすべて3列の展開図となる。

②階段型の展開図
よく見るやつだ!

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「2+2+2」の形を取る。愛され展開図ランキング第二位がこれだ。(一位は最も一般的な十字形の展開図)
形の可愛らしさから人気が高い展開図だが、「慣れていないと裏面を見つけるのが難しい」という難点があるように思う。

③その他の展開図
「その他」と雑に括ってしまって申し訳ない。残り9個の展開図において、適切な向きで書いた時に縦3列に収まるだけでなく、その時「一番長い列が中央に来る」ことを知っておくと嬉しい。
一番長い列が中央に来るということは、「1+4+1」「1+3+2」の2パターンしか無いということだ。(「3+2+1」とか「4+1+1」とかは無い)

「1+4+1」のものは「1」部分をずらしていくと以下の6つが考えられるが、これらはすべて、ちゃんと展開図だ。

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「1+3+2」のものは「1」部分をずらしていくと以下の3つが考えられ、これらはすべて展開図だ。(展開図は2x2のかたまりを含まないので、「2」の部分はこのようにくっつけるしかないのである)

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以上で、11個の展開図すべてに触れることができた。今後、「展開図っぽい6マスの図形」を見た時に「あ、これはスネーク型だから展開図だな」「3+2+1の図ができてたけれど縦3列の中央が長くないから展開図じゃないな……」「これは2+3+1だから展開図だな」みたいな判断がスムーズにできるだろう。嬉しい。


展開図に親しもう

展開図についての重要な事実として、「ある辺を切断し、一方の端点を固定したまま90度回転し、回転した先にくっつける」という変形操作を行っても同じサイコロの展開図になる、というものがある。

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こんな風に変形した展開図も、組み立てればまったく同じサイコロになる。今この図では数字や文字が書いてないが、書いてあったとしても同じ配置のサイコロにちゃんとなるのだ。ということは、問題で展開図が与えられた時に、この変形をいくら行ってもちゃんと同じ答えを導けるということだ。

そして……この変形を1回行えば、必ずどんな展開図でも「1+4+1」の形に帰着させることができるのである。

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「1+4+1」の展開図ならば裏面を見つけるのは容易い。以下の図は表裏の関係にある面を同色で塗ったものだが、「4」の列の中では2つ隣の面が裏面だし、「1」の列ならばもう片方の「1」の面が裏面だ。

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また、「1+4+1」であれば矢印で指された面を見つけるのも容易い。簡単な変形を施してやれば、容易に見つけることができるだろう。

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これで展開図問題の易しい解き方はマスターだ。この後、サイコロの転がし方をマスターした後に展開図問題の違う解き方に触れる。そちらの方が実は直感的で、よりスピーディーに解くことができるだろう。


サイコロを転がそう

いよいよ一番大事なパートが来た。サイコロを転がす時に大事なのは、「ある特定の面について考える」と決めた時に「その面とその裏面」にのみ注目し続けるということだ。
例えば「1が上を向くマスを読め」という謎が出てきたら、「1と6だけに注目し、他は無視する」ようにする。これによって、考えることを減らしてしまおう。
もしも「1または2が上を向く面を読め」という複雑な問題が出てきた場合には、即座に目解きを諦めてまず「1と6に注目し、1の面を特定し○をつける」、続いて「2と5に注目し、2の面を特定し○をつける」「読む」というステップを踏むのが好ましい。

さて、サイコロの転がり方について、重要な事実をいくつか理解していこう。

(0) サイコロを奥に2マス転がすと、裏面になる
分かっている人からすれば当たり前な事実だが、もし知らなければしっかりと理解しておこう。

(1) サイコロを奥に1マス転がし、左右に何マスか転がした後、さらに奥に1マス転がすと裏面になる
下図のようなことを言いたい。一見「ん?」となるかもしれないが、ちゃんとイメージすれば「確かにその通りだな」と理解してもらえるはずだ。

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「奥に1マス転がし」た後の状態では、元の面は側面(奥側)にある。この状態で左右にいくら転がしても、「元の面は側面(奥側)にある」の状態はずっと維持されているので、その後奥に1マス転がすと裏面が現れる。
ここで、(0)はこれの特殊なパターン(左右に0マス転がしたパターン)だと考えることもできる。

(2) 奥に1マス転がし、左右に何マスか転がした後、手前に1マス転がすと元の面になる
(1)でやったこととほぼ同じだが、最後に奥ではなく手前に転がした場合だ。奥に転がすと(2)のように裏面になるのだから、手前に転がせば元の面に戻るのは自然に理解できるだろう。

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サイコロの転がり方について、理解すべきことはたったのこれだけだ。この(1)(2)の事実さえ分かっていれば、サイコロを転がす問題は攻略できる。

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こんな風に、まずは「1または6」が最初に現れる場所を見つける。
見つけたら、その後は「同じ面または裏面」が次に出る場所を見つけていけば良いのだ。先程理解した「奥に1マス、左右にnマス、奥に1マス→裏面」または「奥に1マス、左右にnマス、手前に1マス→元の面」のどちらかのパターンで延々と分割し続けることができる。こうして1の面を読むと「ヨンノマスヨメ」となるので、次は4について同じことを行えば良い。

一度覚えたら、後は慣れるだけだ。慣れれば慣れるほどスムーズに転がすことができるし、その楽しさもどんどん分かってくるはずだ。

というわけで、あなたも一緒にサイコロ問題……しよ?


(おまけ) 展開図を大好きになろう

先ほど学んだ展開図問題の解き方だが、「展開図を変形して考える」というのは、意外と時間がかかるものだ。ここに「サイコロを転がそう」の知識を持ち込むことで、展開図問題はより速く、より直感的に解くことができる。

その基本的な考え方はとても簡単で、「展開図の上でサイコロを転がす」というものだ。どういうことか?


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「サ」の裏面を探すならば、「サ」のマスにサイコロを置いて、転がして裏面になる場所を見つければ良い。「オ」のマスだと分かるので、それが「サ」の裏面だ。他も同様にすれば裏面を突き止められる。「イ」の裏は「ミ」、「コ」の裏は「ゴ」、「ロ」の裏は「ト」だ。「サイコロを転がす」ことに慣れている前提だが、非常にスムーズに裏面を突き止めることができる。


「では、矢印で指されたマス」を突き止めるにはどうすれば良いか?
「矢印で指されたマス(展開図から"はみ出て"しまう場合もあるが、気にしなくて良い)にサイコロを置き、サイコロを転がして同じ面が出る位置を見つける」と解ける。

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はみ出たとこに置いて良いのかよ!

……良いんです。ただ、条件があります。「次は矢印のマスに乗るように転がす」ようにしてあげてください。例えば、青の展開図で初手で「ッ」に向かって転がさないようにしてください。色々狂うので。

赤の展開図の矢印の先にサイコロを置き、転がして同じ面が現れるマスを探すと「リ」になる。青の展開図では「ッ」になる。同様に考えると黄色の展開図では「タ」で、緑の展開図では「イ」になる。こうすることで、直感的かつ素早く突き止めることができるのだ。

めでたしめでたし。


画像いっぱい作るの疲れた……

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