世の中 PCR 検査について盛り上がってるみたいなので

世の中 PCR 検査について盛り上がってるみたいので、ちょっと分子生物学をかじった臨床医としての立場から書いてみます。

ただし、感染症の制御、という面でものすごい素人なので有識者の方、間違ってたら指摘してくださいませ。

まず、PCR検査、というのはなにかというと、DNAを増幅して視覚的に目にみえるようにすることで、DNAがあるか、ないか、調べる検査です。

やろうと思えば、DNAがめちゃくちゃ少ない状態から、めっちゃ増やしてあるか、ないか知ることができます。

SARS-CoV-2 はRNAウイルスなので、RNAをDNAにかえる処置をした後に PCR をします。

というわけで、まずは、患者さんの体の中でウイルスがいそうな場所から検体をとるということをしなくてはなりません。

ウイルスがいそうな場所から検体をとらなくちゃいけない、ということがまず第一関門で、とる人間が感染しないように防御しなくてはなりません。

私、こういうの実は好きでして、実は1月の終わりに実際、うちの医院でやらなくちゃいけない事態になるかも、とおもって、そのための装備品を準備しようと企てましたが、その時点で手に入らなくなっていました。

これは、おそらく重症の患者さんをみなきゃいけない施設が防御のための装備をあつめていた結果だとおもいます。

というわけで、検体をいろんな医者で集めてということをやろうとすると、重症患者さんをみてくれている施設の防御力がさがってしまってわけわかりません。

ここが一般の施設で検査ができない理由の1つ目。

あと、そのとった検体を運んでいる人、周りの人が感染しないように厳重に安全対策をしたうえで検査機関に運ばなくてはなりません。

ここが検査が大量にできない理由の2つ目

最後に検査機関に運んだあとで、ウイルスとしての毒性を消す作業をしなくてはなりません。

そのためにはウイルスが拡散しないように整備された施設とその作業を確実にできる人間がいなくてはなりません。

これは急にはふやせませんし、ほかの病気にも対応する能力ももたせなくてはいけないので簡単には増やせない、というのが3つ目です。

これから先は、分子生物学をやりこんだ技術のある人間ならばできる人多いとおもいますが、大学院生とか指導した経験上、まあ、下手くそにやらせてもデータは信頼できないので、ここもできる人間が限られる。

というのが4つ目。

機械化できればいいのでしょうが。まだできていないみたいですね。

そもそも PCR で検査するためには、いろんな検査の試薬等があり、自分のとこでやれるんじゃねと冗談半分で、と調べてみたのじつはこれも調べてみてのですが結構品薄です。

なので、ここから推測ですが、SARS-Cov-2を国民全例なんてやろうとしてもまあ無理です。いろんなほかの病気の検査ができなくなりますし、日本国内の分子生物学のラボがストップしてしまうでしょう。

ちなみに某企業の検査キットっていうのは、国立感染症研究所のとっている方法とほぼ同一なので、検査キットいれればできる、というのは幻想ですね。

ちなみに、プロトコールは公開されています。
https://www.niid.go.jp/…/i…/lab-manual/2019-nCoV20200225.pdf

ここまで短期間に検査広くおこなえるようなところまでもっていったのは、研究をかじったものとしてはめちゃくちゃ大変だったとおもいます。想像しただけで、涙でそうです。
さすが日本の頭脳が集まってるところです。

ちょっと話がそれましたが、やれることはやってるけど、いろいろな事情があるので、現時点で全国民に PCR は物理的、人的資源的にかなり困難です。

つぎは、そもそもPCR検査をする必要があるかどうか、やって意味があるか、安心につながるか、感染を制御できるか、を書いてみます。

ちょっと長くなりそうなのでわけますね。

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