夜の車道にて


これは9月頭にあった出来事。

千葉の方で友人とテニスをした後の車で帰ったときの出来事。私は先頭で信号を待っていた。夜遅かった為、車は少なく右隣の車線にもう1台いるだけだった。信号待っていると、やたらと右隣の車から視線を感じた。視線の方に目をやるとその車の運転手が知り合いによく似ていた。これがまた絶妙な距離感の遠い薄い知り合いだった。その為、本物かどうか分からなかったが向こうが助手席の人越しにめちゃくちゃ凝視してきた。こんだけ見てくるって事は本人だろと自分の中で答えが出始めた。そして向こうが車の窓を開けて運転席から軽く身を乗り出し、何か声をかけてきているのがわかった。この時点では何か顔が違う気がしてしょうがなかったが何か言ってるし本人かなと思ってこちらも窓を開けた。そして初めて何と言っていたか分かった。
「何見てんだよ、やんのか」
結論、ヤンキーだった。知り合いだと思ったから見てしまったのが運の尽きだが、そもそもはそっちがめちゃくちゃ見てきたのだからこっちの方が純度100%の「何見てんだよ」を言える立場だ。なんで見てきたクセに見られて怒るんだよ、なんつう罠、見させるために見るという名付けるならば誘い見、巧妙な手口だ。当たり屋と同じ。そしてまんまと引っかかった。昔から見られただけで怒るヤンキーに言いたい事があった。誰にも見られない唯一の方法は何も見ない事だよ、と。絶対言えないけど。
 それから私は「何か用、やんのか、何見てんの」の3フレーズのみでキレまくるヤンキーに対し「いいえ、何もないです」の武器1つで立ち向かい、とりあえず語彙力でヤンキーを下回った。知り合いだと思っていた脳みそから相手がヤンキーだったという切り替えが上手くできてなかったとはいえパニック時の知能はヤンキーを下回るとは…。大学まで通わせてくれた親に申し訳ない。
 この語彙ザコの押し問答が数ターン続いたら相手の車の後ろの窓がゆっくりと開き、中から3人のヤンキーが見えた、とんだサプライズ演出だ。そしてゾロゾロと降りてくるヤンキー。しまいには運転手まで降りて5人で私の車の右半面を囲んできた。サファリパークだったら大迫力で盛り上がれただろうが相手は人間だ、動物のような惹きなど毛頭ない。理性は動物の方が間違いなくあるが肉食獣でないだけ感謝すべきだったかな。
 囲んでからはなぜか1人しか言葉を発さず残りは睨むだけだった、古いRPGみたい。その唯一話せる1人が窓に肘を置き「何か用?見てたよね?何もないよね?ん?何もないよね?何もないよね?」と問い詰めてきた。さっき散々何もないって言ったのに、俺ような弱い人間の言葉がこいつらに届くことはないんだなと再確認しながらもう1度何もないですと告げた。すると「そうだよね、そうだよね、じゃあごめんなさいは?」と言われ即答した。私のごめんなさい1つでヤンキー5人を満足させられるなんて光栄だね。実際のところは穏便に終わらせたかっただけ。
 心のこもってない(強いて言うなら殺意はこもってる)謝罪をするとヤンキーたちは何も言わずに車に戻って行った。本当に何も言わなかった。漫画でひょうたんに吸い込まれる時くらい一瞬で車内に戻って信号が変わり、スピード違反確定のスピードで去って行った。
 
 長々と書いたが、要はヤンキーにごめんなさいのカツアゲをされた話。初心者マーク貼ってりゃ道路上の問題は全て解決すると思っていたがそんな事はなかった。正直、今回は驚きが勝ちすぎてキレられてる時も怖さは感じなかった。フリが違った、怖いに繋がるフリではなかった。起承転結で、あれ知り合いかな(起)からヤンキー怖い(結)には繋がりづらかった。説明むず。これ以上の言葉でこの理屈を説明できない、理解できなかった方は同じ経験をしていただければ分かるかと。

 私はこの事件を通じてヤンキーもしくはそれに関する事について考えてみた。悪口や文句とかではなく。それについては今週来週に書きたい。
 
 あと数年前に煽り運転されて殴られた事件があったときに、なんで窓なんか開けちゃうのよーと心底思っていたが相手が何か話していたら聞こうと思って開けちゃうな。

 御目汚し失礼致しました。

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