はしのした #何個め?

 足が痛い。つい一昨日、車に忘れ物をしたので走って取りに行ったんですけど、これがまったく走れないんです。特に右足の、腰から膝にかけての骨とか関節が。ずきずき痛む。数秒で走るのをやめちゃった。絶句した。え、この距離ですら走れないのかと。彼氏とお買い物に来ていて、私が忘れ物を取りに戻る間、彼はずっと待ってくれているという状況。なるべく長い時間彼と一緒にいたいので、走ってひとりの時間を短縮したかった。あと、私はまあまあ足がはやい自信があったし、ほんとに取りに行ってきた? と疑うくらい早く戻って、彼に驚いてほしかった。それだけなのに。走りたいのに! 走りたいのに。足が痛い。走れない。当たり前だけど、小走りに近い歩きじゃあまりにも遅くてもどかしい。時間の流れすらゆっくりに感じる。あー、この感覚、懐かしいな。
 小学生の頃、私は雲くらい軽い体で飛ぶように走れていた(気がする)。そんなときでも、走りたいけど走れない、を経験することが時々あった。夢の中でだ。私はよく何かに追いかけられる夢を見ていた。殺人鬼とか、怪物とか、親とか。夢の中では、きまって足が重たくてうまく走れなかった。そして追いつかれて、殺されるか何かして、目が覚めていた。私は逃げながら苛立っていた。現実だったらもっと早く走れるのに。こんなに足は重たくないのに! と。
 あの時の重い足が、今そのまま私のものになっている。本当にそのままなのだ。ぞっとするくらい。ちなみに、今何かに追いかけられる夢を見たとしても、飛行機くらい速いスピードで逃げられるようになった。びゅーんって。私が夢を見るのが上手くなったからなのか、わからないが、悪夢の中の怪物に捕まるということはなくなった。逃げ切った爽快感を持って目を覚ますことができた。これはいい気味だと思っている。夢の中で自分の成長を感じている。現実では何故か退化しているが。
 という感じで、不思議なことに夢と現実の足の重さが逆転している。しかし私は現実を生きているので、今この状況はかなり不便で悲しいのである。現実で怪物に捕まってしまったら、もう目を覚ましてリセットなんてできないし。整形外科に行こうかな。老いるにはまだ早いはずだから。


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