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取締役③ー員数・任期

会社法のまとめノートを作成します。

員数

株式会社は、1人以上の取締役を置かなければなりません(会社法326条1項)。

一方、取締役会設置会社では、会議体を構成するために、3人以上必要です(会社法331条5項)。

任期

取締役の任期は、原則として2年です(会社法322条1項)。
(正確には、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで)

長い期間とすると、取締役が悪事を働く可能性があります。
そのため、任期に上限を作って、株主が定期的に監視をするようにしているのです。
逆に言うと、任期を短くするには、株主による監視のスパンが短くなるので、問題がないということになります。

例えば、事業年度の終了日を毎年3月末日である場合に、

2020年6月1日の定時株主総会で選任されたときは、選任された時から、
2021年3月31日と2022年3月31日と2回、事業年度の終了が到来した後の、
2022年6月25日の定時株主総会までが任期となります。

ちなみに、任期については、「選任後に事業年度の終了(3月31日)が、何回到来したのかを数える」と分かりやすいです。

任期の起算点


任期の起算点は、取締役の就任承諾の時ではなく、選任の時です。
ただし、選任決議の際に選任の効力発生時点を「就任時」とすることも可能です。

任期の終了時点

退任するのは、2年経った時ではなく、定時株主総会が終結した時です。

つまり、先ほどの例では、2020年6月1日に選任されていますが、辞めるのは、2年後の2022年6月1日ではなく、2022年6月25日の定時株主総会のときです。

これは、定時株主総会まで取締役として残ってもらって、2022年3月31日までの決算の内容や取締役の業務内容について、株主に説明してもらう必要があるからです。

取締役の任期は、公開会社と非公開会社で異なるか?

  • 公開会社  ⇒ 任期を伸ばせない

  • 非公開会社 ⇒ 10年まで伸ばせる(会社法332条2項)

これは、公開会社では、所有と経営が分離されており、株主は経営に踏み込む能力や意思がないことが前提ですので、定期的に株主総会にて株主の監視をする必要があります。

これに対して、非公開会社では、所有と経営が一致している場合が多く、株主はいつでも経営に積極的に関与できるため、株主による監視の機会を減らしても問題ないといえます。

むしろ、非公開会社の場合、長期にわたり有能な人材を取締役にしておきたいというニーズがあります。

そのため、非公開会社には、10年まで伸ばすことが認められているのです。

ただし、非公開会社は、自動的に10年にできるのではなく、定款で定めた場合に10年とできることに注意が必要です。

特殊な任期の満了(任期が満了する定款変更)

①委員会を置くという定款変更をした場合(会社法332条7項1号)
⇒ この場合、今の取締役が全員退任します。

委員会を置くと、取締役を含む役員は毎年改選となります。
そこで、1回このタイミングで全員辞めさせて、毎年、改選することとしたのです。

②委員会を置くという定款の定めを廃止する場合(会社法332条7項2号)
⇒ 委員会設置を廃止する場合、取締役は全員退任します。

一般的に、取締役の仕事は、業務の意思決定と監督であるところ、
委員会設置会社になると、取締役の仕事から、意思決定がなくなり、
監督だけになります。

仕事が監督だけだと思って取締役になった人からすると、
いきなり意思決定も仕事の内容に追加されるのは酷なので、
委員会設置を廃止する場合には、取締役を退任することとしたのです。

③非公開会社が公開会社になる場合(会社法332条7項3号)
⇒ この場合も、取締役を退任することになります。

非公開会社ということは、定款で任期を10年にしています。
ところが、公開会社になると、10年の任期を維持できません。
そこで、任期が維持できないので、退任することになります。

ただし、「非公開会社であっても委員会設置会社」であれば、
公開会社になっても、退任することにはなりません

委員会設置会社の場合、毎年改選します。
公開会社になっても、毎年改選であるので、任期が変わらないからです。

公開会社が非公開会社になった場合は、どうでしょうか?
公開会社の任期は2年で、非公開会社は10年まで伸ばせます。
つまり、今の2年の任期を維持できるので、退任させる必要はありません。

参考文献

・田中亘『会社法〔第3版〕』P216,220-221

・江頭憲治郎『株式会社法〔第8版〕』P405-407

・高橋美加ほか『会社法〔第3版〕』P172

・根本正次『リアル実況中継 司法書士 合格ゾーンテキスト 6 会社法・商法〔第3版〕』P224-227

・松本雅典『司法書士試験 リアリスティック6 会社法・商法・商業登記法I〔第2版〕』P341-346


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