ダイソーボドゲの18で勝ちたい

注意

こちらのnoteは、ダイソーで販売されているボードゲーム の18 -イチハチ- のネタバレを含みます。

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はじめに

突然ですが皆さんは、ダイソーで販売されているボードゲーム の18 -イチハチ- を知っていますか?

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画像引用:公式通販ダイソーネットストア

ゲームのルール

ルールはとてもシンプルで、二人で10回じゃんけんをします。

ただし使える指の本数は、最初に配られる指タイルの本数で決まっており、ゲーム全体で、両者それぞれ18本までしか使うことができません。

パーは5本、チョキは2本指を使用するので、これらの手は、自分の手元にある指タイルの残数と相談しながら使うことになります。

各回戦の勝者は、1点(6回戦目と10回戦目の場合は2点)を獲得します。

10回戦が終わった時点で指タイルが余っていた場合、その本数分減点されてしまうので、なるべく使い切らなければなりません。

獲得したポイントから、手元の指タイルの本数を差し引いた最終得点が高いプレイヤーが勝者です。

ただの運ゲーのじゃんけんが、リソース(指タイル)管理と、回戦毎における獲得ポイントの多寡という要素を得て、一気に奥深いゲームとなっています。

noteを投稿しようと思ったきっかけ

私はこのゲームを初めてプレイしたとき、すぐにカイジに出てきたような風景が頭に浮かびました。

ギャンブル船の中で沢山の黒服に監視されながら、18 -イチハチ-をプレイしている自分。

何故かその船には、ライアーゲームに登場した秋山深一も乗っていて、「このゲームには必勝法がある」といった台詞を言っているような気もします。

ここまで考えてしまったらもう止まれません。

ーーーーー絶対に18 -イチハチ-で勝って、エスポワールから降りてやる!

というわけで、このゲームでなるべく勝率を高める方法について考えてみました。


勝率が高い手の配分を探してみる

手の配分の種類

このゲームは、自分の指タイルを効率よく消費しながら、各回戦のじゃんけんに勝利していかなければなりません。

そこでまず重要となるのが『自分の出す手の配分』です。

10回のじゃんけんの中で、グー、チョキ、パーをそれぞれ何回ずつ出すのが最も勝ちやすいのでしょうか?

出せる指の本数に限りがない通常のじゃんけんの場合、手の配分の種類は、下記の重複組み合わせの式を用いて計算出来ます。

$${{}_n \mathrm{H}_r = \frac{(n+r-1)!}{r!(n-1)!}}$$

ここで$${n}$$は選択肢の数を、$${r}$$は選ぶ回数を表します。

10回のじゃんけんにおける手の配分を求める場合、手は3種類、選ぶ回数は10回なので、$${n=3}$$、$${r=10}$$となり、計算結果は66種類となります。

一方で18 -イチハチ-の場合、指タイルの本数制限があるため通常のじゃんけんよりも種類は少なくなります。

下の表はその一覧で、指の合計が18本以下となる手の配分は24種類です。

18 -イチハチ- における手の配分の一覧

最強の手の配分とは?

これらの内から、最強の手の配分を考えてみましょう。

最も簡単に思いつく『最強を決める方法』は、総当たりでそれぞれを戦わせてみることですね。

実際にそれぞれの対決を、一つ一つプレイして〇×を付けていくのも楽しそうですが、途方もない時間がかかる気がするので、プログラミングの力を借りることにしました。

プログラミング言語はPythonを用い、プログラム上で、仮想的なプレイヤー2人が 18 -イチハチ- のゲームをプレイできるようにしました。

仮想プレイヤー2人には、事前にそれぞれの手の配分を入力しておきます。

ゲームの各回戦では、その手の配分の中から、ランダムで出す手を選択するようにしています。

下の図は、作成したプログラムを使って計算した対決結果の一例です。

手の配分が、パーが3回、チョキが1回、グーが6回のプレイヤー1(P1)と、パーが2回、チョキが4回、グーが4回のプレイヤー2(P2)の対決ですが、P2が10回中4回勝利を収め、最終得点でも上回る結果となりました。

続いて、ゲーム回数を増やして、この2つの手の配分の勝率を計算してみました。

下の図がその結果で、青線がP1(パーが3回、チョキが1回、グーが6回)の勝率を、赤線がP2(パーが2回、チョキが4回、グーが4回)の勝率を、黄色い線が引き分けとなる確率をそれぞれ表しています。

ゲーム回数が少ない時点ではそれぞれの確率が激しく上下しますが、1000回を超えたあたりから、ある値に収束をしています。

合計10万回プレイを行い、最終的には、P1の勝率:45%、P2の勝率:38%、引き分け率:17%という結果になりました。

以上の結果から、パーが3回、チョキが1回、グーが6回の方が、パーが2回、チョキが4回、グーが4回よりも強いと言えそうです。

続いて、パーが3回、チョキが1回、グーが6回の手の配分と、全24種類の手の配分との勝率を計算してみました。

なお、それぞれの組み合わせで10万回プレイを繰り返した上で算出しています。

下の表はその結果です。

恐ろしいことに、P1の手の配分(パーが3回、チョキが1回、グーが6回)は、同じ手の配分を除く全ての手の配分に、勝率で上回る結果となりました。

既に最強の手の配分を見つけてしまった気がしますが…念のため、まだ調査を続けましょう。

続いて、P1の手の配分を他の配分に変えて、同じようにそれぞれの勝率を計算していきます。

手の配分の組み合わせの総数は、先ほどの重複組合せの式で計算でき、この場合は$${n=24}$$、$${r=2}$$で、300通りです。

計算自体は短い時間で出来るのですが、結果全てをこの記事に載せると情報が増えすぎてしまうので、少し組み合わせを減らす工夫をします。

このゲームでは、指タイルの余りは最終得点から差し引かれるというルールがあるので、指タイルの余りが多い手の配分の方が弱いということが予想できます。

そこで『指タイルの余りが3より多い手の配分は弱い』という仮説を立ててみます。
(3という数字は適当です。)

この仮説が正しいか検証する方法はたくさんあると思いますが、今回は、逆に強いと考えられる「指タイルの余りが3よりも小さい手の配分」に対する指タイルの余り数毎の勝率を調べてみました。

下図がその結果となります。

『指タイルの余りが3よりも小さい手の配分』に対する指タイルの余り数毎の勝率

予想通り、余り数が多いほど勝率が悪くなるという結果になりました。

特に、『指タイルの余りが3より多い手の配分』の勝率は20%を下回っています。

この結果を見ると、余りが3よりも多い手の配分は総じて弱いと言え、最強を決めるにあたって除外して良さそうです。

残った余り数が3以下の手の配分は8種類となり、それぞれの組み合わせにおける勝率を計算してみました。

下の表はその結果で、右の手の配分に対する、左の手の配分の勝率をそれぞれ記載しています。
※ この計算では引き分けは除外しています。
※ 左から(パーの数、チョキの数、グーの数)を表しています。

興味深いことに、手の配分の強さは明確に序列が決まる結果となりました。

最強の手の配分は、パー3回、チョキ1回、グー6回であり、次点はパー2回、チョキ4回、グー4回となっています。

それ以外の手は、いずれも、パー3回、チョキ1回、グー6回に対する勝率が20%未満、パー2回、チョキ4回、グー4回に対する勝率が30%未満となっており、選択する意味は少なそうです。

勝率が高い手の出し方を考えてみる

勝ちやすい手の出し方

パー3回、チョキ1回、グー6回が最強の手の配分ということが分かったので、次は、実際にどのようにそれぞれの手を出したら勝ちやすいかを考えてみました。

この手の配分はパーとチョキの割合が低いことから、『何回戦目でパーやチョキを出すか』、特に『獲得ポイントが多い6、10ラウンド目でどの手を出すか』が重要となります。

そこで対戦相手として、同じパー3回、チョキ1回、グー6回の手の配分と、次点のパー2回、チョキ4回、グー4回に対する、パーとチョキを出すタイミング毎の勝率を計算してみました。

これまでの計算と同様に、相手はランダムに手を選択することを前提にしています。

結果は下記の通りとなりました。

① パー3回、チョキ1回、グー6回と戦う場合
(1) パーの出し方
● 6ラウンド目と10ラウンド目両方でパーを出す:75.9%
● 6ラウンド目、もしくは10ラウンド目に1回パーを出す:60.4%
● 6ラウンド目、および10ラウンド目に1回もパーを出さない:36.0%
(2)チョキの出し方
● 6ラウンド目、もしくは10ラウンド目に1回チョキを出す:38.0%
● 6ラウンド目、および10ラウンド目に1回もチョキを出さない:53.0%

② パー2回、チョキ4回、グー4回と戦う場合
(1) パーの出し方
● 6ラウンド目と10ラウンド目両方でパーを出す:49.5%
● 6ラウンド目、もしくは10ラウンド目に1回パーを出す:52.6%
● 6ラウンド目、および10ラウンド目に1回もパーを出さない:55.9%
(2)チョキの出し方
● 6ラウンド目、もしくは10ラウンド目に1回チョキを出す:48.3%
● 6ラウンド目、および10ラウンド目に1回もチョキを出さない:55.4%

「パー3回、チョキ1回、グー6回」の手の配分と戦う場合は、パーを6、10ラウンド目に、チョキを6、10ラウンド目以外に出した方が良いことが分かりました。

この結果に関する考察ですが、相手の手の配分がグーが多いことから、グーに勝てるパーを、獲得ポイントが高い6、10ラウンド目で出した方が勝ちやすいという理由で説明が出来そうです。

また、「パー2回、チョキ4回、グー4回」の手の配分と戦う場合は、パー、チョキいずれも6、10ラウンド目以外に出した方が良いことが分かりました。

こちらに関しては、6、10ラウンド目において、一番獲得ポイントの期待値が高いグー(40%の確率で勝ち、40%の確率で引き分ける)を使う方が勝ちやすいという理由で説明が出来そうです。

以上の結果をまとめると、下記の通りとなります。

① 相手がパー3回、チョキ1回、グー6回の手の配分であると予想できる場合
  パーを6、10ラウンドの両方で出すと勝ちやすい
② 相手がパー2回、チョキ4回、グー4回の手の配分であると予想できる場合
  パーを6、10ラウンド以外で出すと勝ちやすい
また、チョキはいずれの場合でも、6、10ラウンド以外で出すと勝ちやすい

パーは相手の手の配分次第、チョキは6、10ラウンド以外で出すのが最良という結論となりました。

まとめ

以上の結果から、下記のことがわかりました。

● 全24通りの手の配分のうち、最強の手の配分はパー3回、チョキ1回、グー6回であり、次点はパー2回、チョキ4回、グー4回である。
● それ以外の手の配分は勝率が低いため、勝つことを目指した場合、有効な選択肢ではない。
● パー3回、チョキ1回、グー6回の手の配分を用いる場合、
 ① 相手がパー3回、チョキ1回、グー6回の手の配分の場合
  パーを6、10ラウンドの両方で出すと勝ちやすい
 ② 相手がパー2回、チョキ4回、グー4回の手の配分の場合
  パーを6、10ラウンド以外で出すと勝ちやすい
 チョキは、どちらにおいても6、10ラウンド以外で出すと勝ちやすい。

この 18 -イチハチ - の勝率を高めるためには、全10回戦の中で、パー3回、チョキ1回、グー6回の手の配分を採用し、相手の手の配分を予測しながら、パーを適切なタイミングで出せば良い、ということが分かりました。

ただし以上の結果は、相手がランダムで手を出すことを想定した結果です。

実際の勝負では、手の出し方の履歴や指タイルの残数、更にこのnoteで触れた内容など、様々なことを考慮した読みがお互いに行われるので、必ずしも上記の戦略が勝ちに直結するとは限りません。

ただエスポワール号のような場所で、何度も見知らぬ相手と戦う際には、これらの内容を知っておくと得をするかもしれませんね。


さいごに

今回のnoteは以上となります。

検討をしていて感じたのは、この 18 -イチハチ- は、ルールが簡単なのにも関わらず、真面目に考えるととても興味深いゲームだということです。

今回のnoteで出した結論は、このゲームにおける最適な戦略を限定するものとなっていますが、この戦略を既に知っていた場合、取りうる戦略は更に違うものとなり、より一層ゲームの面白さを高めることが出来れば幸いです。

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