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FBRからの脱却?今シーズンのチャド ピンダーの確かな進化

こんにちは。もーです。

ご存知ない方もいるかもしれません。私はアスレチックスの選手は貢献してくれる選手は皆好きなのですが、その中でも特に推している選手がいます。

そうです。チャド・ピンダーというユーティリティープレーヤーです。

それまでの私はジャロッド・パーカーやソニー・グレイなど先発投手を推していく傾向にあったのですが、昨シーズンのピンダーのプレーぶりに感化され、すっかりピンダークラスタとなってしまいました。

ピンダークラスタとして、どうしてもピンダーについて発信するのを止められず、この記事を書いてしまったわけです...最後までお付き合いください(^O^)/

この記事では2019シーズンこれまでのピンダーを振り返っていくと同時に、現代とこれからの打撃についても考えていきます。

ここまでのピンダー

ここまでのピンダーは端的に言えば、すこぶる好調です。

打率.316、OPS.844、wOBA.354はいずれもキャリアハイペース。
昨年にはなかった確実性を発揮していて、規定打数に達していないものの打率はチームトップ、二塁打6本もチーム2位と打撃面でチームを引っ張る活躍です。

守備でも、今年はすでにバッテリーとCFを除く6ポジションで出場していて、まさしく”ユーティリティープレーヤー”の働き。

ポジションは主にLFがメインで、その他にもマット・オルソンを欠く1Bのバックアップや、不調だったプロファーの代わりに2Bに入ったり、出ずっぱりのチャップマンやピスコッティの休養日に3BやRFに入っています。
昨年、僅か400イニングそこそこながらDRS+9を記録したLF守備は今年も健在で、既にDRSは+2。ゲレーロJrの大飛球を奪った守備は話題になりました。

昨年からの変化・・・①打撃フォームの変更

少し画質が悪いですが、昨年のピンダーと今年のピンダーの打撃フォーム比較です。

変わったのは主に二点。

一つはグリップの位置です。
2018では耳より少し高い位置にグリップがありましたが、
2019では耳より低い位置に変わっています。

二つ目はスタンスです。
2018はややクローズド気味で、背番号18の「8」の部分がやや見えるくらいでした。
今年はというと、ややオープンスタンス気味で、背番号は「1」の部分が見える程度です。

この打撃フォームの変更によって、ピンダーは恐らくコンタクトの改善を狙っていたのだと思います。

上が2018年のチャートで、下が2019年のチャートです。

一目瞭然ですが、昨年に比べて空振りの少ない青いゾーンが増えています。
今年のこれまでで、Whiff%は28.5%→21.7%にダウンし、Contact%は79.6%→85.6%に向上しました。


昨年からの変化・・・②ランチアングルが下がった

今年のピンダーはゴロ打球が増えたのも一つの特徴です。

GB%は昨年の44.3%から50.0%に増加した代わりに、FB%は24.1%から18.2%に減少しています。
Launch Angleは13.3→9.7に下がっていて、リーグ平均を下回りました。

昨年からの変化・・・③三振&四球の減少

元来、四球を大幅に三振が上回るフリースインガーのピンダーでしたが、今年は少し違います。

K%は26.4%→16.9%まで減ったものの、BB%も8.1%から2.4%(!)に大幅減しています。

更に関連する指標を見ていくと、P/PAも3.62→3.39になっていて、もともと高かった初球スウィング%も2017年の39.2%から48.2%に、Zone Swing%も76.4%→81.5%にアップしていました。

コンタクト力が上がったのも一因ですが、今年のピンダーは打席の中で積極的にバットを振ってインプレーを増やすアプローチをしているのだと分かります。


昨年からの変化・・・④失われたハードヒット

昨年のピンダーは打球初速をはじめ、スタットキャスト系の指標で優秀な数字を残していました。

しかし今年はというと、Hard Hit%が42.5%→37.9%に、打球初速が90.2mph→88.7mphに、バレル%は14.2%の高水準から平均以下の4.5%に軒並みダウンしています。

ハードヒットが減った分、ソフトヒットが増えてしまい、それが長打力に影響を及ぼしているのでしょう。


考察

4つのポイントに注目してピンダーについて掘り下げてきましたが、簡略にまとめるとこういうことです。

コンタクト重視の打撃フォームに変更し、三振を減らしつつ、積極的なアプローチでインプレー打球を増やし、その打球も角度をつけないようにしている。そしてその結果ハードヒットが失われたものの、打率を残している。

ということです。
このピンダーの興味深い取り組みは間違いなく球界の昨今の流れに沿ったものです。

考察-a FBRからの脱却

近年のMLBの野球はフライボールレボリューション(FBR)を避けて語ることはできません。

FBRというのは、簡単に説明するなら、守備シフトの流行に対応するため、内野の頭を超えられる打球角度でボールを強打しよう、という流れのことです(合ってますよね?)。

FBRが起きた結果、ホームランの数は激増。様々なホームランに関する記録が生まれました。
一方で投手の方もアジャストメントし、FBR対策を進めたため三振数も同じように激増したのです。

昨年までのピンダーもまさしくFBR時代の流れに沿う打撃をしていました。
多少の確実性を犠牲にしても、ハードヒットを打ってホームランを打っていこう、バレルをたくさん生み出そう、というのがFBR時代の打撃です。

しかし、状況は刻一刻と変わっていきます。今のMLBは狐と狸の化かしあいで、新しい戦術が出てきてはそれにアジャストする、というのの繰り返しなのです。

HOUとBOSが過去二年の世界一チームですが、彼らはポストFBRの戦略を打ち出して他球団より優位に立って勝ち上がってきたチームです。

その2チームの戦略を例に出してみます。

HOUは世間に浸透した2017年には既にポストFBRの戦略で他を圧倒していました。
2017年のHOUは、FBRの副作用であるK%をMLBベストにまで減らしています。2016年はMLBワースト4位のK%を記録していたのにも関わらずです。

そしてそのHOUを退けて昨年世界一になったのがBOSです。
BOSはHOUで実践されていた、早いカウントからでも積極的に振りに行って三振を減らしつつ、打率を高めるため”好球強打”の戦略に加え、更にプレーオフに向いたスモールボールのテイストも入ったバランスのとれた攻撃力で覇権を握りました。スモールボールのテイストの入った攻撃というのも、昨年のBOS打線は「三振かホームランか」のビッグボールからは離れ、状況に応じてゴロ打球も打てる、盗塁もできるという幅の広さを持っていました。

この2球団の例から、チームとしての”ポストFBR”戦略は「三振かホームランか」の二極化から離れ、フライボールを攻撃の一つのオプションとして捉え、その他の選択肢も使うことで他球団に差をつけるというものでした。

考察-b これからの打撃とは

aの章では2球団を例に出し、2018年までの打撃の在り方を見ていきました。ここからは、J.D.マルティネスを例に、これからの打撃の方向性とピンダーの目指す先を考えていきたいと思います。

J.D.マルティネスはFBR時代の寵児であり、FBRを実践して台頭してからは彼の取り入れたものがそのままトレンドになっているような打者です。

昨年、BOSで世界一にも輝いたマルティネスは昨年、打球の角度を下げて、よりハードコンタクトを重視するアプローチで、ほぼ全ての数字でキャリアハイを記録しました。

セス○○スさんのツイートを引用させていただきました。
ここから分かるのは、J.D.マルティネスがFBRの2つの柱といってもいい「打球速度」と「打球角度」の内、更に「打球速度」にコミットしたアプローチに変えたということであり、またそのアプローチこそ打者の攻撃力を最大化し得るものなのではないか、ということです。

まとめ

ここでやっとピンダーに話を戻しましょう。

ピンダーの取り組みも、ここまで例に出したHOUやBOS、そしてマルティネスが行ってきたことと同じことなのではないでしょうか。

粗削りなFBR時代の打撃を脱却し、コンタクト力を重視したフォームに変える。積極アプローチでインプレー打球を増やし、代わりに三振を減らす。
そして打球角度を下げ、あとは打球速度だけ。。。

まさしく今は進化の過程の真っただ中にいるのだと私は思います。

マイナー時代はパワーツールが”20”評価をされたこともあったなど、生来のパワーヒッターではないピンダーだけに、打球速度を戻すのには時間が必要なのかもしれません。

ただ、もし打球速度が戻ったならば、ホームランも四球も増えることが予測されますし、四球が増えたなら出塁率も上がって、今よりもさらに見栄えの良い成績が残ることでしょう。

もしこのまま、J.D.マルティネスの下位互換のような打者に進化したとしたらどうでしょう?打撃の完成度を落とす代わりに、平均以上の守備力でバッテリー以外を守れる最強のユーティリティープレーヤーになってしまうではありませんか!

最強のユーティリティーになる可能性を秘めた男、チャド・ピンダーの2019シーズンから、皆さんくれぐれも目を離さないでください。


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