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令和3年度皮膚科専門医認定試験の傾向分析

皮膚科専門医試験が終わって早いもので2ヶ月が過ぎようとしています。皮膚科専門医を取得して日常の診療で大きく何かが変わったかといえば・・・何も変わりありません。急に名医になれるわけでもなく。日々精進です。

令和3年度皮膚科専門医認定試験の概況と分析という内容がJDA LETTERに掲載されました。内容をざっと見ていこうと思います。
詳しくは日本皮膚科学会雑誌Vol.132No.1,2022 令和4年第132巻第1号を参照ください。

①どんな試験だったか

②合格率

③合格者の概要

④専門医試験問題の構成

⑤こんな問題がありました

⑥専門医認定試験を振り返って

大きくこの6つに分けて説明します。次の皮膚科専門医試験の参考になればと思います。

①どんな試験だったか

令和3年度皮膚科専門医認定試験は、11月7日(日)に京都国際会館で実施されました。詳しくは

を読んでいただければ幸いです。会場の詳細な再現もしております。試験会場はコロナの影響で東京なのか京都なのかわかりませんが、令和4年度皮膚科専門医認定試験がもし京都国際会館ならば非常に参考になると思います。

②合格率

受験者数は300人(男性112名、女性188名)合格者数248名(男性90名、女性158名:合格率82.7%

例年、合格率は約8割ですが、今回も合格率は82.7%と例年通りでしたね。

③合格者の概要

各支部ごとの合格率も掲載されていますが、トップは86.5%東京支部、次いで86.4%西部支部でした。前回、大きく合格率を下げていた中部支部も回復していたようですね。

どこの地域に住んでいてもあまり変わりないとは思いますが。合格率1位の東京支部だけ専門医試験に直結した「何か」があるわけでもないし、私も一人で勉強し合格することができましたので、所属地域、支部は気にすることはないと思います。

④専門医試験問題の構成

これは私が知らなかった情報がありました。正確には噂程度の情報しか無かったといった感じでした。
試験時間は午前中の2時間半で、午後に採点と不適切問題検討を行っているとありました。「専門医試験当日の夜には合否はわかっている」という風の噂は本当だったようです。この辺はDermatorogy todayの掲示板もご参照ください。
医局によっては当日に合否が伝えられるとかなんとか・・・(噂です)

申請書類の審査結果にも触れられていました。
評価5に加点、評価1に減点
何点が加点、減点されるかまでは記載はありませんでした。

⑤こんな問題がありました

毎年、いわゆる不適切問題(削除問題)がある、ないというのが受験者の間で話題になります。あまりに正答率が低いと削除問題になることも。
今年は難問が多かった印象だったので、不適切問題、削除問題が1問くらいはあったのでは?と思いつつ確認しましたが、不適切問題、削除問題は無しとのことでした。
特に正答率が低かった問題、高かった問題がピックアップされていました。
まず正答率が低かった問題(マークシート)です。

問67(正答率3.7%
アレルゲンコンポーネントについて、誤っているものはどれか。
→熱安定性や分布にも踏み込んで問われた問題。

問20 
角化異常症とその原因分子の組み合わせで誤ってるものはどれか。

問32
以下に挙げた爪白癬の治療法の中で、最も薬価が安いのはどれか。
→これは「勘」で解きました。
ラミシール150円(1錠)
150円が30日、その6倍で27000円

イトリゾール233.8円50mg
400mgなので8倍
パルスは7日その3クールなので39278円

 こうやって正確に計算して導き出す問題です・・・。
試験本番で焦って薬価が思い出せませんでした。「なんとなくだけど」っていう感じです。テストで悔しい思いをするパターンですね。まあ、ここまでの知識、記憶が要るのか?って話ですが。専門医をすでに取得されている先生に薬価を聞いてみてください。答えられる先生は少ないはずです(笑)

問33
図8に示した爪白癬の病型はどれか
→掲示板でも答えが割れていました。画像が不鮮明すぎる、もしくはもっと典型的な画像にして欲しかったなど様々な意見がありました。

問41
ヒアリについて正しいものはどれか。
→知らないと解けません。臨床皮膚科増刊号 最近のトピックスに取り上げられていました。

問56
Hermansky-Pudlak症候群について正しいものはどれか。3つ選べ。
→選択肢1の肺線維症について知識があればかなり絞れたと思います。

問82(正答率19%
30歳、女性。頸部の皮疹とダーモスコピー像を示す。図27の矢印と最も相関する組織所見はどれか。
→矢印はWickham線条に相当する白色の樹枝状構造を指し、組織学的には顆粒層の楔状肥厚に対応する。

問100(正答率10%
乾癬の生物学的製剤治療における医療費助成について正しいのはどれか。2つ選べ。
→細かく知っていないと解けません。普段、高額医療について患者説明を何度もしたことがないと厳しかったと思います。それが正答率10%に繋がったのではと推測します。

記述問題については細かく解説はされていませんでした。病名、スペルを正しく書けることが大きく差がつくポイントになっていると、当然のことが書かれています。

次に正答率が高かった問題は1問ピックアップされていました。

問59(正答率90%以上
ベーチェット病について正しいのはどれか。
→頻出ですね。落ち着いて解けば大丈夫だったかと。

⑥専門医認定試験を振り返って

令和3年度皮膚科専門医認定試験は難しかったと思います。自分が受けた試験だからではなく、本当に難しかったです。

こちらでも細かい解説、重要問題、重要疾患の解説をしていますが、もはや教科書レベルではありません。専門医認定試験を実施要綱を読むと、日常診療をやっていれば解けるらしいですが・・・はっきり言って試験対策というものをやらなければ対応困難だと思います。

上述しましたが、正答率が3.7%の問題など、わたし的には「不適切問題」です。そんな正答率が低い問題を出して何か意味があるの?って思います。
出題者は「俺がor私が作った問題、正答率が最低だった。どうだ!ははは!」くらいにしか思っていません。詳細は言えませんが、そのような場面に遭遇したことがあります。

あまりに正答率が低い問題は無視していいと思います。
気をつけていただきたいのは、そんな問題でも翌年、つまり令和4年度皮膚科専門医認定試験では改変されて出題される可能性はあります。
試験勉強するときに、一つの難問に徹底的に時間を割く必要はないと思いますが、関連することは確認しておいてください。

ちなみに、令和2年度皮膚科専門医認定試験で出題された好酸球性浮腫の問題、あれは二度と出ないと思います(プール問題という形では)。
なのでいわゆる「捨て問」というものは存在します。
そこは掲示板を上手に利用し、情報交換をしていきながら効率の良い試験勉強をされることをお勧めします。

最後になりますが、やはり合格率は80%以上です。落とすための試験ではありません。下位2割に入らなければ必ず受かります。
そのためには人と同じような勉強をすることが一つポイントではないかと思います。評価5点で飛び抜けている先生は別として、ある一定以上の臨床、研究経験を積んだ皮膚科医が受けるので母集団のレベルは高いと思いますが、的外れな試験勉強をしなければ合格できる可能性が非常に高いということです。
まず、今日から試験対策を始めるという先生は過去の先生方がどのような勉強をされたか知ること、資料集めからはじめてください。
掲示板やこのnoteにも有益な情報がたくさんあります。
そしてオミクロンの感染拡大で試験の日程がまた11月になるのでは?とも予想されますが、もし通年通り6月ならばあまり時間はありません。
追記日本皮膚科学会 基本領域 皮膚科専門医規則施行細則令和4年皮膚科専門医認定試験12月の第3日曜日12月18日予定だと記載がありました)
日々仕事をしながらだと、あっという間に時間は過ぎてしまいます。
早めに準備を開始し、日々試験を意識しながら過ごしてみてください。

この記事を読んでくださった先生方が無事に合格されることをお祈りしております。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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