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【フィリピン編④】最高のアクションだったよ

意識は人を強くする。プラシーボ効果しかり、吊り橋効果しかり、意識が影響する例はいくらでもある。

私はフィリピンでポーカーをする期間、プロ意識を強く持っていた。プロとして生活している、と自分で思い込み、稼げなかったら生活に影響するだろう恐怖まで体感していた。

程度は違うが、学生時代、テスト前に感じるプレッシャーと同じ種類だ。ときに向かい風、ときに追い風となる。

私の場合、追い風となった。持てうる限りのすべてを出して、テーブルを支配する。それはプレイだけでなく、会話、雰囲気、面白さなど、多岐にわたる。プロに求められるのは、ポーカーとしての技術だけでない。勝てる環境づくりという準備から、勝負は始まっているのだ。

例のごとくポーカーをしていたある日、私は30分ほどプレイする中で、他プレイヤーに「私はタイトアグレッシブだ」という印象を作り上げていた。このリスペクトが高い状況だと、ブラフは通りやすい。私のベットに相手がコール以上の場合、それは自信ありのサインだ。撤退を考えるきっかけとなる。

9人テーブルにて、UTGからオープンレイズ。そして、SBの私がレイズをすると、BBとUTGからコール。

<フロップ>
Ad Jd 6s

私からCBした後、BBはコール、UTGはフォールド。ここでヘッズ(2人)となった。

<ターン>
Ad Jd 6s Qc

ここで、ダブルバレル。しかし、BBは再びコール。

<リバー>
Ad Jd 6s Qc 3d

このリバーで、フラッシュドローは完成している。また、フロップ、ターンと相手からコールが入り続けている。少なくともターンまでは、相手にとって自信ありのはずだ。

そして、私のハンドはAQo(AcQs)だ。ダイヤは持っておらず、判断に悩む。

しかし、冒頭で記載したように、私はプロ意識をもっている。そう、いつだって……


真実はいつもひとつ!!


「さて、今回のポストフロップでは、相手はコールし続けている。ストレートやセットを持っている場合、ターンまでのレイズがあるだろう」

「ストレート、セットを持っている場合、フラッシュや1枚ストレートの完成は嬉しくない」


真実はいつもひとつ!!


「しかも、フロップ、ターンのベットは、0.6potを選択した。さすがに単純なドローも存在しない」

「そう、フラッシュドロー系の代表はKdQd、QdTd、Td9dなどがある。ただし、SBの3betにBBからコールしている。あってKdQdくらいだろうか」

「それ以上にありうるのは、AKやATなどのヒットドローと、AQ、AJ、QJなどの2ペアだ」


真実はいつもひとつ!!

「つまり、たまに負けているものの、ほとんどの相手ハンドに勝利している状況だ」

「ここでチェックすると、バリューの取り損ねにつながってしまう。ならば、当然…」


オールイン!!!


そして、相手は悩み始める。この時点でフラッシュはないだろう、と内心ガッツポーズだった。


そして、相手は私にハンドを見せてきた。反応から様子を探りたいのだろう。まあ、先ほどの反応で勝ちを確信しているので、「YouのHand見せてみなYo!!」、内心では調子にのっているしまざと。そして、相手ハンドは…

AQo


真実は… いつも… ひとつ………


それだけはチョップなんやて…


しかし、ここでもプロ意識は健在だ。時系列はこちら。

0.0秒 相手がハンドを見せてくる。
0.2秒 チョップは予想外。内心焦る。
0.5秒 がんばって無表情を貫く。
1.0秒 静かにうなずく。
1.4秒 全身から「AQには勝っている」オーラを出す。
2.0秒 全身から「早くコールしてほしいな」オーラを出す。


そして、相手は語りだす。

「さすがにそのオールインは、フラッシュかセットで間違いない」
「フォールド」



はい、勝ち~~

しかし、まだ終わりではない。私はプロだ(設定)。この相手には、このままテーブルに座り続けてほしい。だからこそ、アフターフォローは必須だ。

しまざと「AQ, no call?! What happened!!」
(AQにコールもらえない? そんな悔しいことある?)

相手「Your action is perfect. But I am not call.」
(君は最高のアクションだったよ。まあ、私はコールしないけどね)

悔しそうな私に、気分上々な相手が答えた。



おわかりいただけただろうか。

今回のポット獲得では、いままで積み重ねたテーブルイメージ(タイトアグレッシブ)を活かせた。チョップの相手にフォールドしてもらえる、まさにベストアクションだったのだ。

しかし、フォールドした相手には、ストレスがたまる。そして、最終的にストレスの限界を超えると、彼らは帰宅してしまうのだ。それならば、このテーブルイメージを引き続き活用できるよう、少しでも長くいてもらいたい。だからこそ、オールインが強かったことを装ったのだ。EVを追求するためなら、演技だっていとわない。


私、プロなんで(設定)。


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