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深夜0時。博多のコインランドリーで。

2月の初め、僕は買ったばかりのクロスバイクで博多⇄長崎の往復に挑戦していた。

それは、高校卒業後の日本一周に向けて、親や周りの人たちに意志を見せたかったからだ。

「僕はちゃんとできるんだ!!」って。


福岡の小倉までは松山から出ている船で寝てる間に着き、
そこから片道およそ200キロ。
長崎まで自転車で行った。

行きは何とか1日で行くことができた。
でも、14,5時間ぶっ通しだったので、疲れもあり、帰りはそうはいかない。

しかも、長崎についてから気づいたのだが、
その時に持っている所持金。7000円。
そして最後の帰りの船が6000円。


疲れも溜まっているので、
帰り200キロを2,3日は見るとして
1日使えるのは333円。
宿泊はもちろん野宿。

帰り1日目の夜。
自分のお気に入りの野宿スポットを見つけた。

コインランドリーだ。

普段は駐車場の車の後ろなどで
着込んで荷物を枕にして寝るのだが、

2月やけん、バリバリ真冬。

緊急事態宣言が九州一帯に発令されており、
24時間営業のお店は皆無。

野宿経験者ならわかるとは思うが、
寝て起きた後は、体温が著しく低下する。

特に足の指先!!
冷え性ではないのに、
とにかく死にそうになる。

だから、夜は移動に時間を使おう!!
という結論に至り、
昼間にドラッグストアで買っておいたメロンパン4つで100円のやつをお腹に入れ
自転車で進んだ。

深夜2時頃、山を超えていると
神々しい光が目に入った。

それがコインランドリーだった。
コインランドリーは営業時間短縮とはあまり関係がなく、開いている。
そして、コインランドリーっていうものは
当然だが待てるように設計されている。

つまり、、、あたたかい。

それに田舎のコインランドリーは大きくて
そんなに人も来ない。
コンセントも(今考えると電気泥棒なので反省しております)、フリーWi-fiもある最高の環境だった。

僕はそこの大きな机の下に身を隠し床に寝転び、持参していたアイマスクで一夜(2時から8時くらい)を過ごした。

 
そして帰り二日目の夜、博多まで着いた。
昨晩と同じように24時間のコインランドリーを見つけ、寝る用意が整った。

23時に寝初めたのだが、
1時間後の深夜0時に起きてしまった。

昨日のように広くないし、
人も頻繁に来るけん、
どうしてもぐっすりというわけにはいかなかった。

そして起きてすぐに
20代後半くらいの男の人が話しかけてきた。
「何かお困りですか?」

やばい。ここの管理人さんか?
追い出されたり、
場合によっては警察に通報されるかも。

僕は怯えてしまって、
どう答えるのか戸惑っていた。

その様子を見た男の人は
自身のことについて話し出した。

「僕は以前、3ヶ月間ホームレス生活をしていたことがある。
今は仕事が見つかり新たな場所で頑張れているけど、
その時は毎日生きるのが大変で、精一杯だった。
だから、君みたいな子を見ると放って置けないんだ。」

それを聞いて安心し、僕も事情を話した。

僕の話が終わるとすぐに
「ついてきて」と一言。

その人も自転車で、前を走ってるのをとにかくついて行った。

その道の途中、興味本位でその人に
なぜそういう生活していたのかを聞いた。

「いろいろあってね。」

何かそれ以上聞いちゃいけないような気がした。
そこからは黙ってついていった。

20分ほどすると、快活clubというネットカフェがそこにあった。
その人は一通り手続きを終え、

「防音の方がいいよね?」
「はい。」
「足伸ばしたいよね?」
「はい。」

それだけ話して、ちゃんと良い部屋の個室を借りることになった。

「今日何食べた?」
「これくらいのメロンパンを4つです」

その人は少し考え
財布から1万円を取り出して、

「これで泊まれるし、食べたかったらたらふく食べな。」
って言ってくれた。

ええ!!
「ありがとうございます。
 でも、こんなに、、」

僕は今は無理でも、いつか何かでお返ししたい気持ちになって、
連絡先を聞いた。

そうすると、ネットカフェのレシートの裏に電話番号を書き記してくれた。
「いいかい。
 また博多で困ることになったら
 ここの電話番号にかけてきて。

 ただ、何も返さなくていい。

 その代わりと言っちゃなんだが、
 もし、君が僕くらいの大人になった時に、
 今の君のような子に手を差し伸べてくれ。

 それだけでいいんだ。」

「わかりました」
そう答えると、

「頑張って生きろよ!」
そう言い残し去っていった。

「ありがとうございました!!」
深夜、ネットカフェの廊下で僕の声が響いた。

その男の人のおかげで、
なんとか無事、家に帰ることができた。

僕は、今は差し伸べてもらうことが多いけど、
その名前も知らない男の人みたいに「人の温かみ」を感じられる人になりたい。と思った。

「優しくされたら、
 その分自分自身も優しい人でいよう。」

綺麗事かもしれないけれど、

そうみんなが思える社会なら
とっても素敵な世界なんだろうな。

そう僕が強く感じたのは、

深夜0時。
博多のコインランドリーでの出会いでした、。

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