Polygon Edge基盤のPolygon Supernetsを発表、1億ドル(約120億円)のエコシステム・ファンドを設立
本記事は、Polygonが2022年04月22日に作成した、「Introducing Polygon Supernets, Powered by Polygon Edge; $100M Ecosystem Fund」の日本語翻訳です。
私たちは、2021年5月にPolygon Edgeを発表しました。マルチチェーンEthereumへのゲートウェイとなることをビジョンに掲げ、プロダクト開発を推進してきました。
Polygon Edgeとは、カスタマイズ可能なブロックチェーンのスタックで、ユーザーニーズに特化した専用のブロックチェーンネットワークを開発し、立ち上げることが可能です。
独立したサイドチェーンや、企業向けEVM(Ethereum Virtual Machine)チェーン、本格的なレイヤー2ソリューションまで、さまざまなスケーリングやインフラソリューションをサポートするために設計されたモジュール式のフレームワークです。
パブリックネットワークを利用する開発者にとって、スケーリングと処理能力の向上は最大の課題となっています。
PolygonEdgeが提供するソリューションにより、トランザクションの負荷が非常に高い場合でも、高速かつスムーズなスケーリングが可能になります。
そのため、数百万人のアクティブユーザーを持つアプリケーション開発を行うことや、1日あたり数千万件のトランザクション処理を行うことが可能になります。
共有から専用のWeb3 "ホスティング" へ
Polygon Edgeのポテンシャルを理解するためには、専用のホスティングによってWebアプリケーションのパフォーマンスが、どのように改善されたかを知る必要があります。
10年以上前は、共有ホスティングサービスを利用することが、新しいWebアプリケーションを公開する際の最も簡単な方法でした。
その結果、共有サーバー上でホストされている他のアプリケーションによる想定外の需要増加よって、自社のアプリケーションのパフォーマンスに影響を受けてしまうことがあり、予測ができませんでした。
その後、手頃な価格で利用できる専用サーバーやクラウドソリューションの登場によって、アプリケーションは同じレベルのセキュリティを備えた独自のサーバーを持つことが可能になり、他のアプリケーションの影響を受けたり依存せず、簡単に規模を拡大したり安定したパフォーマンスを発揮できるようになりました。
これと同様に、Polygon Edgeにより、セキュリティやパフォーマンスを犠牲にせず、Web3アプリケーションをブロックチェーンネットワーク上に簡単に展開できるようになりました。
Polygon EdgeではEVMへのサポートが組み込まれているため、Solidityのスマートコントラクトを変更せず簡単にPolygon Edgeのネットワーク上で展開できます。また、Ethereum開発者ならPolygon EdgeでTruffle suite、Hardhat、MetaMask、Remix、ブロックエクスプローラなどのツールを使い開発をすることができます。
前述の通り、Polygon Edgeはモジュール方式で構成されており、さまざまな設定が可能です。
私たちは、一般的になっているモジュール式のブロックチェーン設計アプローチに従って、画一的なクライアントアーキテクチャの代わりに、スタックの重要なレイヤー(実行環境、コンセンサス、データ可用性、ネットワークなど)ごとに個別のモジュールを導入しています。
このような「ブロックチェーンレゴ」により、パフォーマンスや設定の観点から大きなメリットがもたらされ、さらには専用のEdgeネットワークの開発がより簡単になります。
Polygon Edgeインフラストラクチャーツールにより、ユーザーは設定ファイルに数行のコードを記述するだけで、専用のEdgeチェーンの設定を完了し、起動できます。
このサービスを利用しなかった場合、プロジェクトはEthereumのメインネットノードをフォークし、ビジネスニーズに合わせて修正を加えるために、数ヶ月の開発を有します。
また、Polygonが提供している細かく段階を追ったドキュメントとサポートチームにより、プロジェクト全体をよりスムーズに進めることができます。
本稿執筆時点で、20以上のWeb3アプリケーションと企業がPolygon Edgeを使用しており、以下のことを実現しています。
・高いパフォーマンス
・利用機会に応じた一定かつ、予測可能な処理
・ブロックチェーンネットワークの自由度の高い設定によるカスタマイズ性
私たちは、Polygon Edgeのこれまでの成功を誇りに思うとともに、その可能性はもっと大きいと信じています。
現在の課題
上記で説明したように、Polygon Edgeでは、他の製品に比べてブロックチェーンネットワークの開発が容易になっています。とはいえ、Polygon Edgeを利用しているプロジェクトが直面している共通の課題も確認できました。
・分散型かつ信頼性の高いバリデータセットを、適切に設計された調整メカニズムを用いて立ち上げることの複雑さ
この課題は、ネットワークのセキュリティに大きな影響を与える可能性があるため、喫緊に取り組む必要があります。さらに、アプリケーション・チームが実際の製品と目標に集中できず、多くの場合は、この複雑さに能力を消費してしまいます。
・ブロックチェーンネットワークの技術的な複雑さと、それに関連するセキュリティ上の課題および懸念
Polygon Edgeは、すぐに使えるブロックチェーンネットワークを提供していますが、その運用、保守、アップグレードは簡単な作業ではなく、攻撃経路や懸念事項が生じます。
残念ながら、アプリケーションの開発者は、課題に対処する立場にない可能性があり、暗号通貨の産業ではすでに、専用ネットワーク上で複数の重大な悪用が発生しています。
最悪の場合が起きなくとも、これらの課題により、アプリケーション・チームは、本来ならコア製品や目標に費やすことができるはずの能力を消費してしまいます。
・プロトコルレベルのトークン設計の複雑さ
Polygon Edgeベースのプロジェクトが Proof of Stakeを介し、ネットワークを保護するためにネイティブトークンを使用したい場合、Proof of Stakeの実装が安全で、持続可能かつ信頼できるものにするために、トークン報酬やインフレなど様々な複雑さや緻密さに直面します。
このせいで、プロジェクトの創設者は、1)アプリケーションのインセンティブと普及を念頭に置いたトークンの設計に集中できなくなり、2)本来ならアプリケーションやプロジェクト自体の開発と採用に使用できたはずのトークン供給の大部分を消費してしまう、ということがよくあります。
・異なるアーキテクチャの選択・切り替えの複雑さ
Polygonは、複数のスケーリングとインフラストラクチャーソリューションをサポートする独立的なマルチチェーンプラットフォームであり、Polygon Edgeも同様です。
Edgeを利用するプロジェクトは、主要チェーン(Proof of AuthorityまたはProof of Stakeベース)、レイヤー2ソリューション(オンチェーンまたはオフチェーンデータ利用可能)など、複数の異なるソリューションやチェーン構成の中から選択できるようにする必要があります。しかし、最適なソリューションを選択し、別のソリューションにアップグレードすることは困難です。
開発者が望むものを開発できるようにすることは、常にPolygonの使命です。上記の課題を解決するために、Polygonのコアチームは、Polygon Edgeの成功をもとに、Polygon Supernetsを設計しました。
Polygon Supernetsの紹介
私たちは、SupernetsはPolygon Edgeネットワークを強化したものだと考えています。Supernetsは、前述の課題を軽減し、Polygonとブロックチェーン技術全般の普及を可能にすることを目的とした、いくつかの重要な特徴を持つブロックチェーンネットワークです。以下は、それらの特徴の中でも最も重要な特徴を説明します。
・特化型
Supernetは、特定のアプリケーション、プロジェクト、またはユースケースを稼働できるように設計されています。この「Web3専用ホスティング」の利点は、すでに述べたとおりです。
・PolygonのMATICによるセキュリティ
セキュリティメカニズムとしてProof of Stakeを使用したいEdgeユーザーのために、私たちはMATICをステークしたバリデータ市場という形で「共有セキュリティ」レイヤーを導入しています。
このサービスを利用したいプロジェクトは、分散化された信頼性の高いProof of Stakeバリデータセットに即座にアクセスでき、バリデータ・ネットワークの立ち上げに伴う煩雑さを回避できます。
さらに、PolygonのバリデータはMATICをステーキングし、MATICで報酬を受け取るため、バリデータのインセンティブと持続可能性に関して、アプリケーションやプロジェクトチームによる準備や対応は必要ありません。
このサービスにより、プロジェクトはProof of Stakeセキュリティのすべての利点を享受しながら、そのために処理能力やリソースを浪費することなく、コア製品や目標に完全に集中できるようになります。
このサービスは必須ではありませんが、その利点を考えると、一般的に普及するサービスになることが予想されます。このサービスの詳細については、今後数週間のうちにお知らせする予定です。
・Supernets同士やEthereumと連携が可能
すべてのSupernetは、他のSupernetやEthereumのメインネットと価値や情報を交換できます。そして近い将来、Edgeが提供するさまざまなブリッジの実装と統合を経て、実現される予定です。長期的には、すべてのPolygonネットワークや他のEthereumエコシステムのネットワークを接続するクロスチェーン通信プロトコルを設計・確立するための、より広範で正式な取り組みを開始することを検討しています。
・Supernetsは、認定されたEdgeパートナーによって管理されます
前述の通り、ブロックチェーンネットワークの立ち上げ、運用、保守、アップグレードなどの些細な作業ではなく、アプリケーション開発者はそれらを適切に実行するための専門知識や処理能力を持ち合わせていないことが多いのが現状です。
この課題を軽減するために、私たちはEdge Certified Partnersを導入しています。Edge Certified Partnersとは、業務の一部、または全部を支援もしくは、完全に引き継ぎことにより、アプリケーションやプロジェクトチームが自分たちの知識と得意分野に集中することを可能にする、認定された開発会社やチームです。
・スーパーネットではあらゆるスケーリングアーキテクチャを利用できます
以上を踏まえて重要なことは、前述の「ブロックチェーン・レゴ」すなわちPolygon Edgeが提供するアーキテクチャのオプションはすべて、Supernetsを通じて引き続き利用可能であるということです。
Supernetsの導入は、それらすべての開発と運用をより簡単にしています。次の表は、Polygonのマルチチェーンエコシステム普及で想定される4つの典型的なタイプのSupernetsです。
さらに、Supernetでは、いつでもアーキテクチャを変更できます。
例えば、主権を持つProof of AuthorityネットワークとしてスタートしたSupernetが、その後Proof of Stakeに移行し、最終的に本格的なLayer 2に移行することもできます。Polygon Edgeは、すでにProof of AuthorityからProof of Stakeへのアップグレードを提供しており、Layer2ソリューションについても同様のサービスを提供する予定です。
1億ドルの採用資金
Polygon の目標は、Web3を一般に普及させることです。 Supernetsのコンセプトは、この目標を達成するための大きな一歩だと考えており、とても期待しています。Polygonはすでに、大規模でスケーラブルなマルチチェーンシステムとして、開発されており、以下のような構成になっています。
・マルチパブリックネット(Polygon PoSや今後登場するPolygon Hermezなどのパブリックネットワーク)
・すべてのパブリックネットとSupernetsが簡単に接続し、価値や情報を交換できるようになるかもしれない
このビジョンを実現するために、PolygonはSupernetsの開発と普及のために1億ドルを出資します。この資金はすぐに利用可能で、下記の用途で使用できます。
・開発契約および助成金
・研究契約と助成金
・サードパーティとの統合とパートナーシップ
・プロジェクトの受け入れと環境移転
・流動性の確保
・買収
Polygon 共同創業者ミハイロ・ビェリッチコメント
「Web3が一般的に普及するためには、ブロックチェーン開発の複雑さを抽象化し、同時に拡張性とパーソナライズ性を提供することが重要です。Polygon Supernetsにより、これらすべてが提供されます。そしてあらゆるプロジェクトのブロックチェーン利用と拡大を迅速に実現され、プロジェクトが成長するPolygonのマルチチェーンエコシステムに参加できるようになります。」
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