百年の13年 その2

「場所」をつくる、じゃあそこで何をすればいいのか?
なんでもよかった。飲食でもよかった。けど、本屋しかぼくは知らなかった。

本屋をやるにはどうすればいいんだろう。そこからだった。このときは自分が古本屋をやるなんて考えてなかった。本屋といえば新刊書店しか知らなかった。ということで調べた。
利益率20%。これはどの業界と比べてもかなり低かった。この利益率で商売するには回転率を上げるしかない。となると駅近、家賃高い、初期投資が高すぎる、などマイナスな要因しか思い浮かばなかった。
そこではじめて古本屋という選択肢がでてきた。
やはり調べた。これならやれるかもしれない。

が、何からすればいいのか皆目見当もつかなかった。

古本屋との縁はほとんどなく、働いていた渋谷の本屋の近くにフライング・ブックスさんがあったので仕事帰りに立ち寄ったり、西荻窪の音羽館さんと吉祥寺の藤井書店さんにときどきお邪魔していたくらいだった。
じゃあ、どんな古本屋があるのか足を運んでみることにした。
忘れてしまったが、古本屋特集の雑誌か本を買いそこに掲載されている古本屋に行った。
いいところとわるいところをできるだけみつけようと思った。
どちらかといえばわるいところのほうが多く気づいた(すいません!)。
じゃあ、ぼくがやる本屋ではそのわるいところをなくせばいい、簡単じゃないか、と思った。ぼんやりとだがイメージができてきた。

次は具体的な場所探し、物件探しだ。
いまでもよく聞かれるのだけど、どうして吉祥寺だったんですか?、と。
なにか物語を期待して聞かれているのはわかるのだけど答えは、たまたま。

古本屋の業務形態にはざっくりと店舗販売と通信販売専門に分けられる。
ぼくは本屋と読者と著者をつなぐ具体的な場所をやろうと決めていたのでリアルな店舗販売と決めていた。
なおかつ、店売りだけで生活しようと思っていた。
よくつぶれないなこの古本屋、というのがよくある(失礼!)。けれどそれはそれなりに理由がある。古本屋には外売りというのがある。デパートや古書会館などの催事場で販売することで売り上げをたてる。その営業しているかわからないようなお店ではその外売りを主軸としている可能性が高い。
ただ、ぼくには外売りのやり方がわからないし、つながりもなかった。なによりいろんな古本屋を巡るなかで欠けているのは、毎日来たくなるような場所だった。そのためには店に集中したほうがいいと思っていた。
いまはそれなりにつながりはできたし、やる意味も見いだせたので年に1、2回はやるが積極的にはしていない。

店だけで生活するならそれなりに人通りがあって家賃的には10-15坪くらいの場所で探した。どこと限らずいろんな駅に降りて歩いて探した。自由が丘や高円寺、学芸大など、もちろん吉祥寺でも探した。だが、なかなか予算と折り合いのつく場所が見つからなかった。
当時、三鷹に住んでいて自転車で吉祥寺によく来てぷらぷらしていた。なんでかわからないけど、いまの百年の場所を見上げたら窓に貸し出しの張り紙が貼ってあった。前回来たときはなかったのか気づかなかった。すぐに不動産屋に電話をした。即決。

ぼくが育ったのが練馬区の大泉だったので、吉祥寺は子供のころからよく来ていた。大学生になってからはほぼ住んでいたと言っていいくらい来ていた。だから、結果的に吉祥寺でみつかってよかった。どんな人がいて、どんな時間帯に人がどれくらいいるのか、どんなお店があるのか、を知っていた。いまならわかるけど、知らない街で商売をするのは不利だと。

ここから開店に向けて一気に動き出した。

まだ続く。

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