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千年オリーブテラス・インタビュー 土庄町森林組合 椎木 拓さんインタビュー

オリーブで心とからだをととのえるウェルネスガーデン「千年オリーブテラス for your wellness」。コミュニケーションラウンジ「The GATE LOUNGE」は、スタッフが自分たちで材料となるヒノキを調達し、乾燥や加工などを担当しました。「The GATE LOUNGE」で使用したヒノキは小豆島の土庄町森林組合が管理する大部(おおべ)財産区の森林から産出されたものです。千年オリーブテラスに使われた木がどんなところでどんな風に育てられたのか。小豆島の森林や環境についても知りたくて、編集部は千年オリーブテラスで新しく使われる建築資材を伐採中の、土庄町森林組合が管理するもうひとつの森林、大鐸(おおぬで)財産区へ。SGEC(一般社団法人 緑の循環認証会議)の森林認証を受けている大鐸財産区の木々は、東京2020オリンピックのメイン会場になった国立競技場にも使用されています。土庄町森林組合の椎木 拓さんにお話を伺いました。

土庄町森林組合の皆さん。右端が椎木さん 写真:野村充史

小豆島の木で多いのはウバメガシ。人工林で多いのはヒノキ。
日本の森林面積は約7割と言われています。小豆島の森林面積も同じく7割ぐらいです。小豆島の風景を思い浮かべた時、海をイメージする人は多いと思いますが、小豆島は山や森の風景も美しい島です。小豆島の木の種類を教えてほしいと言われたら、答えはウバメガシという常緑広葉樹になります。小豆島に向かうフェリーなど遠くから島を見ると深緑に見えると思いますが、それがウバメガシです。小豆島では「バベ」と呼んでいます。ウバメガシは備長炭の材料になる木です。山林に入ると炭焼き跡が残っているので、昔は炭焼きなどが島でも行われていたのかもしれませんね。岡山の備前焼の窯に薪を卸していたという歴史もあります。小豆島全体ではウバメガシですが、人工林で多い種類はと質問されると答えも変わってきます。人工林で多いのはヒノキです。7割がヒノキ。スギのほか、マツもあります。ただ、マツは今では流通量が少ないので手をつけていません。昔は薪やパルプとして活用されていたこともあります。土庄町森林組合として管理しているのはヒノキが主流です。

SGEC(一般社団法人 緑の循環認証会議)の森林認証を受けている「大鐸(おおぬで)財産区」の森林
写真:野村充史

人の手が入ることで、いい森に育ち、環境も守られる。
土庄町森林組合は、島内の「大鐸(おおぬで)財産区」「大部(おおべ)財産区」の森林を管理しています。森林組合は森林を所有する山主から委託され、森林の維持管理、森林経営などを行い、協同して林業の発展をめざす団体です。
土庄町森林組合が管理する2つの財産区から出荷しているのは、間伐材です。間伐というのは、木々の成長を見ながら一部を伐採して、過密になっているところを調整する作業。間伐を行うと木と木の間に空間ができるので、日光がよく当たるようになり、木がより太く成長するようになります。間伐をしないと、山は荒れます。日光が入らないので、暗くじめじめした森になる。間伐によって地面に日光が届くと、シダや苔などの下草、ツバキなどの低木が育ち、土も育ちます。そういう森は、いい森になります。木が成長すると根も成長するので、土砂崩れなどの災害も起こりにくくなる。地力が弱まると根が張らなくなりますから。木を切ることで環境を破壊していると思う人もいるかもしれませんが、手入れをしなければ、山崩れが起こったり、水源かん養機能が低下したりすることもあります。人の手が入ることで、環境も守られています。

木の状態を一本一本確認しながら人の手で間伐する定性間伐 写真:野村充史

若い頃は隣の木々と競争させながら、太く大きく伸ばし、
10年15年育ったら間伐する。
間伐は成長が遅い木を間引くこともありますが、いい木を間引くこともあります。間伐を繰り返すと太さが均一化します。間伐しないと何十年立っても細い、もやし木が育つ。ヒノキやスギは若い時は密植をして、ぐいぐい競争させながら伸ばし、10年15年育ったら、間伐します。ここの主流は1ヘクタールに4000本。1〜2メートル幅ぐらいで植えていきます。すべてが育つと満員電車のようにギュウギュウになるので、間引きして日の光を林の中に入れます。初めから間隔をあけて植えればいいのではと思うかもしれませんが、若い頃は隣の木々と競争させながら、太く大きく伸ばすことが必要なんです。
どの木を間引くかは10人いたら、10人違います。約10m四方の100平米の中に20本植えられている木の中から3〜5本選んでほしいと言ったら、10人いれば10人違う。決まりはないので、誰の選択が正解ということもなければ、誰が選んだものが間違いということもない。言うなれば、職人一人ひとりのセンスの違いですね。最近は間伐を機械化しているところもありますが、土庄町森林組合では、木の状態を一本一本確認しながら人の手で間伐する定性間伐を行なっています。

写真・野村充史

今、私たちが切っているのは先人たちが50年前に植えた木。利用し消費してもらい、新しい木を植える。循環することで森をつなげていくことができる。
間伐によって木々が元気に育ち、価値の高い木材を生産すると同時に、間伐した木を販売することで収入を確保する。経営という面からも間伐は大切な作業です。建築材として使われることが多いので、太く大きく育ったからいいということはなく、建築材として使いやすい木があります。末口(木材を切り出した際の細い方の切り口の直径)18センチ前後の木は4寸角の柱が取りやすいので、需要があります。そのサイズまで育てるには苗木から約50年。今、私たちが切っているのは先人たちが50年前に植えた木です。50年後に小豆島の木を使ってもらうには、今、苗木を植えなければなりません。間伐材をはじめ、私たちが管理している木を建築材など様々な形で利用し消費してもらえば、新しい苗木を植えることができる。その苗木が大きく育ち、やがて未来に使える木に成長する。この循環がうまくいけば次の世代に森をつなげていくことができると思います。
これまでにも土庄町の新庁舎や、土庄小学校、土庄中学校などに私たちが管理している木が使われてきました。しかし、島内には木材を乾燥させる場所がないので、島外の乾燥場で乾燥処理を行わなければなりませんでした。今回、「千年オリーブテラス」に使用する木材を、オリーブ栽培で使用するビニールハウスで、しかも自分たちの手で乾燥させると聞いた時は無理だと思いました。いや無理というより労力がいるだろうと思いました。人件費に換算したら結構な金額になる。大変ですよとお話しました。小豆島ヘルシーランドさんはたくさん社員もいますからできたとしても、時間もコストもかかる作業です。乾燥だけではなく、丸太の皮を剥ぐ作業もされたんですよね。普通は機械でかつらむきのようにくるくるときれいに早くできますが、手作業では大変だったでしょう。誰もができることではないと思いますが、島内で伐採した丸太を製材し、乾燥させ、建築材に加工するまでのすべての工程が島内で完結すれば、島の木を使ってもらう機会も増えるかもしれません。

土庄町森林組合
小豆郡土庄町淵崎甲1400-2
土庄町役場 西館2F
Tel:0879-62-8280