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【血統表の眺め方Vol.1】~国ごとの違い~

皆さんおはこんばんちは。シドレミです。

宝塚記念までに某解説記事を書き上げようと頑張っていたのですが、そもそも血統のいろはがわかっていない状態では記事の内容を理解できないのでは…という疑問が浮上し、それなら血統解説講座でも開いてその中で某件にも触れたらええやん!ってことになりました。
後日某件についても触れるのでお許しください。

*ちなみにこの記事は血統予想のノウハウを書いたものではありません。
血統というメガネを通じて競馬を楽しめるようになるのが目的の記事です。
その点はご了承ください。

それでは早速血統の基礎についてみていきましょう。


~~なぜ血統表を見るのか~~


そもそも「なんで血統表なんか見るの?」って話ですね。誰しもが一度は持つ疑問なのではないかと思います。

結論から言うと、その馬の特性がわかるからです。芝向きなのかダート向きなのか、短いところがいいのか長いところがいいのか、そういった馬の適性に関する情報が血統表には詰まっているのです。

馬の世界では繁殖入り(特に種牡馬入り)できるのはほんの一握りの選ばれた馬であり、血統表に載る馬というのは程度の差はあれどの馬も間違いなくいい馬です。有り余るスピードを持った馬、無尽蔵のスタミナを持った馬、圧倒的な瞬発力を持った馬...など過去には様々なタイプの名馬がいました。彼らはその武器を見込まれて繁殖入りし、そしてその特徴を次世代に受け継いでいきました。

つまり、血統表を見ればどの名馬の特徴を受け継いでいるかがわかるのです。

ここで、具体例としてスペシャルウィークの血統を眺めてみましょう。

スペシャルウィーク

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                                  (出典:netkeiba.com)

スペシャルウィークは父がサンデーサイレンス、母父がマルゼンスキーという血統。

父サンデーサイレンスはアメリカの二冠馬であり、日本競馬を変えた大種牡馬です。その特徴は圧倒的なスピードにあり、この馬の特徴を受け継いだ馬は基礎スピードに優れる、つまり足が速くなる傾向があります。(笑)
めっちゃ適当なこと言ってますがそれだけ凄い競走馬であり、サンデー産駒かそれ以外かで競走馬が二分できるほどの歴史的大種牡馬です。

母父のマルゼンスキーはウマ娘でもお馴染みの快速馬。父Nijinskyから豊富なスタミナを受け継いだマルゼンスキーは父同様スタミナを子孫に受け継がせる傾向にあり、父として二頭の菊花賞馬を送り出しただけでなく、母父としてもライスシャワーやメジロブライトといったステイヤーを送り出しています。

したがって、スペシャルウィークは父サンデーサイレンスから高い基礎スピード(≒エンジン)を受け継ぎ、母方からスタミナ面を受け継いでいる血統なんだなと理解することができます。
つまり、スピードとスタミナをバランスよく求められる中距離あたりの適性が高く、長距離やマイルも悪くはなさそうだというのが血統表から読み取れるスペシャルウィークの特性です。
(逆に言えば短距離適性は低いと推測できるため、短距離レースに出てきたら思い切って馬券からは外すか~などと考えることもできます。)

今回はわかりやすさ重視でウマ娘でいうステータスと適性だけに注目しましたが、本来はもっと細かく見ることができて、それこそスキルに近いようなところまで分析できるのが血統の醍醐味です。もっと細かく見るにはお勉強が必要。

~まとめ~
血統表を見るのはその馬の適性を推測するため。

さて、今の分析は過去の名馬を知っているのが前提となっていました。しかし、特に初心者の方が「〇〇は△△という特徴があって~」というのを一気に覚えるのは不可能です。限られた馬だけだと言っても現在繁殖入りしている馬は日本だけでも10000頭を超えています。(種牡馬に限っても100を超える)

それに加えて海外の馬も過去の馬もいるわけですから、すべてを覚えるのはほぼ不可能です。

しかし、ざっくりで良いなら意外と簡単に理解できるのが血統のいいところ。ポイントは各国の競馬の違いです。


~~各国の競馬事情~~


そもそも繁殖入りする馬というのは各国の大レースを勝った馬 ≒ その国のレース適性が高い馬 です。したがって、各国の競馬を理解すればその国の馬の特徴をざっくり理解することができます

「どこも同じ競馬だろ違いなんてあんのか」なんて思うかもしれませんが、全然違います。赤マルと水マルぐらい違います。

アメリカ


アメリカはダートに大レースが集まっている国です。そのため、アメリカの馬は必然的にダート適性の高い馬が多いです。(逆に言うと、ダート適性の高い血が生き残ってきた)

さて、ダート適性が高いというのは具体的にどういうことでしょうか。
少し考えてみましょう。

ダートというのは芝に比べてスピードが出にくい馬場です。そのため、後ろで脚を溜めていてもそこからトップスピードまで持っていくのに時間がかかり、結果的に前を捕えきれないということが起きやすくなります。よって、ダートで勝つにはとにかく前!スピードに任せて前に行き、そのまま押し切っちゃう馬が勝ちやすいのです。

したがって、ダート適性の高いアメリカの馬は(大雑把な傾向として)他国の馬より追走力スピードに優れています。

追走力というのは序盤からスピードを発揮するための能力です。ウマ娘でいうところの先手必勝や地固めといったスキルをイメージしてもらえればわかりやすいですね。この能力に優れているとハイペースでも前目のポジションにつけやすく、いい位置取りで競馬をしやすくなります。
アメリカの競馬は面白いくらい序盤からぶっ飛ばしていくのが特徴で、例えば今年のケンタッキーダービー(2000m)は800m通過がなんと45.36!今年のフェブラリーS(1600m)の800m通過が46.8ですから、そのぶっ飛ばし方の異常さが良くわかるかと思います。マイルレースより速いペースの2000mレースって嘘でしょ…

また、序盤からぶっ飛ばしてそのまま押し切るにはスピードが必須です。そもそも基礎スピードが高い馬でなければハイスピードを持続させるのは不可能だからです。
人間で考えると、50mの最速タイムが10秒の人間が10秒台で走り続けるなんてできませんよね?7秒台は持ってないと10秒台で走り続けられませんよね?そんなイメージです。

アメリカはとにかく一番に拘る国家なのか、競馬でも一番を譲りたくないみたいですね(笑)
最終的に一番になればいいや、とかじゃない。最初から最後まで「私が一番なんだから!」って感じの競馬をするのが特徴です。ツンデレ巨乳ツインテが思い浮かぶな()

~まとめ~
アメリカの名馬が血統表に入っている場合、追走力スピードを受け継いでいることが多い。因子風に言えばスピード3に先駆け・地固め持ち


ヨーロッパ


ヨーロッパは日本と同じく芝に大レースが集中している地域です。

(ここでヨーロッパとひとくくりにしているのは、向こうは国をまたいでの輸送がしやすく、ヨーロッパという地域で競馬の特色が形成されているからです。細かく見ればフランスとイギリスで違ったりするのですが…)

そのため、当然芝適性の高い馬が多いわけですが、ヨーロッパの芝と日本の芝はかなり違います。向こうの馬場は日本に比べて重く、非常にスタミナを要する馬場になっています。
日本はトラックレースのように整備されたコース、ヨーロッパはロードレースのように整備されきっていないコースといった感じです。

したがって、ヨーロッパの馬というのはスタミナ根性に優れる傾向があります。とにかく最後までバテない・諦めないのがヨーロッパの馬の特徴です。

しかし、これだけではヨーロッパの馬を理解したことにはなりません。もうひとつ大きな特徴があります。

それは切れ味です。

ヨーロッパの馬場はとにかく重い。バテやすい。
そんな状況で騎手はどう乗ると思いますか?アメリカのように最初から最後までぶっ飛ばすぜ!ってなりますかね?

もちろんなりませんよね(笑)
序盤は力を温存し、最後の最後まで脚を使わせようとするはずです。
そのため、ヨーロッパのレースというのは序盤はスローペースになり、最終直線の末脚勝負になることが多いです。
つまり、スローからの切れ味勝負に強い馬が活躍しやすいのです。

ヨーロッパというのは歴史的に異民族と戦ってきた地域です。民族間で食うか食われるかの争いをしてきた歴史があります。
そのため、とにかく生き残ることに大きな価値を見出してきたのではないでしょうか。
ヨーロッパでは障害レースが大人気で、それ専門の種牡馬もいるほどです。
グランドナショナルに代表される向こうの障害レースはまさにサバイバルレースで、完走できた馬が半数以下なんてことも…
そういったサバイバルレースを好む国民性が競馬にも反映されているのではないでしょうか。

最後までバテない、最後まで脚を使う。生き残った馬が一番強いんだ。
向こうの人はこういう風に考えているのだと思います(笑)


~まとめ~
ヨーロッパの名馬が血統表に入っている場合、スタミナ切れ味を受け継いでいる場合が多い。因子風に言えばスタミナ3に直線一気・末脚持ち


日本


日本はヨーロッパ同様芝に大レースが集まっている国ですが、ヨーロッパと違い非常に整備された芝でレースが行われます。

そのため序盤から脚を使ってもバテない場合が多く、結果的に前に行ける馬が有利になりやすいです。もちろん芝レースなので後ろで脚を溜めてもいいのですが、「前に行ってもバテにくい ≒ 前に行った馬でも末脚を発揮できる」のが日本競馬の特徴です。
アメリカとヨーロッパの中間をイメージするとわかりやすいかなと。
また、馬場が良い分時計の速い高速決着になりやすいのも特徴です。

したがって、日本で活躍する馬はスピード切れ味に優れた馬が多いです。

しかし、まだまだ発展途上のためスピードではアメリカに敵わないし、切れ味ではヨーロッパに敵わないというのが現状だと思います。(継承固有は本人固有に勝てない、そんな感覚)

日本競馬はレベルが上がってまだ数十年です。本家に敵わない部分があるのは仕方ないです。
ただ、逆に言えばスピードではヨーロッパに勝てるし、切れ味ではアメリカに勝てるわけです。実際ドバイや香港といった日本に近い馬場では日本馬も十分勝負になっています。

日本は古くから模倣しそれを改良してきた国です。そのため競馬においてもその国民性をいかんなく発揮し、アメリカやヨーロッパといった競馬先進地域の競馬を模倣しつつ独自の競馬を発展させています。
いずれは本家の得意分野(スピードや切れ味勝負)でも勝てる日が来るのではないでしょうか。(BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌはその点で本当に偉業だと思います)


~まとめ~
日本の名馬が血統表に入っている場合、スピードや切れ味を受け継いでいる場合が多い。因子風に言えばスピード2に地固め・末脚持ち


さて、これで各国の競馬をざっくり理解できたのではないでしょうか。

最初の内はどこの国出身かで特徴を推測してもそれなりに理解できます。血統は知れば知るほど面白くなりますが、知らなくても楽しめるものです。
両親がどちらもヨーロッパの馬だったら「スタミナと切れ味がありそうだな~」と推測でき、そうしたことの積み重ねで少しずつ血統に詳しくなっていくのです。


さて、ここからは実際に血統表を眺めていきたいと思います。


~~血統表を眺めよう~~


サイレンススズカ

                                  (出典:netkeiba.com)

サイレンススズカは父がサンデーサイレンス、母がワキアという血統。

母父のMiswaki(欧米)はアメリカの名種牡馬Mr. Prospector(米)からスピードを受け継ぎつつ母方からヨーロッパ的な切れ味を受け継いだ馬。産駒には名牝Urban Seaなどがおり、血統表では主に切れ味を伝える役目を果たしている。
また、母母父Ack Ack(米)はアメリカの主にマイル路線で活躍した馬で、強烈なスピードを伝える種牡馬。

したがって、父サンデーサイレンス(米)から基礎スピードを受け継ぎ、母方のMiswaki(欧米)から切れ味・Ack Ack(米)からスピードを受け継いだ血統構成。

全体的にスピードに富んだ血統(≒アメリカっぽい血統)のため、現役時代にアメリカ的な序盤からぶっ飛ばす競馬で連勝していたのも納得です。また、本馬の逃げて差すと表現された直線の伸び脚は母父のMiswaki由来のものだと解釈できます。

スピードに富みながら切れ味も備えた血統のため、直線の長い東京コースなどの適性が高いと推測できます。しかし、血統表にヨーロッパの馬が少ないことからもわかるがスタミナ要素は薄い。
そのため、東京の1600~2000あたりの適性が高いと考えることができます。

秋天なんかは最高の舞台だったでしょうね…


ヒシアマゾン

                                                                                                                            (出典:netkeiba.com)

ヒシアマゾンは父がTheatrical、母がKatiesという血統。

父のTheatrical(欧米)は主にアメリカの芝で活躍した馬ですが、その父のNureyev(欧)もSassafras(欧)もヨーロッパで活躍した欧州血統。
そのため、ヨーロッパらしいスタミナや切れ味を産駒に伝えます。

母のKatiesは子孫にアドマイヤムーンエフフォーリア がいる超名牝。
現役時代はヨーロッパで活躍し、父ノノアルコも母父Policもどちらもヨーロッパで活躍した欧州血統。

父も母も欧州色の強いヒシアマゾンはヨーロッパらしいスタミナ切れ味に優れた血統構成だと言えます。
しかし、アメリカ的なスピードや追走力には乏しいため、序盤からハイペースで流れやすい短距離やマイル・前に行った方が有利な小回りコースの適性は低いと推測できます。
そのため、直線の長い2000~2500あたりがベストだと考えることができます。京都2400のエリザベス女王杯などはまさにピッタリの舞台だったのではないでしょうか。

ちなみにヒシアマゾンは中山1200で重賞を勝っていますが、血統的には全く向いていないコースです。しかし、それでも勝ってしまうあたり実力が抜けていたんでしょうね。血統的に向いていない条件で勝つ馬 = 実力のある馬なので、血統は実力を測るツールとしても有効です。


ニシノフラワー

                                  (出典:netkeiba.com)

ニシノフラワーは父がMajestic Light、母父がDanzigという血統。

父のMajestic Light(米)はアメリカの芝ダート両方のG1を勝った馬で、芝でもダートでも主に中距離路線で活躍しました。

母父のDanzig(米)はアメリカの大種牡馬。怪我で大きなレースは勝てませんでしたが、種牡馬入りしてからは世界各国で何十頭ものG1馬を送り出しました。血統表では主にスピードを伝える役割を果たします。

ニシノフラワーは父も母父もアメリカの馬であるように、アメリカらしくスピード追走力に優れた血統構成。

まさに短距離やマイル向きの血統と言え、特に追走力が必要な小回りコースの適性が高いと考えられます。
スプリンターズSでヤマニンゼファーやサクラバクシンオーを破っているように、中山1200はまさにベストの舞台だったのではないでしょうか。

ちなみにこれは余談ですが、母母父父のWild Riskはヨーロッパの障害レースでも活躍した超スタミナ馬であるため、ニシノフラワーが中距離G1でもそこそこやれたのはその辺が影響してたりしてなかったり…


~~終わりに~~


皆さんいかがだったでしょうか。

今回は各国の競馬の特徴を中心に血統を見てきました。
アメリカは序盤からぶっ飛ばす競馬、ヨーロッパはラストの切れ味勝負、日本はその中間の競馬。
そして各国の繁殖馬はその国の競馬に適した馬であることが多いという話でしたね。

これらのことを踏まえて、皆さんも好きな馬の血統を眺めてみてはいかがでしょうか。


今回はこれにて終了です!
最後までお読みいただきありがとうございました!


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