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J.B.ウェンデルケン、ついにブレイク


今日は2020年に結果が出たJ.B.ウェンデルケンのブレイクの要因について。

2018年に防御率0点台の鮮烈な登場を果たして以降、ずっと注目してきた投手なので今年のブレイクには感慨もひとしおである。
最後に彼の奪三振ハイライトのリンクもあるのでそちらも是非。


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レパートリーの変更がブレイクの要因

彼のブレイクの要因として非常に分かりやすいものは、大幅なレパートリーの変更である。


元々、ウェンデルケンは威力ある4シームで押せる力はあるものの、絶対的な決め球に欠ける投手だった
2019年の前半戦までの変化球はカーブとチェンジアップの2球種のみ。
元々ベストピッチだったカーブに加え、チェンジアップにも改良を加えたが結果にはつながらず、マイナーに送りかえされた。

降格したAAAでも防御率5点台という散々な出来だったが、9月に再びコールアップされると全く別人のような投球を見せた。

この活躍の陰には新球種(スライダーとシンカー)の存在がある。

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ウェンデルケンはそれまでメインの変化球だったカーブ・チェンジアップに代えて、スライダーとシンカーを多用。
この大胆な変更がハマり、9月は6回1被安打0失点の快投を見せた。

そして2020年も9月のスタイルを引き継ぎ、前年には最も使わなかったスライダーを26%も投じることになった。

スクリーンショット 2020-12-20 1.52.49

そしてこのレパートリー変更は再び2020年に大きな実を結ぶ。

スクリーンショット 2020-12-20 1.56.30

新しく決め球に据えたスライダーはWhiff%が33.3%、空振りを奪いにくいシンカーでも28.6%を記録するなど、全5球種でWhiff%が20%を超えた
シンカーを増やしたことで同じ方向に変化するチェンジアップが効果を増したことなどレパートリーが増え、投手としての奥行きが深くなったのではないかと思う。


球種ごとのアジャスト

ウェンデルケンは単に球種の割合を変えるだけではなく、球種の変化量にも細かいアジャストを加えている。

スクリーンショット 2020-12-20 3.34.40


まずシンカーの増加に伴って、4シームの質を若干シュート寄りからカッター寄りへ、真っスラ化させている。
上図のInches of Break(横変化)が6.1インチ→3.2インチへと減少、下のマップでも分かる通り4シームのバブルはy軸側に変化している。

ウェデルケンは元々ハイスピンの4シームが武器だったが、アクティブスピンがそこまで高いわけではなかったため、以前のようなシュートしてホップさせるタイプの4シームより結果が出やすいのかもしれない。

JB_4シーム

そしてスライダーとカーブにも変化が。

ウェンデルケンのスライダーは85mph前後で縦に切れる割かし古典的な縦スラである。
そこで2球種の差別化を図るためなのだろうか、スライダーを横に、カーブを縦に曲げている痕跡が見える。


今後の課題

今年大きな進歩を遂げたウェンデルケンだが、HOUとの地区シリーズでは2登板とも痛打を浴びた。

どちらの登板でも決定機を引き起こしたのは甘く入ったスライダーだった。チームが敗退したALDS第4戦では変化球のメインを、打たれたスライダーからカーブに途中で切り替えていた。

ストライクゾーンからボールゾーンに逃せば良いカーブ・チェンジアップや速球とは違い、ゾーンを突きつつ甘く入ってはいけないスライダーを制御し切る技術はまだ備わっていないのかもしれない。
だが、今や投球の軸となったスライダーのコマンドは今後の成功の鍵になると思う。


来年への期待

現在クリスマスの直前、A'sのフロントはプレーオフ敗退直後にクリスマス休暇に入ったのかと思えるほどの沈黙を貫いている。

来年の開催要項(観客の有無)が確定するまでは大きな動きはできないという体裁なのだろうが、今のところブルペンの重役の席は空席である。
フロントはクローザーについて内部で選択肢を探ることも明言しており、ウェンデルケンも当然その候補に名を連ねた。

振り返ってみればこの球団のクローザーはグラント・バルフォア、ショーン・ドゥーリトル、リアム・ヘンドリクスなど、クローザーとして入団したわけではなく、セットアップの立場からクローザーに昇格した投手が多い。
この法則に照らし合わせてみると、ウェンデルケンにもこの出世街道を踏襲するチャンスは十二分にある。

なんとか来年はクローザーの座に定着し、数年後のトレード放出で球団に大きな恩恵をもたらす足掛かりを作って欲しいと思う。



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