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天使の梯子



空が好きだ。

私もゆめのさん同じく青が好きなのかと思っていが、そういうわけでもないようだ。

青さのない曇り空も好きだ。雲の隙間から轟々しい一筋の光が差し込み、光のカーテンがはためく。天使の梯子と呼ばれるのも分かる。

雲が浮かんでいる空も好きだ。
夏の空に浮かぶ入道雲、羊雲が朝焼けに広がる空、青い空が海に映ったり、一番星や月が光る青白い空。
曇り空もいい。雲の隙間から轟々しい一筋の光が差し込み、光のカーテンがはためく。天使の梯子と呼ばれるのも分かる。

空に浮かぶ白い雲を見ながら、食べたら綿菓子のように甘くておいしいかな。
孫悟空のように雲のに乗って散歩したり、寝転がりながら空を漂っていられたら、きっと気持ちいいだろう。

そんなことを考えながらずっとみていても飽きなかった。

でもずっと1人で寂しかった。

全てが嫌だったし、自分も大嫌いだった。
何の特技もないし、何一つ上手くいかない。
ど田舎の逃げ場がない生活も閉鎖的な環境も嫌だったし、荒れていて居場所がない学校も嫌だ。

辺りは一面、畑か田んぼのみ。学校に徒歩で向かう30分の間は日陰もない。真夏はずっと強烈な日差しに照らされ、冬は北風に吹かれ続ける。
通学路はいつ見ても心無しかどんよりして見えた。

でも好きな景色が一つだけ。

夏休み中の部活が終わった帰り道。真夏の12時過ぎ。1番気温が高い時間帯。

長く続くアスファルトの上には逃げ水が見える。
そう、砂漠でよく見えるやつ。逃げ水は蜃気楼の一種で、光の屈折し、空が反転して道路に映るんだって。

暑くて広い砂漠で、道に迷った旅人が水場と勘違いして走るが、近寄るとふと消えてしまう。暑い場所で水を求めて追いかけ続けないようにって。
何かの本で読んだな。

今の場所すらも出ていけないのに、砂漠になんて行けるものか、と思って真剣に読まなかったが、こんなに身近で出会うとは。

真夏の空は果てしなく青い。
自分の背中に羽が生えて、空を飛んであの雲の近くまで行けたら。

この蒸し暑さなんて吹き飛ばすスピードで青い空を突っ切って飛んで行けたら、どんなに気持ちいだろう。

そんな想いを込めて描くからか、私が描く風景画は空とそこに浮かぶ雲だけやたらリアルで、自分で描いた絵なのに見るとなんだか切ない気持ちになった。

空を想う私の気持ちはありもしない水を探す旅人と一緒だ。
対して努力もせず、望みだけ高く持ち失敗しては周りのせいにする。

あの頃から数十年時は経ち、恥ずかしくなる失敗もたくさんした。
ゆめのさんの青い絵を見ているとそんな頃を思い出す。

今でも青い空は好きだ。
背中に羽が生えて飛んでいける発明はまだまだ出てきそうにないが、人が生み出す絵の中にダイブして、色んな青の世界に潜るのも気持ち良さそうだ。

企画に参加しました。

https://note.com/mostfoolestman/n/n629b143320ff



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