ボツにしたけど読みたい奴は読んでくれ


ごめんなさい。

この言葉を見るといつもあの頃の風景が鮮明に頭に出てきやがる。


あれは2月の下旬だった。
職場の飲み会の後に話がある。
と言って後輩の女の子を少し離れたところに呼び出した。
告白して見事に降られたんだが、その時の降られた言葉が
「ごめんなさい。」だった。

今でもあの深く頭を下げられて断られたシーンは忘れられない。
きっと永遠に忘れられない思い出として俺を縛り付けると思う。

俺はその時、学校で仕事をしていた。
学校というと、ほとんどは小中高のどれか、もしは自動車学校だろう。

世の中には、一定期間学校に入校して生徒として働く仕事がある。
その学校を卒業して、任命された赴任地に行くのと、赴任地から学校に派遣されて、卒業後戻る。
という2種類ある。

俺は後者で、上司は口をそろえてその学校生活は楽しいと言っていたので楽しみにしていた。
そりゃ今まで分単位で縛られる生活をしていた連中が制約がそんな生活と無縁に近くなるなら楽しくないわけはない。

そして、期待を膨らませながら学校に向かった俺は、俺は初めて行く東京で見事に迷い、一人だけ遅刻した。

にしても、東京っていうのは異様に人が多いな。
あと、駅がでかい。


俺は16時の電車に乗ったんだが、あの時間帯に普通電車で満員になるなんて思ってもいなかった。
朝の7時にはもう満員電車が出来上がっていて、通勤ラッシュ時でも普通電車が満員になることはない大阪と比較しても衝撃を受けた。

そんな迷路を潜り抜け、俺は学校についた。
そこで、俺の人生最後の学生生活が始まった。

学校に入るなりいきなり

ツーツートッツー

という声がきこえた。
こいつら、宇宙人とコンタクトとってるのか。

これはモールス信号だろうが、校庭で輪になってこんなこと大声で言ってたら普通なら頭がおかしい集団に思える。

自分の部屋に行ったら、身長185cmのでかい目が青い男が立っていた。
そいつはルークといった。
ルークはアメリカ人のハーフで、親父が米軍のお偉いさんらしい。
とはいっても、まったくと言っていいほど英語を喋れないらしく、あの顔で青森の方言を喋るからいろいろとぎゃぷがある

そして、一緒に勉強する人と顔を合わせてその日は終わった。
男20人くらいに対して女3人だったので、今までいろいろ制限されてきた男がその3人を気にしないわけがない。
というわけでもなく、意外と妻子持ちや彼女持ちが多かった。

その3人の女性の中に、葵という女がいた。
ルークが仕事が終わって部屋に戻った時に「葵ちゃんに連絡しないんですか。」
と言ってきたんだ。

高校時代、俺が女の子に少ししゃべるだけでそいつのことが好きという風に言われてただめんどくさかった記憶がある。
それは年を少し重ねた後も変わらなくて、1日に一回hあ葵ちゃんにアタックしないんですか。

も言われた。
正直めんどくさかった。
どんな内容かは忘れたが、とりあえず葵に連絡をした。

葵は高校卒業後、少しバイトをしてその後ここに来たらしい。

立場は俺が上司になるので、初対面に等しい俺に向かってタメ語を使ってきたのでちょっとイラっとした。
相手は高校を卒業して間もなかったクソガキだしそう思ってイライラしたのを落ち着けた。

盛り上がる話ができたわけでもなく、その日は終わった。


日にちがたつにつれて、周りも葵にアタックしないのか。
とはやし立てる連中が増えた。

その時は全く興味なかったしなんで俺があいつを好きなことにされているのかもわからず適当にあしらっていた。

いつからか、葵のその一重だったまぶたが二重になっていて、それをきっかけに目が合うとなんだか避けられるような気がした。

俺が少ししゃべりかけると遠くに行ったり普段あんなしゃべるのにやたらと口数が減ったり。
そのくせお互い遠くにいるとやたらと視線が合ったり。

高校の時も俺が少しでもしゃべりかけると発狂する女がいた。
「襲わんといてください。」
訳が分からないと思うが、何もしてないのにこれマジで言われたんだよ。
ちょっとしゃべりかけると助けを求めるような甲高い声で「もういやや。」とかいわれたら、普通なら嫌われてるって思うだろ。


なのに、卒業直前でそいつの友達経由で俺のことを好き。と言われて本当に訳が分からなかった。
本人がその友達の近くにいたので、なんかの冷やかしかと思って気にもしなかった。
そのあと何かあったわけでもねえけど、あの時行動を起こせばなんかあったのかもしれない。


なんだかそれを思い出して、いろいろと気持ちがぐらぐらし始めたんだよな。

最初はただのクソガキみたいな後輩がどんどんかわいく見えて、気が付いたら惚れていた。
俺は意を決して、葵を呼び出した。

場所は職場の飲み会が終わった後で、みんながいないところに来てくれといった。
まぁ、その現場一部の先輩に見られてたんだけどな。


飲み会も終わり、ほとんどの奴が店から出て行ったときに
「寝かせねえよ。」とか葵にしゃべりかけている野郎がいて、俺は嫌な予感しかしなかった。
ただ、相手を呼び出した以上伝えないといけない。
OKをもらえるか、ほかに男がいるのか。

葵を呼び出した後、心臓の音が俺の耳にうるさくなり続けた。

あとはただ寮に帰るだけなのに、まぶたの上を銀色に塗って俺の元に来てくれた。
行けるのか。ふられるのか。

俺は吐き出す吐息とともに心臓まで口から出てきそうな思いで相手に思いを伝えた。

ごめんなさい。

相手の答えはNOだった。


試合とかで立った数メートルが永遠に届かない距離に感じたりするだろ。

降られた後の葵と俺の距離はまさにそれで、後でわかったんだがやはり葵はほかの男と付き合っていたらしく、赴任地も同じ場所になっていた。
俺は心底悔しかったがもうどうすることができずに、ただ虚しさだけが心の中にあった。


making good things better 

疲れ果てたあなた、私の幻を愛したの。



きっと俺が愛してたのは幻だったんだろう。

chao


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