ビニールのからだ

 先生が指を鳴らすと、私はビニール袋になっていた。網戸から吹き込んだ風に揺られて、私は教室の中を海月のように揺蕩っていた。長い間空気の底だと信じていた場所が、どうやら海底だったことに気づくと、急にあくびが止まらなくなってしまった。私の中の空気が空っぽになる前に、急いで窓の外へ飛び出した。教室の外はオレンジ色に包まれて、人工ホタルが飛び交う中、人々は踊り狂っていた。娘たちの肌は金色に縁取られ、くるくると回るたびに放つ芳香が、私の白い肌をくすぐる。空は青ざめており、寂しげに狂乱を見下ろしている。その時、7つの針をもつ時計が、すべての針をもって658の数字を指した。目を凝らしてよく見てみると、針は女物のブーツを捻り潰したものだった。全身を貫くような鐘の音が鳴り響き、「王様を決めよう」とでっぷり太った紳士が唾を飛ばしながら叫んだ。瞳の中の星を数えてすくい取り、空高く投げ飛ばし、その時に放たれる光の粒で天空から梯子を下ろしたものが王になれるらしい。冠は飴細工で、杖は首長竜の骨でできていた。あなたもどうですかと私を見上げるようにして紳士が叫んだが、なにぶんビニール袋の身ゆえ、私は聴衆に甘んじて白い肌がこすれあう音に身を任せていた。

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