BTSの努力を美化しすぎてはいけない

BTS関連のコラムが多く公開されており、興味本位でたくさん読んでいる。
だが、あまりにも彼らの努力に対して称賛する声が多く、「やっぱり努力していい結果を出すって素晴らしいよね」という風潮が少なからずあることに驚いている。そんな声に対して警鐘を鳴らしていきたい。

努力ができることこそ幸福

彼らの努力は好きになれば痛いほどわかってくる。
練習生の時は1日14時間のダンス練習、ジミンに関しては、朝4時に寝て6時に起きる生活をしていた。
加えて大勢の中から次々とクビを宣告され、宿舎を後にしなくてはならないサバイバル生活。
デビューが決まっても狭い宿舎で7人一緒に暮す日々。さらに小さな事務所だったため、最初は「売れないよ」と卑下されたり馬鹿にされたりした。

もちろん、何かに対してまっすぐ打ち込むことは素晴らしい。BTSが記録を打ち出すたびに、「彼らの努力が実って本当によかった」と心から思う。
だが本当に称賛すべきは、そんな辛い中でも支え合った仲間に出会えたことである。
彼らを取り巻く全てが努力する後押しになったことこそ素晴らしいことだ。そして何より、どんなに辛くても、最終的に「音楽が好き、歌うこと、ダンスをすること、表現することが楽しい」この思いが彼らをプロフェッショナルに仕上げた根本であるのだ。
誰よりもキャーキャー言われたい、誰よりも一番であり続けたい、その思いだけでは続けることさえ困難である。

努力し、いい結果を出すことが重要ではない。大事なことは本人が幸せかどうか。

彼らがアジアのみならず世界中にストリームが巻き起こしているのは、彼らが誰よりもうまく歌を歌い、ダンスが上手だったからだけではない。
彼らが自分自身を愛し、周りの人も愛することの大事さを表明し続けたからである。
なによりも、自分の行っていることで、誰かの心を癒しているという「社会的意義の実感」が、彼らを突き動かしている。
彼らもインタビューで「僕らはどこへでも行ける切符を手にしたんだ」と口にしていた。
実績や結果は次へ進むための手段なのだ。それらを手にして、どこに飛んでいくか。さらに成長するためのまさに「切符」なのである。

メンバー同士で得意・不得意を補っている

7人それぞれに得意不得意がある。
例えばリーダーのRM。英語が達者で、頭の回転も速く、彼よりもずっと年上の大人をハッとさせる言葉でインタビューで答えるその様はただただ感嘆するばかりだ。
しかしメンバーの中ではダンスが苦手で、振り付けを覚えることにいつも苦労している。さらに料理が壊滅的に下手な上に物をよく無くし、壊す。あだ名は破壊神である。
なんでも器用にこなし、ビジュアルも世界に褒め称えられる通称「黄金マンネ」と呼ばれるジョングクも、練習生からデビュー当時のころは人見知りで、なかなか心が開けずに悩んだ時期もあるという。
他メンバーもそれぞれお互いができることとできないことを理解し、それを受け入れ支え合っている。
今までの考え方ならば、苦手なことを克服し、平均点をあげていく成長を求められるだろう。
だが、得意なことを伸ばし、苦手なことを誰かに渡す重要性は、昨今重要度をさらに増している。
そして、BTSはこの思想の走りで、実現性が高い。この事実こそ称えられるべきことで、私たちが見習うべき点ではないか。

最も恐るべきことは彼らに感化された30代、20代が若い世代に「努力の美学」を押し付けること

「努力は素晴らしい。その上に結果がついて来ればさらに素晴らしい。だからみんな頑張るべきだ。」もちろんこの思想に対して間違っているなどと批判は誰にもできない。どのような意見、思想も尊重されるべきだからだ。
だがその上でやってはいけないことは、他人に押し付けることだ。
他人の意見、思想は自分の影響外であり、矯正させることはできない。努力することを決めるのはその人自身であり、頑張らない決意も尊重されるべきなのだ。


みんな生きているだけで素晴らしい。若い人ほど忘れないで欲しい。

Love yourself。BTSがユニセフと共同で行っているキャンペーンの標語である。最初は仰々しいと思ったが、深く見れば見るほど、彼らこそ発信するべきメッセージだと確信する。
最初から険しい道で、いつ潰れてもおかしくなかった。だが、お互いを信じ、自分自身を信じたからこそ、今の成功が実現できた彼らだからこそ、伝わる想いがあるのだ。

若い世代ほど、大人の思想に流され、潰されそうになるだろう。そんな時ほど、BTSが命懸けで伝えてくれているメッセージを思い出してほしい。
Love yourself. Speak Yourself.そのままの自分で素晴らしいこと、そんな自分を愛していくこと、そして周りの人も同じく素晴らしく愛すべき人であること。
できないことで嘆いてしまっても、自分自身を愛することができれば、それだけで世界は素晴らしいのだ。





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