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【フィリピン編⑤】バリュー時代の幕開けだ!!

 この日、私は席についてから2時間で、180BB負けていた。前日までの浮き(勝ち分)をすべて失い、最悪な気分だった。まだプレーミスはしていないものの、立派にティルト状態である。一方で、稼働しないと負け分を取り戻すチャンスはない。

いっしょに旅行していた仲間からは、「食事で気分転換しては?」と誘ってもらったが、あいにくそんな精神状態ではない。「私がティルト状態なのは知っている。しかし、席を立つことはできない。続行だ」そう答え、食事さえも惜しんで、ひたすらポーカーをしていた。これだけ見ると、ギャグでしかない。

しかし、食事を断ったのには理由がある。その日はブラフをキャッチされ続け、周囲のプレイヤーから「ブラフ過多野郎」、なんなら「ティルト中」と思われていたのだ。つまり、リスペクトがストップ安である。どれだけ下がっているかって? 例をあげよう。

それは、UTG、HJ、BTNの3プレイヤーが参加するポットだった。オリジナルはUTGで、HJとBTNがコールドコール、というシチュエーションだ。私はHJで、87s(8h7h)を持っていた。

<フロップ>
Ks 8d 6h

UTG 1/2potbet
HJ  call
BTN  call

ミドルヒットであり、ランナーランナーのフラッシュ&ストレートも見えるため、当然のコール。

<ターン>
Ks 8d 6h 8s

UTG 1/2potbet
HJ    call
BTN call

ここでトリップスとなったが、簡単にレイズはしたくなかった。「ブラフ過多野郎」と思われているにしても、このタイミングのレイズは警戒される。今までのブラフは、リバーの相手チェックに対してベット、その後にキャッチされている。シチュエーションが異なるのだ。

相手にオーバーフォールド(過剰なフォールド)を選択され、バリューを取り逃す可能性が十分にある。そのため、今回は逆転されるリスクを許容して、ターンはコールにとどめた。

<リバー>
Ks 8d 6h 8s As

UTG check
HJ    3/4potbet
BTN call
UTG call

リバーでオリジナルはチェックした。そして、私のアクション。ターンでcheckしたからには、リバーは当然のベットだ。

相手ハンドで、ストレートドローは完成していない。フラッシュはありうるものの、ランナーランナーのハンドだけが完成している。むしろ、ここでフラッシュを警戒しすぎて、AやKに対するバリューベットを取り逃すのはよろしくない。

しかも、私のリスペクトはストップ安状態。ブラフを疑って、バリューベットにコールがじゃんじゃんもらえる。バリュー時代の幕開けだ!!

そして、ショーダウン。相手は順番を無視して、自分のハンドを見せつけてくる。そして2人とも、ただのKヒット。すまんな、それには勝っているのだよ。くくっ、計画通り。

ただ、2人ともがKヒットでコールしたことには、「ここまでリスペクトが下がっているか~」と感心しつつ、「バリュー時代のビッグウェーブに乗るしかない!!」と気合を入れなおした。ベットにコールをもらえるのだから、あとはバリューベットするだけである。当然、テーブル変更(Change Table)なんてするわけがない。

ここからは、しまざとがポットを獲得し続けるだけの時間(しまざとタイム)が続いた。リンプポットで勝ち、マルチポットで勝ち、スクイーズで回収する。周囲からすると、勘弁してくれよ、となる。ちなみに、同じテーブルにいた陽気な欧米人、中国人あたりは、負けているのにテンションあげあげ。

「Baby Flush!?(3high flush)」
「You are slowplayer!?」
「Your raise is strong!!」

なぜかテーブルを盛り上げてくれる。そして、ほとんどのポットを獲得するしまざと。VPIPが高過ぎ? ポット獲得率が異常? そんなの関係ない。ちなみに、しまざとの直近ポット獲得率は80%を超えていた。周りのプレイヤーは、世界の終わりに立ち会ったような顔。

そして、テーブル中心(5番)のおっちゃんは叫ぶ。


「Change Player!!」(対戦相手かえてくれ!!)


そんなシステムないから笑。この冗談には、みんな大爆笑。そうして、にぎやかな雰囲気のまま、しまざとは収支をプラスマイナスゼロまで戻したのであった。


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