日本のデジタル化 どこかおかしい? ここがおかしい
さてさて…
今月になってから購入した製品の調子がおかしい。ネットでメーカーのページを検索して、製品のサポートページをくまなく探す。まず最初に気付くのが「よくある質問」というやつ。これが、やたらと目に付く場所にデカデカとリンクしてある。まあ殆どの場合、こういったコンテンツでは目的に沿ったトラブルシューティングまで辿り着けない。
次に目につくのが、メールによる問い合わせやAIによるチャットの案内。だがこれも殆どの場合、埒(らち)が明かない。「仕方がない。最後の手段だ」とばかり、WEB上のリンクを次々とクリックし、「ここでもない。あそこでもない」と、懸命にサポートの電話番号を探す。いやー、それにしても上手に隠してあるもんだ。
サポートページは 「不便」の押し売り
やっと探し当てたサポートの電話番号。「えっ! フリーダイヤルちゃうのん!?」ということも、しょっちゅうだ。ちなみに購入検討のサポートはすぐに受けられるよう、目の前にリンクしてある。実際、この手のサポートはすぐつながる場合が多い。
ダイアルしたらしたで、「何とかして、有人のサポートを諦めさせようとするワナ」が数々と仕掛けられてある。イライラしながらそれをなんとかクリアーしてサポートダイアルにつながったと思ったら、そこで流れるのが例のカーペンターズの「青春の輝き」(笑 ちょっとセンスがある企業の場合は、BGMが北京バイオリンだったりする。
そのメロディーが流れて、時には何十分も待たされる。ひどい場合は、長時間待たされた挙げく、「しばらく経ってから、おかけ直しください」というアナウンスが流れ、一方的にプツンとやられる。
やっとオペレーターにつながったと思ったら、すぐに流れるのが「この電話は応対品質向上のため、通話内容を録音させていただいております」というアナウンス。そう、例のあの文言である。
製品購入後のサポートについては、こういった流れがここ数年続いているが、これって何かおかしくないだろうか? というか、最近の日本どこがおかしい? どこかおかしい。
顧客至上主義については、かつてジェフ・ベゾス氏が「AMAZONは地球で一番顧客のことを考える企業になる」と述べ、事実そんな企業を作り上げた。そして我々日本人は、AMAZONなしで生活できなくなりつつある。
ちなみにAMAZONの場合、「AMAZONのサポートから3分以内に、電話がかかってくる」システムだ。私の場合、こういった安心できるシステムがあるから、少々高くてもAMAZONから購入する場合が多い。
デジタル化は高齢者に優しくない
「今やデジタル化の時代である」らしい…。政府はとにかくデジタル化を急いで、無駄をなくすんだという。そして、それがゆくゆくは国民の幸せにつながるとまで言い切っている。
メディアは叫ぶ。そうだアプリだSNSだ。金がなければ他人様の懐にすがれ、さあクラファンだ。それらを上手に使えば全て上手くいく。そういった情報で電波もネットも埋め尽くされている。
しかしながら接触確認アプリのCOCOAは事実上頓挫したし、今回はマイナンバーカードの健康保険証としての利用が先送りされた。一部の医療機関で患者の情報が確認できないトラブルが相次ぎ、どうやら4000名分の情報が誤入力されてしまったという。
しかも自治体や政府がいろいろなサービスで使用している通信アプリのLINEが、個人情報じゃじゃ漏れ状態である。私は当初からLINEを使っていないが、今になって実におめでたい話である。
しかも便利さを売り物にするはずのデジタル化、便利どころか高齢者にとっては死活問題にさえなる。この際、はっきりと言わせていただくが、昨今のデジタル化は高齢者に優しくない。その一番の理由は、先に書かせていただいたとおり、使えない人へのサポートが隠蔽され事実上閉鎖状態だからである。
デジタル化が目的ではない 目的は便利さのはず
どうも日本のデジタル化というものを見ていると、目的にズレが出てきているような気がする。というか、最近の人達は「不便」というものに慣れきってしまったようでもある。
例えば毎日身に着けて体調を管理することが大きな目的になっているスマートウオッチのバッテリーが半日しか保たなかったり、スマホの充電器を2個も持ち歩かないと生活できなかったり、冷蔵庫やコーヒーメーカーまでもがアプリ依存になってしまっていたり、本当にそういった生活が便利と言えるのだろうか?
これまで人間が築き上げてきた文明は、「不便を克服した結果、生まれてきた」ものだと、私は認識している。つまり、人間が便利に生きようとした結果、文明は進歩してきたわけだ。
ところがそういった流れが最近になって変わりつつある。それは何も、技術が進歩していないということではない。「既にこれ以上便利になる必要がないことにまで便利さを求めた結果、逆に不便になってしまった物が出てきている」といえるだろう。
デジタル化が目的ではない。最終的な目的は便利さのはずである。このことを今一度、我々日本人は猛省すべきではないだろうか? (奥井 隆)
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