読書室の窓辺から (4)
こんにちは。富岡です。
こちらは、課題図書型読書会「対談読書室」の4回目「課題図書『プリズン・サークル』を語り合う (4)」の振り返り記事になります。
参加人数
・スピーカー :3名
・リスナー* :3名
*スピーカーによるディスカッション中は聴き手に徹し、読書会の全体の振り返り時に任意で発言可
読書室の風景
『プリズン・サークル』の課題範囲を読みながらの反響をご紹介していきます。
8 排除よりも包摂
映画のピクニックの場面。私は、映画を観て、ピクニックの映像に救われた気持ちになった。皆さんが楽しそうにしている。日常を送る社会人としての(元訓練生の)姿が描かれている。切れ目なく支援が続いていることにも安心した。前科があるとはいえ、訓練生には、「地域の隣人」としての親しみも感じた。
犯罪被害者の方々からすれば、自分の横に前科を持つ人がいるかも知れないという恐怖は拭いきれないであろうし、その被害経験を「ゆるす・ゆるさない」は個々の被害者が判断することで、私は何も言えない。が、地域にとけこもう、一歩を踏み出そうという出所者の人がいて、ポッと出の保護司ではなく、刑務所の中からの支援が続いている(自分の変化を知ってくれている人が支援に携わっていること)は、とても大切なことだと思った。
このピクニックの場面が、映画から削除されかかっていたということは衝撃的だった。
出所してからの「普通の生活」への支援。「頑張れ」と送り出すのではなく、シームレスな支援(度切れない支援)が必要。社会的に弱ければ弱いほど、社会的なネットワークの網が弱い(あるいはアクセスできない)状態になっている。どう、「落ちこぼれ」ではなく「同じ社会の構成員」としての意識を持って、社会的なネットワークの網に組み入れていくことが大切なのかなと思った。
138ページの毛利の話「どうでもいいような話ができる」。これができる関係性が大切だと思う。「どうでも良いような相談」でどうもいい話ができるからこそ、だんだんと深い話ができる。「「頑張れ!」(中略)刑務所の中でなにをしたら良いかわからない」という本文中の言葉からは、(支援者にとっても、訓練生にとっても)ロールモデルがひつようなのかなと思った。
154ページ:「現状は刑務所とのあいだに壁ができて~」。こういう状況を解決したいなと思って読書会に参加した。社会や世間も同じ関係。思想が相容れない人たちをシャットアウトする社会。ここにも壁ができている。お互いを人として尊重して、お互いの共通意識や問題意識を育んでいきたいという、自分の原点を思い出した。
9 助けを諦めさせる社会
助けを諦めさせるというと言葉がつよすぎる、「話を聞いてもらえない社会」というほうが個人的にはしっくりくる。小学校の時の体験。母に学校の話をするのが好きだったが、ある日、教員経由で母が学校の話を聞くのが嫌なときもあると遠回しに言われて、「学校の話をお母さんにするものではありません」と受け止めた。母とのコミュニケーションの回路を閉ざされた気分だった。
163、171ページ:「助けを求めない」「言っても何も変わらない、意味がない」。前職の時、同僚にも同業者にも自分の苦しみはわからないだろうと思っていた時期があった。人々がここまで追い詰められる前に、人権や自分を守ってくれる法律・制度の存在を常日頃から知っておくことが大切。
そのために、たわいのない話ができる場所が大切である。人々が、どんな年齢・立場でも権利教育を受けられるようにするのも大切
今回の課題範囲を振り返って
スピーカー、リスナーから、様々な感想が寄せられました。
一部抜粋してご紹介します。
ピクニックの場面、「助けを諦めさせるという社会」でも感じたことだが、この「たわいもない話」を子どもの頃からできる環境があると良いのではないか。学校でも職場でも家庭でもない「第3の居場所」がこれからますます必要になってくるのではないか。相談にハードルを感じている人にも、気軽に来られて話ができる場。どうでもいいような話ができる場や関係性を持つこと、子どもの頃から、そして、大人になってからも持てると良い。
「アサーション」という考え方がある。自分は自分の考えを持つ権利がある、自分の考えを伝えて聞いてもらう権利がある。このことがもっと広く、常識となるといい。
弱いということは、不利な条件を押しつけられること。歴史的にひもとくと、近代という社会システムが壮年の男性を想定して設計されている。このことは、もっと知られてもいい。「壮年の男性」以外、例えば、子ども、女性、障害者、犯罪者などが「外れた人」として「弱者」になっている。
自分の持っている権利を知る教育の重要性・必要性を感じた。子どもはもちろん、大人になってからも、誰でもその教育に触れられると良い。現在の日本「義務」が強調されている。「生きる権利」に皆がもっと注目できると良い。