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穴の中のしまうま

家賃が……払えない……。キャッシング枠も使い切った。俺に残された選択肢は――。


俺は最後に残った百円玉を握り締め、競馬場内を探し回った。競馬好きのギャンブル狂たちには決して見つけられない、人の目の節穴に棲むという伝説の穴馬の王。穴馬の中の穴馬。調べはついている。三年に一度、この競馬場に必ず現れる。そしてそれが今日なのだ。そいつを見つけて賭ければ、俺の人生一発逆転サヨナラホームランだ。

『ワアアアアアアアアア!!!』

物凄い大歓声に競馬場が戦慄した。俺は急いで観客席に出た!

『一千万馬券だ!穴馬の王だ!!』

競馬ファンたちが騒いでいる。なんてこった……見つけられないわけだ。伝説の穴馬の王は、シマウマだった。見つけられるわけがなかったんだ……よこしまな考えの俺には。

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