日本の携帯電話業界について

日本に来た留学生が意外と驚くのが、携帯ショップや技適マークという存在らしい。


本題に入る前に軽く説明をしておくと、携帯ショップというものは大手キャリアの代理販売店舗という形で付加価値を生み出しそれを顧客に提供するといういわばコンビニのフランチャイズ制度のようなものだ。
技適マークとは、一般社団法人テレコムエンジニアリングセンターによって発行される日本国内での技術基準の適合が証明されていることを表示するマークである。

技適マークというもの、これが非常に厄介なもので、これのせいで海外のスマートフォンを使用する際に総務省に申請をしないと使用不可能、また申請後にも使用する際に許可されているのはWi-Fi企画の通信のみでありSIMカードを挿して使うことができないといったものである。
(まあ技適なし海外スマホを使って逮捕された人間は今までに一人もおらず、また総務省も黙認しているのだが)
この制度により日本国内に海外スマホを食い込ませないというある意味良い結果をもたらしているため、総務省は今でもこの制度を維持する意向を示している。

そもそも技適マークを発行しているテレコムエンジニアリングセンターとはなんぞやという方も多いだろう。
現在の理事長は田中謙治という者であり、彼は総務省の情報通信政策局という所に身を置いていた人間である。

その前の理事長の鬼頭達男も総務省の技術総括審議官という役職を勤めていた。
さらにその前の理事長も甕昭男であり、過去に郵政省(現在の総務省)の大臣官房技術総括審議官を勤めていた。
経歴を見たら一目でわかるだろう、この組織は総務省の完全なる天下り先なのである。

日本ではガラケー時代から携帯電話を買うと言えばauやdocomoなどの携帯ショップで、SIMロックやバンド縛りなどを掛けSIMフリー価格より安くキャリアが端末を購入するというものであった。

時は2007年、AppleがiPhoneを発表し全世界で大注目を浴びた。

今でこそ人気ブランドの一つになったものの、当時の日本ではあまり注目されなかったのである。
ここに目を付けたのがSoftbankグループの孫正義だ。
Softbankはブランド重視であるAppleの意向を無視し端末を0円で販売、代わりに2年縛りのプランを付けるという一見良心的に見えて狡猾な手段を用いて契約数を圧倒的に伸ばし、今では3キャリアのうちの一つとして数えらるまでになった。
孫正義のこの行動が日本のガラパゴスな携帯業界にさらに拍車を掛け、他社も真似るようになったのだ。

そもそも移動体通信事業というものはインフラ事業に当たるものであり、インフラ網、つまり電波を提供する企業がそれを利用するスマートフォンも販売するというのは非常に奇妙なものといえるだろう。
また実際に購入されているキャリア端末のほとんどが「携帯ショップ」という代理店を通しての販売なのである。

他国にはこのようなものは一切ない。
メーカーで直接端末を購入し、オンラインでキャリアとSIMカードのみ契約するのが本来当たり前だ。
またギーク層は海外から好みの端末を輸入したりということも多く見受けられる。
では日本はどうか。

技適マーク⇒キャリア販売⇒携帯ショップ
この三層構造によりメーカーがキャリアと癒着し、携帯ショップで高すぎるオプションやアクセサリなどで消費者を搾取し、技適マークで外国企業からも日本国内のシェアを守るという、腐敗し切った状態となっている。

とどのつまり、00年当初から昨今に至るまで我が国の携帯電話業界は数十年前の状態のまま何一つ進歩していなかったのだ。
この怠慢ともいえる体制を看過してきた総務省の罪は非常に重いといえるだろう。

最後に一つ。
個人が世界に向けて発信する現代の社会において、大手キャリアが利益を独占し、国民の消費社会の構築を妨げるような体制が今後も続くのであれば、日本が世界をリードする先進国として再成長するなんて夢のまた夢だろう。世界に対する「安心と安全のMADE IN JAPAN」の誇りを失わないためにも、まずは国内の、現在のスマホ業界に対して誰かが声を上げなければいけない、腐った業界にメスを入れない限り永遠に変わらないと、僕は言いたい。

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