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要注目のセクシールーキー!クリス・パダック

近頃のMLBはといえば、必ず毎年球界を席巻するルーキーを輩出しています。

2年前はアーロン・ジャッジとコディ・ベリンジャーがHRを量産し、FBR時代の寵児として印象深い活躍を見せると、昨年は若干20歳前後のロナルド・アクーニャJRとフアン・ソトの早熟の打者たちがNLの新人王争いを引っ張れば、ALでは二刀流の大谷翔平が球界に大きなインパクトを与えました。

ならば今年は誰か。

キャンプからフェルナンド・タティスJR、ウラディミール・ゲレーロJRと言う二世選手が話題をさらいました。
彼らは実力だけではなく、偉大な選手の息子であるという点や彼ら個人のパーソナリティのおかげで、より大きな注目を浴びました。

しかし、開幕からの1か月でプレーでインパクトを与えたのはその二人でしょうか?
いや、違う。
タティスJRはILに入り、ゲレーロJRは打率1割台と苦しんでいるのが現状です。

これまでの期間で名実ともに”今年のルーキー”を象徴する活躍を見せているのはこの男ではないでしょうか。

それがSDのクリス・パダックです。


パダックはここまでルーキーの中では菊池雄星を上回る一番の活躍を見せています。

ERA1.55、WAR1.4などはもちろんルーキートップであるだけでなく、ERAはMLBのトップで多くのスタッツでルーキーらしからぬ優秀な成績を残しています。


強気 パダックのピッチングの中身

パダックのピッチングが他の投手との懸隔を示す大きな特徴が二つあります。

それは”コントロールの良さ”と”4シームとチェンジアップの2ピッチ”であるという点です。


1.抜群のコントロール

もともとMIAの傘下からキャリアをスタートさせたパダックですが、その時代からマイナーでは圧倒的な成績を収めています。

ERAは最も高くても2.24であり、そして驚くべきことにBB/9が2.00に割り込んだことがありません。

以下のピッチングチャートを見ればわかる通り、4シームは高めを中心に、チェンジアップは低めを中心に丁寧に投げ込まれていることや、ドットの集中度合いから再現性の高さも窺えますね。


試合を見ても最近のトレンドであるゾーン高め一杯への4シームがビシバシ決まっています。

2.4シームとチェンジアップのコンビネーション

パダックの特異なポイントはやはりこの、2ピッチしか投げないというところも一つでしょう。

パダックのチェンジアップ(分類的にはバルカンチェンジ)はマイナー時代から「真のプラス・プラスピッチ」との評価を受けていた、まさしく伝家の宝刀的な変化球で、今期もPitch Value6.9は全体4位の好成績を記録しています。

そしてそのチェンジアップとのコンビネーションで使う4シームも威力絶大。Pitch Value8.9はチェンジアップを凌ぐ値で、こちらも全体4位の好成績。

伸びのある高めの速球と低めのチェンジアップのコンビネーションはそれだけで強力なもので、サードピッチを特に必要としていないのでしょう。

カウボーイハット...挑発.......ビッグマウスな男


パダックのトレードマークの一つはこのカウボーイハットではないでしょうか。

MLBデビューの登板にカウボーイハット姿で登場したパダック。

西部劇のカウボーイそのものの姿での写真は彼のインスタグラムにも多く投稿されて、パダックもカウボーイハットを自身のトレードマークとして気に入っているのではないでしょうか。

ユニフォームを手に入れられなかった家族や友人らもカウボーイハット姿。

そしてビッグマウスっぷりもパダックの大きな特徴でしょう。

彼が体に刻んだ”236”のタトゥーはMIAに8巡目(全体236位)の低順位で指名された悔しい過去を忘れずに発奮材料にするためだ、というエピソードもそれを示しているでしょう。

そんな中、彼のパーソナリティを如実に示す一件が起こりました。

彼は5/6のNYM戦を前に、彼を差し置いて月間最優秀新人を獲得したピート・アロンソを挑発。

「彼は間違いなく素晴らしい選手さ。月間最優秀新人に値する。だが俺は彼を迎え撃ってやるさ。月曜日にどちらが上か分かるよ」
"He's a great player, no doubt. Does he deserve (the Rookie of the Month honor)? Absolutely. But I'm coming for him. We'll see Monday who the top dog is.”

パダックの宣戦布告に対して、アロンソも応戦

“If he was upset about [the NL Rookie of the Month Award], I'm assuming he could have been a little jealous. ... Also, he said something about winning the Rookie of the Year. That would be nice, but I'm trying to win a World Series.”
もし彼が今月の月間最優秀新人に憤慨しているなら、彼は少し嫉妬しているんじゃないのかな。また彼は年間の新人王についても何か言っていたね。それは素晴らしいことだけど、俺はワールドシリーズを勝とうとしてるんだ。

そして迎えたアロンソとパダックのマッチアップ。

第一打席と第二打席はパダックが押し切って三振を奪い、第三打席はサードゴロに打ち取り、3タコ2Kでパダックが完全勝利。

試合後のパダックのコメントは、

アロンソに対して反感があるわけじゃない。素晴らしい男だし、月間最優秀新人に値するよ。だけどちょっと面白くしてやろうと思ったんだ。自分とチームを奮い立たせるようにね。
Nothing against Pete Alonso. Guy's a great guy and well deserved Rookie of the Month. ... But I just wanted to have a little fun out of it, get me fired up, get my team fired up."

開いた口が塞がりませんね...まさかのプロレス的な挑発だったとは、、、

対するアロンソも、

これは俺とパダックだけの問題じゃない。メッツとパドレスの問題さ。明日は必ず勝つ必要がある
"This isn’t about me and Chris Paddack. This is about the New York Mets versus the San Diego Padres. We got to get them tomorrow. It’s a must. We need to win tomorrow."

と悔しさをにじませるコメントを出したその翌日、今度はアロンソが大爆発。

3安打4打点の内の一本は9回表同点からの勝ち越し2ランで、飛距離は驚愕の449ft。

なんと熱いライバル関係.......
今シーズンの最後に笑うのはどっちなのか!


まとめ

いつの時代も球界を盛り上げるのは絶対的なスターとそのライバルとなる選手との熱いバトル、もしくは絶対的な選手のコンビと相場が決まっています。

三原・水原両監督のライバル関係もそうですし、球史に残るONコンビ、甲子園を沸かせたKKコンビもそうでしょう。
アメリカでもマグワイアとソーサのホームランキング争い、A-RODとジーター、そしてガルシアパーラの3人が並び立ったあの時代は華やかなものでした。

しかし、今の時代にはそういう要素が少し欠けているかもしれません。

ハーパーとトラウトの二人こそ球界を代表するライバル関係になる可能性を感じさせましたが、二人の成績の差はもはやライバルと呼べるものではなくなってしまったような気がします。
今、これといったライバル関係というのはトレバー・バウアーとゲリット・コールや、これまたバウアーとアレックス・ブレグマンぐらいではないでしょうか(ネタ的な意味で)

圧倒的な実力と、面白そうだからと挑発を敢行するパダックはもしかすると、退屈にも映る球界を盛り上げてくれるかもしれません。
期待が高すぎるかもしれませんが、それほどの力をある選手になりうる存在でしょう。

今後もパダックのピッチングと、それと言動からも目が離せません。


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