蘇東坡も詠むような夜の日記


一昨日、夜1人でウィスキーをなめていたら、どうしても人と飲みたい欲が爆発した そこでなぜか一度もサシ飲みしたことがない友人の顔が浮かんで、その衝動のままにLINE   二つ返事でのってくれて、翌晩、片町に飲みに行くことに決まった


どうして今までいっしょに飲むに至らなかったのか 思えば不思議じゃないか 2人ともウィスキー好きだし、タバコも好きだし、コーヒーも好きだし 私たちの歳でこれらの嗜好品を好む人って確かに少ない 年齢的にも今の風潮的にも


1軒目、私のお目当ての韓国料理店 カウンター席が8つほどある やんちゃそうだけど愛想の良いお兄さんがハイボールを2杯作ってくれた 薄張りのスタイリッシュなグラスで出てきたハイボールはきらきらしてきれいだった 韓国料理店なのにチャミスルもマッコリも飲まない私たち 

お通しのナムル、ヤンニョムチキン、キンパ、チャンジャ、トッポギ 結局、2杯目も私たちはハイボールを頼んだ 


2軒目、韓国料理店の階下のアーティスティックなバー 同じくバーカウンターの周りに8つほど席がある 壁もカウンターも一面レッドリップの写真がテキスタイルのように埋め尽くされている なんとかっていうアーティストのインスタレーションらしい 鉄コン筋クリートのワンシーンを思い出してわくわくした

3杯目、私はラムトニック 友人はジンバック 

基本、1人で家飲みばかりしている私は趣向を凝らしたものを一切作らないがためにレパートリーが極端に少ない ウィスキーなり、ジンなり、蒸留酒をロックかハーフロックでしか飲まない

ライムの香りが爽やかでほのかに甘い 炭酸が細かくて上品な飲み口だった

バーテンダーのお兄さんがコンパクトのような蓋付きのアルミニウムの丸いケースを1つずつ出してきた 中にはカシューナッツ、ピスタチオ、ジャイアントコーン、ピーナッツ、ドライフルーツ 

軽めのカクテルとナッツは相性が良い

4杯目、私はバーのオリジナルカクテル 友人は日本酒

友人の日本酒はこのバーオリジナルのもののようだ マットな黒いボトルにはレッドリップの写真 私が頂いたカクテルもこの日本酒ベースのものだった 口に運ぶとジュレがのっていることに気づいた 透き通るシャンパンのジュレだった 赤いカシスのような色のカクテルはほんのり苦味がある カンパリが入っているのかも 

5杯目、私はバーボンをロックで 友人はウォッカベースのカクテル

友人はバーボンをよく飲むと言っていた スコッチとジャパニーズウィスキーに明確な違いはないが、アメリカンウィスキーは明らかに香りが違うものがある バーボンもその一つ トウモロコシの香りがなんだか少しワイルド 私の中でのイメージは完全に西部 ジャックダニエルはラベルがかっこいいよねという話で笑った


そのバーを出て、私は3軒目に行くことを提案した 楽しいので多少強引にでもまだ友人を家に帰すわけにはいかなかった 2人とも少し千鳥足になりながら次の店に向かって歩いた


3軒目、ディープすぎるバー ここは一度私がバイト先のマスターに連れてきてもらったバーだった ここの界隈はかなりディープなバーが軒を連ねている 2人とも酔いがまわっていたので怖いもの知らずになっていたのだと思う 尖った店構えと店名のそのバーにふらふらと入っていった バーカウンターの周りに5〜6席、背後に2〜3席のこれまたこじんまりとした薄暗いバー ジャッキーチェーンの映画が流れていた 雑然としていて味がある店だ

6杯目、私はジャックダニエルのロック 

このあたりから友人が何を飲んでいたかあまりはっきりとは覚えていない カクテルを頼んでいた気がする 友人はクールでどこか飄々とした雰囲気の人で、酔っていてもそれはあまり変わらないように見えた いっしょに飲んでいて心地よかった

飲むと暴れる人や声を荒げる人が私は苦手で、まずサシでは飲みたくないなと思う お酒に飲まれている感じで格好が悪い 飲み方を改めることをおすすめします

私はかなり飲むともうなんでも面白くなるのでグラスを持ってずっとにこにこしてケラケラ笑いがち すでに気持ちよくなっていて頭は回っていないのに会話すると言葉はすらすら出てくるのを感じる

バーを切り盛りしているのはラッパーのような格好をした40〜50代の男の人2人 恰幅の良い焼けた肌のお兄さんは楽しい人で、あといっぱいお菓子を出してくれた 柿の種とかポテトチップスとかハーベストとかえびせんとか ポップコーンに至っては2回くらい空いた皿に追加してくれた

7杯目、私はニッカのカフェジンのロック 友人はジャックダニエルだった気がする

私たちが居座ってる間に他の常連らしいお客さんたちはくるくると入れ替わり立ち替わりしていて終始にぎやかだった

個性的な髪型のお兄さんとやさしそうなお姉さん、麻雀とスケボーばっかりしてる(本人いわく)お兄さん、たこ焼きをくれたお姉さんたち

8杯目、私はニッカ ウィルキンソンのジンをロックで 友人は甘めカクテルだった気がする

席で喫煙できるお店だったので(大好き)、私も友人もお酒をなめ、マスターのお兄さんや常連のお客さんたちとおしゃべりしてはタバコを吸った お店にいる人たちはほぼみんな喫煙者だったのでそれも心地よかった 友人も私もばんばか吸って小さめの灰皿はすっかりいっぱいになっていた

2人ともタバコは好きだけど周りは嫌っている子が多いので人前では吸わない 人と飲むときもたいてい吸わないようにしているのでとても開放的な気分になった

お勘定をしたら2人で5000円だった 私たちが学生だからまけてくれたのかも 申し訳ないような気持ちもあったが素直にうれしかった 


店を出るともう開いている店はなかった 3時になっていた かなり酔っていたがさすがに少し驚いた そんなに経っていたとは

私たちはときどき満開の夜桜を見上げてよろめいたりしながら家路を歩いた 春の湿った涼しい風が火照った頬をなでた 月はおぼろで光がやわらかい 最高の気分

春宵一刻 直千金
花に清香有り 月に陰有り

からはじまる漢詩がある 私も詠むなら今日みたいな夜だ


友人へ

東京駅のハイボールバー行くとき誘ってください ハムカツ大好き 次は夏にオイスターバー行きましょう 岩牡蠣!

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