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祈りと雨。

笑顔の世界からあのコはやって来た。
花の匂いに紛れて少し汗の匂いがした。
溢れる光を受け止め目を瞑る様に笑う。
大袈裟に打つ手の平が更に笑顔を誘う。

修学旅行中に母が死ぬと言われて家を発つ。
全てのお寺に祈れば叶うと思い込む。
誰も知らない祈りの行方に雨を視る。

独り言の世界にあのコは迷い込む。
悲しい世界で目を開き確り笑う。
蒲公英の首を掴み風に乗せて息を吹く。
迷う先で更に風を受けて、笑う。

祈りの言葉をあのコは呪わなかった。
迷路の中でも歩き続けていた。
いつか雨に濡れるお寺を観ながら、
また祈りの言葉を思うだろう。

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