はしのした #29

 生理痛が酷くて起きたので、薬効くまで文章書いて待とうと思う。ただいま早朝の5時。風が強くて雨が降っている。雨音を聞きながら寝転がるのはたまらなく好きだ。腹痛いけど。雨というリラックス効果が追加されてるのでちょっとマシに感じる。
 さて、ツイ禁のあれから1ヶ月くらい経った。今のところTwitter上で病んだりすることはほぼない。ちょっと落ち込む時はあったけど、話を聞いてくれる人ができたので泣き寝入りする心配がなくなった。その人に話せばすぐ楽になる、という感じ。彼の存在は今の私にとても大きな影響を与えている。そんな彼に出会えたという興奮が未だ収まらないので、熱いうちに書き記しておこうと思う。

 彼と知り合ったのは、たったの1ヶ月も満たないくらい前。文面でのやり取りからはじまって、それから少し通話をして、んではじめて顔合わせしたという流れで親しくなった。はい、そうです出会い系です。出会い系を始めた理由とかについてはまたこれ話すと長くなるのだけれど、簡単に言えば「異性慣れしときたかった」のと「人間観察をしたかった」のと「お友達が欲しかった」という感じです。本当に軽いノリで手を出しました。どんな感じなんだろー、という好奇心程度で。(なのに始めた理由を語ると長くなる。たぶん全部言い訳)
 とまあ彼とはそうして出会った。まず、彼のプロフに「特に惹かれた!」という部分は感じなかった。ただプロフ画像が風景写真というのと紹介文の真面目そうなところに信頼を置いていいねを押した。そしたらマッチした。その後のチャットもまあ普通だった。強いて言うなら、好きな音楽の話とかカラオケの話をしながら「この人なんか理解あるなあ〜」って感じたくらい。他の人ともチャットで音楽の話をしていたのだが、あんまり広がらない印象だった。まあ私の方があんまりやる気はないのだが。マッチングアプリのチャットは、全員とはじめまして状態からの会話になるのであんま面白くないのです。かわいいね! 今学生? カラオケ好きなの? 何歌うの? 猫好きなの? みたいな相手の質問にただ答えるだけ。まるで面接。複数人と同時にそんな会話してるから誰が誰だか全く記憶できない。
 その中でも彼は「私の好きなジャンルに興味を持ってくれてる良い人」程度のイメージはついていた。その後のノリでLINEを交換し通話。いや、通話をするとやっぱり7割方のその人のイメージが一気に確立される気がする。彼は爽やかな声を持っていて、はっきりとした喋り方が好印象な青年だった。空気読まないマシンガントーカーの私は、自分ばっか喋ってて相手相槌だけ打ってるみたいになることが多いのだが(それはそれで好き)、彼とは上手に会話のキャッチボールができているなあと感じた。とても話しやすかった。
 2回目の通話で結構緊張が解れたのか、互いの恋愛事情などをだらだら長時間話すなどした。夜遅めだったこともあり私は完全にオープンザハート状態。何より本当に話しやすい。その楽しさに眠いのも忘れるくらいだった。
 1週間後くらいに実際に会った。落ち着いた雰囲気の黒髪眼鏡君。彼と一緒にいてどうだというのを長々と語りたいから、どこに行ったとかは割愛しよう。とにかく優しい。そこ普通気づかねえよ、てとこにまあ気遣いの回ること。通話のみの頃から何となく察してたけど、気遣われた本人がびっくりするくらい自然と細かいところに気がつくのだ。これは優しくされ慣れてない女子は即落ちですわ。異性慣れしてないとアウトですわ……。なるほど彼は『何故か』異性にモテるらしい。いやそういうとこだよ、と我慢できずに何回かツッコんだ。

 私はどうなのかという話である。たしかに優しくされ慣れてないし異性慣れもしていない。ただ不思議と、「この人すげえ」という驚きがいちいちでかすぎてそれどころではなかった。気がする。本気で尊敬した。あ、私こんな人になりたい、と初めて思った。
 好きだと思った人はいる。尊敬している人もいる。でも、「この人のようになりたい」という感情を人に抱いたことはなかった。何となく自分の理想像を空想の中だけで持っていた。それが今現実に、親しい人として在る。その事実にとても興奮した。私の「優しい人になりたい」というぼんやりとした目標に、彼ははっきりとしたイメージを与えてくれたと思う。優しいってこういうことなのか、と彼を見て気づいた。心からの気遣い。自分のことを尊重してくれているんだとはっきりとわかるような気遣い。彼の思いやりには驚くほど下心を感じなかった。どこまでも真っ直ぐで純粋で真剣なのだ。具体的にどう、とは言い難いけど、そう感じられたとだけは自信を持って言える。
 一緒にいて過ごしやすい、と感じることも多かった。肌の温度が同じ(Ryuren語で相性がいい、を指す)なのではないかと勝手に思っているのだが、彼の方が誰とでも過ごしやすい雰囲気を作れる人なのかもしれないとも思ったり。混雑しているバスの中、ちょっと彼と離れている時不安になった。近づいてきてくれた時の安心感はとてつもなかったし、同時に嬉しかった。

 彼は私の話を真剣に聞いてくれる。私の悩み、怖い思いをしたこと、楽しかったこと。数日前、誰にも話したことのない大きなトラウマを思いきって彼に聞いてもらった。忘れよう忘れようと心の内に無理やり閉じ込めていたものを、なんとか言葉にした。声に出した。涙が溢れて止まらなかった。彼は「頑張ってきたからね」と私に言ってくれた。その瞬間だけは声が出せなくて、何と返すかも考えられずにただ胸と目の奥が熱くなった。ずっと誰かに言われたかったことだ。「私は頑張ってる」「私は頑張ってるよね」長らく自分自身にだけ言い続けてきた言葉が、なんと他人から向けられた。しかも声で。もう、もうこれ以上は何もいらないとさえ思えた。この人がいてくれるだけで私は安心して生きていけると思えた。何気ない言葉だったとしても、私にとってはそれが大きな救いになった。
 自分でも、人の好き嫌いは意外と激しい方だと思っている。優しくしてくる人でも、何だか合わないと思えば「気持ち悪い」「私のことなんにも知らないくせに」と逆に不快感を覚えてしまうことがある。しかし、彼に関してはそれが全くない。知り合って間もないのに、ここまで傍にいてほしいと思えるのは不思議だ。彼が持っている数ある魅力のうちのひとつかもしれない。嫉妬深い私ですら、彼の魅力に取り憑かれた過去の女たちに納得する。むしろ彼女らは幸せだったのだろう。こんなに素敵な人と時間を共有したのだ。思い出の中に彼がいるというだけで幸せなことではないか、と勝手に考えている。そして私は嫉妬と言うより、その幸せを勝手に羨んでいる。
 正直自分自身の心境にも驚きを隠せないので、興奮と動揺で混乱している部分もある。ダメンズに沼ってきた私はいつも「相手の外面的な部分に恋愛的に惚れているか、惚れた気になっているか」の2択だった。それが今回に関してはわからない。ただ、自分はダメンズ以外にちゃんと魅力を感じられるのだと安心した。ダメンズに沼っている時と違うのは、彼と一緒にいて不安にならないこと。この人に振り回されそうで怖い、都合のいい女にはなりたくない、きっと私のことなんか大事にされてない……そんな不安を抱かなくて済んでいるのだ。その不安が『恋』だと、ダメンズ沼り期は思っていた。今はわからない。ただ私は彼の何もかもを受け入れられるという気がする。今はとにかく、一生この人を尊敬して生きようと思った。そんな気持ちにさせてくれたことに対する喜びがあまりにも大きすぎる。『愛』なのかもしれない。いやそうなのかもしれない。

 キモすぎるな私。いや昨日、通話で似たようなことを相手に直接伝えたのだけれど、喋り倒しながら興奮で汗びっしょりだった。あなたのここが好きだ、素晴らしいと思う、を素直に伝えられる喜びを初めて知った。よくぞ相手に引かれなかったなと思う。通話終わったあとブロックされないかと心配だった。あとから恥ずかしさが込み上げてきてたまらなかった。でも今のところ相手は大丈夫みたいだ。その心の広さにさえ感激してしまうぞ。
 何故か、これからやっと安心して生きていけそうな気がする。心を預けた人を失う恐怖も、別のことで傷つくかもしれない恐怖も、いつか必ずやってくるであろう絶望に対する恐怖さえも忘れて生きられる気がする。失恋してから孤独だった一年、苦しみをぜんぶひとりで乗り越えてきた十八年、やっと心から求めていた存在と出会えた。しかもマッチングアプリで。もう一度言う、マッチングアプリで。
 ここまで書いておいて自分の熱量に自分で引く。読んだ人からは絶対「大袈裟だろ」と思われるかもしれないけど残念ながら大変気持ち悪いことに全部本当です。大袈裟だろって、別にいい。彼と出会えた喜びの大きさは自分でわかっていればいいし、彼に伝わっていれば十分だ。ああ、早朝とはいえ=深夜テンションなので読み返してまた後々死ぬと思います。

 最後に、出会いをくれた神さまへありがとう。そしてあなたにありがとう。薬が効いたので安心して眠れそうです(朝7時)。雨は止んでしまったけれども。

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