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この森でしか見ることができない風景と、この森でしか過ごすことができない時間。

2023年秋、オリーブで心とからだをととのえるウェルネスガーデン「千年オリーブテラス for your wellness」が、小豆島・樹齢千年のオリーブの木が見守る小高い丘にグランドオープンします。

なぜ小豆島に、樹齢千年のオリーブの木と、小豆島で育ったオリーブたちが響き合う場所ができたのか。訪れる人たちに、オリーブと寄り添い生きる幸せを教えてくれる場所になったのか。そこには、自分たちの手でオリーブを育て、実はもちろん、葉や枝、樹皮などオリーブをまるごといかした化粧品などの研究開発、製造、販売を行なっている「オリーブ兄弟」の想いがありました。
※『せとうちスタイル』Vol.15(2023年4月発行・株式会社瀬戸内人)の記事を再編集してお届けします。

オリーブ兄弟こと、兄の柳生敏宏さん(右)と弟の柳生忠勝さん 写真:宮脇慎太郎

 「島に根づいてくれるだろうか、はじめはとても心配しました。毎日樹齢千年のオリーブ大樹の元を訪れては、幹に触れ、枝を見上げ。一日に何度もに会いに行ったこともあります」。大樹が瀬戸内海を見下ろす場所にやってきた当時のことを思い出しながら話してくれたのは、オリーブ兄弟の兄こと、柳生敏宏さん。自分たちの手でオリーブを育て、実はもちろん、葉や枝、樹皮などオリーブをまるごといかした化粧品などの研究開発、製造、販売を行う小豆島ヘルシーランド株式会社の代表取締役社長として、ずっと大樹のことを見守ってきました。「通い続けてどれぐらい経った頃だったか。大樹の枝に小さな緑色の芽を見つけたんです。うれしかったですね」。敏宏さんが生命の樹とも呼ばれるオリーブの、力強くしなやかな生命力を実感した瞬間でした。

小豆島ヘルシーランドの創業は1985年。敏宏さんは2006年に創業者のお父さんの跡を継ぎ、28歳で社長に就任。オリーヴ兄弟の弟、忠勝さんが東京から戻り、副社長に就任したのは、その1年後。以来、経営やオリーブについてはもちろん、瀬戸内や小豆島の未来について、ふたりで取り組んできました。
4人兄弟の次男と三男。2つ違いの兄弟は子どものときから仲がよかったと言います。「いまオリーブの搾油所になっている場所は、昔は原っぱで、ロケット花火を打ち込んではよく怒られました。弟は要領がよくてね。上手に隠れていました」と、笑いながら敏宏さん。一方、忠勝さんは兄のそばにいれば大丈夫だと、子どもの頃からずっと思ってきたと言います。「家の前が海なんですよ。あるとき、泳いでいたら、私のそばにクラゲがきた。驚いて逃げようとしたら、兄が私をかばってクラゲに刺されたんです。信頼できるというか。弟が言うのもなんですが、正義感にあふれているんですよね」。忠勝さんは弟として、また副社長として、社長である兄を一生支えると決めているそうです。「クラゲの恩というわけではないですけどね」

大樹を植樹したとき、オリーブ兄弟には思い描くある風景があったと言います。オリーブ大樹のまわりに、一本、また一本とオリーヴの木が増えて、大きく育ち、やがて丘全体がひとつの森になる。その森では人びとが笑顔で語り合い、木陰で本を読み、楽器を奏でている。秋、豊かな恵みに感謝し、人びとは収穫の喜びにあふれる。「15年以上前の話になりますが、オリーブ栽培を見直そうと、イタリアを旅したことがありました。そこで目にしたのは、樹齢数百年のオリーブの木が樹海のように広がる風景。そばにはたわわに実ったオリーブを収穫する人たち。その姿にとても感動しました。偶然ですがそこに虹が差したんです。この美しい風景があるのは、何百年も前に木を植えた人がいるからです。そのオリーブの恵みをわかち合いながら、何世代にもわたって同じ土地で人びとが暮らし続けている。そのとき、小豆島に300年続くオリーブの森をつくろうと決めました」。

そして、いま。ふたりは、オリーヴ大樹を中心にしたオリーブの森の、この森でしか見ることができない風景と、この森でしか過ごすことができない時間をもっと多くの人とわかち合うために、オリーブとともに生きる幸せを実感する場所、その実現に向けて歩みはじめています。それが、オリーブで心と体をととのえるウェルネスガーデン「千年オリーブテラス for your wellness」です。「健康になってもらいたい。生命力を取り戻してほしい」との想いが込められた「千年オリーブテラス for your wellness」。コミュニケーションラウンジ「The GATE LOUNGE」と、瀬戸内の穏やかな海を一望できるスモールヴィラ「The STAY」、メディテーションルームを備えたオリーブリトリートスパ「The SPA」などの施設が、オリーブとともに人々を迎えてくれます。

コミュニケーションラウンジ「The GATE LOUNGE」 写真:宮脇慎太郎

「千年オリーブテラス for your wellness」の建設にあたり、敏宏さんが考えていたことがあります。それは、「森を切り開く開発ではなく、島の恵みを使い、循環させる形でつくりたい」ということ。その想いを実行したのが、ひと足早く7月14日にオープンしたコミュニティラウンジ「The GATE LOUNGE」。材料となるヒノキを島の中で調達。製材から加工、組み立てまで自分たちで行いました。
「離島である小豆島で木造建築を建てる場合、島外から木材を調達するので建設費が高くなります。CO2排出量や輸送エネルギーもかかる。島に森林資源はあるけれど、乾燥させる施設がないので島外の施設へ搬出するしかなく費用もかかる。結果的に輸入建材に頼らざるを得ない状況がありました」。忠勝さんが教えてくれました。
だから、兄弟で変えようと思ったそうです。オリーブとともに生きる幸せを実感する場所をつくるのだから、人も島も地球も幸せだと感じる方法を選ぼう。少しでも違うと思ったら、正しいと思う方を選ぶ。なければ自分たちで見つけよう。そして出会ったのが「建築の民主化」を掲げるVUILD株式会社の秋吉浩気さんでした。

秋吉さんをパートナーに、小豆島の森林から切り出した丸太のヒノキを自分たちで運搬し、樹皮をはぎ、島内に乾燥場がないという問題は、オリーブ栽培で使用しているビニールハウスを代替え利用することで解決しました。また、乾燥した木材は3D木材加工機「ShopBot」で製材。建材も自分たちでつくりだしました。言わば、地産地消の建築です。島の間伐材を使うことは島の森林を守ることにもつながります。ちなみに基礎となる土台には小豆島の石材が使われています。

コミュニティラウンジ「The GATE LOUNGE」 写真:宮脇慎太郎

コミュニティラウンジ「The GATE LOUNGE」では、オーディオガイド付きマインドフルネス体験(マインドフルネスイーティングやプランツメディテーションなど)や、希少な小豆島産食用オリーブオイル(ロサンゼルス国際エキストラバージンオリーブオイル品評会金賞受賞)と小豆島産美容オリーブオイルを体感するオリーブオイル講座なども開催(事前予約制・別途有料)。夜は「The STAY」に宿泊の方のナイトラウンジとして開放されます。