はしのした #34

 Twitterで惚気話をするのはなるべく控えるようにしている。フォロワーに嫌われないかな? って不安と、そういうのは隠した方がなんだかかっこいい気がするから。でも、我慢できなくてたまに彼氏関連のツイートをしてしまう。結果、結構惚気ける人みたいになってしまっている。これはいかん。求められているならば、惚気話してーなどと言われたならば、顔真っ赤にして3時間以上語り続けるけど。そんなわけにもいかないので、noteでひっそりと書く。『はしのした』の黒歴史化は止まらない。

 幸せでいることはいいことだ。とはいえ、私の過去の不幸をすべて合わせて比べてみたとしても、今の幸せはあまりにも大きすぎる。彼は、夢見がちな私が過去に妄想した“最大の愛情表現”をすべて超えてくるようなことをしてくるので、時々生きている心地がしなくなる。気持ち悪いな、何を書いているんだ。記念日の度に書く彼への手紙を公開している気分。
 手紙、そうだった。何かしらのイベントごとに、彼には何通か手紙を書いている。中身はお察し。彼は私の手紙を大事に大事にしてくれているが、私は彼からの手紙をもらったことはまだない。実はずっと待っているのだ。手紙というのは、どこがどうとは上手く言えないが、とにかくひときわ素晴らしくて特別なものだと思う。それを彼の手から受け取ってみたい。普段見ることのない彼の字の中に、彼の気持ちを然と感じたい。そうは思いつつも、手紙を書くなんて結構な気力を要するし、私は好きで書いているので、ちょうだいちょうだいとねだるのも違うよな、と割り切っているところがあった。
 昨夜の彼はかなり酔っていた。気持ちが爆発してしまったのかわからないが、急に「プロポーズの時に、最初で最後の手紙を一回だけ書いて渡すんだ。サプライズで」などと言い出した。びっくりした。私へのサプライズなんだろ……? 私いるんですが。
 「言わない方がよいのでは」と止めたが、彼は喋り続ける。幼稚園で母の日のサプライズイラストをかいた、というのを母に暴露してしまう子どもそのものだった。お母さんの気持ちを一足お先に味わってしまった。それでもわかったのは、どっちにしろ感動するということ。泣いた。「思ってることいっぱいあるんだ、でも、なんて書いたらいいかわかんないんだ」ここで私の涙腺が終わった。くそ。最初で最後ってなんだ。私は何回だって欲しいのに。ずっと待ってるのに。てめえ! ずるい。でも嬉しい。私がどんなにうまい文章で何通も何通も書いた手紙と、彼が一度だけ書いた手紙は、きっと違うように見えてすべて同じなんだ。同じくらいの価値がある。それが手紙ってもんなんだろか。そう考えるとやっぱり素晴らしいな。まだ貰ってないけれども。
 私が「結婚しよう」と言うと、彼はいつも「まあ、考えとく」みたいな感じでいかにも慎重っぽい返事をしていた。そこは冗談でもうんいいよ! とか言ってよ! ともどかしい気持ちにさせられてきた。しかし彼は昨夜、手紙のくだりの続きで、結婚指輪を調べていること、どの日に入籍するかを考えていることまで喋ってしまったのだ。これはずるいよな。なんだこの一枚上手野郎は。バーカ!
 シラフに戻った今、喋ってしまったからにはサプライズもすべて練り直すと彼は言っている。ということは、たくさん手紙をくれるようになるんだろうか。どっちにしたって泣くんだがな。私は忘れないよ。だからこうしてここに書いている。私のことを恥ずかしい奴だなとでも思っておいてください。クリスマスプレゼントのお徳用靴下とパンツセットは固定枠ね。また会いましょう、じゃあ。

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