はしのした #25

 ハイになるのは一時的だった。目が覚めれば体はぐったりと重いし、胸のあたりがずきずきと痛い。はっきりとした、感覚としての痛みではなく、締め付けられるような苦しさ。考えてはいけないことを考えてしまった。体が重い。ただでさえ血圧が低いのに、ベッドからは少しも動けそうにない。見たくないにも関わらず、スマホを開いた。やっぱり通知は一件も来ていなかった。一昨日までは、必ずなにかしらの言葉が耐えることなく送られていたはずなのに、今はもうそれを向けられることがない。そう思うと、生きていけなくなるような気がした。あったものが、突然にして消え去った。私があんなことをしたから、いや、そもそも私という人間がこうして存在しているから、こうなったのだろうか。あって、幸せだと心から感じていたものが、なくなる。与えられなくなる。結局私は、はっきりとその理由を知らない。知らないまま、こうでないか、ああでないかといろいろ考えて、泥沼に沈んでいく。「こうでしょう」と答え合わせをすることが、できなくなってしまった。私には君がわからない。前からも、そして今もわからないまま。
強がっていた。どうせなら君を打ち負かしてみたかった。でも、私は今君の反応をたしかめられない。会った時に平然としていられるのだろうか、君はどんな目で私を見るのか、まったく想像がつかない。怒っているのか。悲しんでいるのか。蔑むような目か、それともいつもと変わらない目か。どれにしたって辛い。私を見ないでくれと言うこともできない。君は何をしてもだめだ。何をしても私の心を苦しめるけれど、憎らしいことに君は悪いことをひとつもしていない。私がひとりで暴れて、傷つけて、ぼろぼろになっているだけだ。君はこれを知るだろうか、私を見ているか?
せめて、君の中にあったものは何だったのだと問いたい。 私が話していた、勘違いというものだったか。性的なものだけだったか。なんだって構わないから。それは仕方がない。君がどんな答えを持っていたとしても、それは悪いことではない。仕方がないから。この文章に憎しみが込められていると思うだろうか。憎しみではない、私は君を憎めない。
君の返事がくるまで、このまま横になっているつもりだ。その間に、私は君を忘れるという努力をできる限りしよう。恋を知らない君には、このつらさがわからないかもしれない。それが一番幸せだと思う。羨ましくて仕方がないよ。


 昨日の朝に書いたものです。これを書いていた時の体の重さ、感覚はしっかりと思い出せます。思い出したくないけど。今はただただ葛藤していて、文章を書くことでなんとか落ち着こうとしている感じ。私には文章があります。無駄になるかもしれない『引きずるだけの期間』を、文章を書くことで可能な限り短縮させようとしているのです。

ああ、体が重い。君が憎いんだ。君にかまって欲しいんだ。君がいとしくて仕方がないんだ。君はこの文章をきっと読めないだろう。読めないと思って、私はこれを書いている。君は私の文章を綺麗だと言ってくれた。君は、私に「君とは、綺麗な日本語で話していたいと思う」と言った。綺麗な日本語ってなんだよ。いちばん綺麗なのは、君自身だと私は思うよ。いつも変わらない表情で、仕草で、声色で。そのままの君で、君はたまにこわいことを言ったりする。意地悪をしたりする。取り乱した君を見てみたい。怒った君、悲しむ君、いまにも狂いそうな君が見てみたい。君のすべてはいつも変わらない。君がわからない。わからないまま、君は私の中から自分自身が消えるまで、待とうと言っているのだ。それまで、君は私をほったらかしにしている間、一体どんな気持ちでいるのか? 知りたくてたまらない。何も考えず、ほかの友達と連絡を取っている? Twitter、ゲームで時間を潰している? 一度合わさった君と私の生活時間が、また少しずつずれていっているよ。君が私に費やした時間が、ちょっとでも空白と化したことは、まだ一度もない?

君は何も語らない。私には何も知らせない。それは君が意図していながらの今だと思うし、なるべく早く私の中から君が消えることを祈っていることだろう。私だって早く消えて欲しいよ。さっさとどこかへ行ってしまえ、と思う。でも私は君と話すのが好きだ。恋愛感情抜きでも、私は君と話していて、今までで一番楽しい会話だと何度も思った。君は私を理解してくれた。また、あんなふうに話せるようになることを、願ってもいいですか。君もまた、それを願ってくれますか。
つらいのに頑張ったねって、褒めてくれますか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?